石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2018年版解説シリーズ:石油篇(16)

2018-07-17 | BP統計

 (注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0446BpOil2018.pdf

 

2018.7.17

前田 高行

 

5.世界の石油精製能力(続き)

(縮む欧州、ふくらむアジア・大洋州!)

(3)1970年~2017年の地域別石油精製能力の推移

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-5-G02.pdf 参照)

 1970年の全世界の石油精製能力は5,165万B/Dであったが、5年後の1975年には7,079万B/Dと7千万B/D台に増え、さらに1980年には7,882万B/Dになった。その後1980年代は横ばいであったが、2000年には8,000万B/D台に乗せ、さらに2009年には9千万B/Dを突破し2017年の世界の石油精製能力は9,814万B/Dに達している。過去半世紀近くの間に全世界の精製能力は2倍近くに増えているのである。

 

これを地域別にみると、1970年には北米及び欧州地域の精製能力はそれぞれ1,482万B/D、1,586万B/Dとこの2つの地域だけで世界の6割を占めていた。その他の地域はアジア・大洋州が13%、ロシア・中央アジアが12%、南米9%で、中東、アフリカはそれぞれわずか5%と2%に過ぎなかった。しかしその後、アジア・大洋州の伸びが著しく、1975年には1千万B/Dを突破、さらに1990年代後半に2千万B/D、また2012年には3千万B/Dを超え、2017年末の精製能力は3,330万B/Dに達している。1970年に比べ精製能力は5倍に拡大しており、この間に北米、欧州を追い抜き世界最大の石油精製地域となっている。

 

欧州は1970年に1,586万B/Dと北米をしのぐ世界一の精製能力を有し、第一次オイルショック後の1970年代後半は2,200万B/Dの能力を維持していた。しかし1980年以降は精製能力が年々減少、1990年代には北米及びアジア・大洋州を下回る状況になっている。2017年の精製能力は1,518万B/Dであり、2000年に比べ10%強減少している。その結果世界全体に占める割合も1970年の31%から2017年には15%まで低下している。

 

北米地域については1970年の1,482万B/Dから1980年には2,200万B/Dまで伸びたが、その後需要の停滞とともに精製能力は削減され2000年までのほぼ20年間は1,900万B/D前後にとどまっていた。2000年代に入り再び2千万B/Dを突破し、2017年の精製能力は2,208万B/Dである。

 

中東、アフリカ地域は世界に占める割合は小さいものの、精製能力拡大のペースはアジア地域に決して引けを取らない。中東地域の場合1970年の247万B/Dが2017年には952万B/Dと約4倍に膨張している。またアフリカ地域は1970年にわずか102万B/Dにすぎなかった精製能力が2017年には3.4倍の344万B/Dに増加している。2010年から2017年の過去6年間だけで比較すると北米、中東、アフリカ及びアジア・大洋州地域は増加しているが、欧州は0.9倍と設備能力が減少している。

 

アジア、中東、アフリカの新興地域ほどではないにしろ、北米も過去5年間でわずかながら増加しているのは注目に値する。シェールオイルの開発などにより石油の上流部門が過当競争に陥り利益が出ない体質になったのに対して、逆に原油価格が下がったことにより下流部門の石油精製が利益の稼ぎ頭となったことが、北米の精製能力拡大に結び付いているようである。

 

(続く)

 

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