石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2018年版解説シリーズ:石油篇(14)

2018-07-10 | BP統計

 

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0446BpOil2018.pdf

 

2018.7.10

前田 高行

 

5.世界の石油精製能力

(アジア・大洋州に世界の精製能力の3分の1が集中!)

(1)   地域別精製能力

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-5-G01.pdf 参照)

 2017年の世界の石油精製能力は日量9,814万バレル(以下B/D)であった。地域別でみるとアジア・大洋州が3,330万B/Dと最も多く全体の34%を占め、次に多いのが北米の2,208万B/D(22%)及び欧州の1,518万B/D(15%)であった。これら3地域で世界の精製能力の7割を占めている。その他の地域の精製能力と世界に占める割合は、中東(952万B/D、10%)、ロシア・中央アジア(840万B/D、9%)、中南米(622万B/D、6%)、アフリカ(344万B/D、4%)である。

 

 後述する通りアジア・大洋州の精製能力は1990年代に欧州及び北米を追い抜き世界最大規模となったのであるが今後この傾向が定着するものと思われる。

 

 地域別の精製能力と石油消費量(本稿3(1)参照)を比較すると欧州、中東及びアフリカは世界全体に占めるシェアが同じであり、アジア・大洋州及び中南米は精製能力と消費量のシェアの差がわずか1%である。また北米は消費量シェア25%に対して精製能力シェアは22%と消費量シェアの方が若干高く、ロシア・中央アジアは消費量4%に対して精製能力シェアが9%と、精製能力が消費量を大幅に上回っている。

 

 原油は消費地でガソリン、ナフサ、灯油、重油などに精製され消費されるのが通常である(消費地精製主義)。それにもかかわらずロシア・中央アジア地域のバランスに差があるのは、石油消費の先進地であった欧州・ユーラシアが1970~80年代に精製能力を急激に拡張し、その後の石油消費の鈍化により過剰設備を抱えてしまったためと考えられる。

 

アジア・大洋州で精製能力と消費量がバランスしているのは発展途上国が多く、増大する石油の消費と精製設備の新増設が並行しているためであろう。但し後述するように(「製油所稼働率」の項参照)消費と精製能力のバランスは同じアジア地域においても日本が過剰設備の解消に苦心する一方、インドでは慢性的な精製能力不足であるように国によって事情が大きく異なる。

 

(続く)

 

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