石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2018年版解説シリーズ:天然ガス篇 (3)

2018-07-26 | BP統計

 

2018.7.26

前田 高行

 

1.  世界の天然ガスの埋蔵量と可採年数(続き)

(昔も今も中東とロシア・中央アジアが二大埋蔵地域!)

(4)地域別の埋蔵量推移(1980年~2017年)

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-1-G03.pdf 参照)

 埋蔵量の推移を地域別に見ると、1980年は中東地域が世界全体の34%を占め最も大きく、次いでロシア・中央アジア地域が29%であり、この2地域で世界の埋蔵量の63%を占めていた。2000年代初めには両地域の比率は中東41%、ロシア・中央アジア29%となり両地域の埋蔵量格差は拡大しており、2017年末はそれぞれ41%と31%である。両者の合計シェアは72%であり1980年当時よりも高くなっている。

 

これに対して北米地域のシェアは大きく低下している。1980年に世界の13%を占めていたシェアは1990年には一桁台の8%に落ち込み、さらに2000年台前半は5%にとどまっている。しかし2010年以降は米国でシェール・ガスが盛んに開発され、この結果2017年末のガス埋蔵量は1980年の10tcmを上回る11tcmに達し、埋蔵量の世界シェアは6%に回復している。埋蔵量が1980年当時を上回っているにもかかわらず世界に占めるシェアが半分以下に落ち込んでいることには二つの理由が考えられる。即ち第一の理由は北米以外の地域(特に中東、ロシア・中央アジア地域)でガス田の発見、或いは既存ガス田の見直しが行われ埋蔵量が大幅に増加したことであり、第二の理由は北米が天然ガスの最大の消費地域であるため(消費量については後述)、シェール・ガスの生産が消費とバランスしており、シェール・ブームが埋蔵量の増加に直結していないことが原因と考えられる。

 

その他の地域ではアフリカ及び中南米のシェアはそれぞれ7%と4%であり、このシェアは過去40年近く殆ど変っていない。なお前項に述べたとおり世界の天然ガス埋蔵量は1980年以降毎年増加しており、2017年は1980年の2.7倍に達している。このことはアフリカ及び中南米地域の埋蔵量も世界全体と同じペースで増加していることを示している。

 

アジア・大洋州地域は1980年のシェア6%から徐々にあがり現在は10%に達している。世界経済の発展に伴い地域の天然ガスの探鉱開発が活発化した結果、埋蔵量シェアが増加した訳であるが、近年同地域における天然ガス需要が急増し生産が消費に追いつかないため、埋蔵量の伸びは鈍化している。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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