石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2018年版解説シリーズ:天然ガス篇 (1)

2018-07-23 | BP統計

 

2018.7.23

前田 高行

 

BPが毎年恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2018」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量、貿易量及び価格のデータを抜粋して解説したものである。

 

1.世界の天然ガスの埋蔵量と可採年数

(中東とロシア・中央アジア地域で世界の埋蔵量の7割!)

(1)2017年末の確認埋蔵量

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-1-G01.pdf 参照)

 2017年末の世界の天然ガスの確認可採埋蔵量(以下単に「埋蔵量」と言う)は194兆立方メートル(以下tcm: trillion cubic meter)であり、可採年数(R/P)は53年である。

 

 埋蔵量を地域別に見ると中東が41%、ロシア・中央アジアが31%であり、この2地域だけで世界の埋蔵量の7割強を占めている。これら2地域に次ぐのはアジア・大洋州10%、アフリカ7%、北米6%、中南米4%、欧州1%でこれらすべて合わせても3割弱にとどまる。このように世界の天然ガスの埋蔵量は一部地域に偏在していると言える。

 

埋蔵量を生産量(次章参照)で割った数値が可採年数(R/P)であるが、2017年の天然ガスのR/Pは53年である。これを地域別で見ると中東地域の120年に対して北米或は欧州はわずか11~12年にすぎない。またロシア・中央アジア地域のR/Pは73年、アフリカ地域は61年であり全世界の平均を上回っているが、中南米は46年、アジア・大洋州は32年と世界平均を下回っている。

                                 

(国別埋蔵量ではロシアとイランがトップ!)

(2)国別の埋蔵量

(表http://bpdatabase.maeda1.jp/2-1-T01.pdf 参照)

 2017年末の国別埋蔵量を見ると、ロシアが最も多い35tcmであり、第2位はイランの33tcmである。この2カ国が世界の中で飛びぬけて多く、両国を合わせると世界の35%を占める。この2カ国に続き第三位がカタール(25tcm、シェア13%)、第四位トルクメニスタン(20tcm、10%)であり、これら4カ国だけで世界の埋蔵量の6割弱を占めている。5位以下10位までは米国(世界シェア4.5%)、サウジアラビア(4.2%)、ベネズエラ(3.3%)、UAE(3.1%)、中国(2.8%)、ナイジェリア(2.7%)と続いており、上位10カ国の世界シェア合計は79%に達する。

 

 因みに天然ガス生産国の一部はガス輸出国フォーラム(GECF)を結成している。GECFは2001年に結成され、現在は正式メンバーがロシア、イラン、カタール、アルジェリアなど12カ国及びオブザーバーがノルウェーなど6カ国で構成されている。埋蔵量上位10カ国のうち6カ国がGECF加盟国であり、これらの国々の埋蔵量が世界に占める割合は57%に達する。GECF自体は加盟国相互間で世界の天然ガス市場の需給・価格情報を共有することが目的であり、OPEC(石油輸出国機構)のような生産カルテルではないが、消費国の一部にはGECFを「天然ガスのOPEC版」と警戒する向きもあり、今後の動向が注目されている[1]

 

(*)ガス輸出国フォーラム(GECF)メンバー(2018年7月現在)

正式加盟国(12ヶ国):ロシア、イラン、カタール、ベネズエラ、ナイジェリア、アルジェリア、エジプト、リビア、トリニダード・トバゴ、ボリビア、エクアトール・ギニア、UAE

オブザーバー参加国(6カ国):ノルウェー、カザフスタン、オランダ、オマーン、イラク、アゼルバイジャン、ペルー

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp



[1]拙稿「ガスOPEC(天然ガス輸出国カルテル)は生まれるか?」(2007年5月)参照。

http://mylibrary.maeda1.jp/0131GasOpecReport2007.pdf

 

 

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