石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計2018版解説シリーズ:石油篇 (13)

2018-07-09 | BP統計

 

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0446BpOil2018.pdf

 

2018.7.9

前田 高行

 

(OPEC・非OPEC協調減産で上昇に転じた原油価格!)

4.指標3原油の年間平均価格と1976~2017年の価格推移

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/1-4-G01.pdf 参照)

 ここでは国際的な原油価格の指標として使われる米国WTI(West Texas Intermediate)原油、英国北海Brent原油及びドバイ原油の3種類の原油の年間平均価格(ドル/バレル)とその推移を検証する。

 

 2017年の3原油の年間平均価格はBrent原油は54.19ドル(バレル当たり。以下同様)、WTI原油50.79ドル、ドバイ原油53.13ドルであり、BrentとWTIの値差は3ドル40セントであった。Brent価格を100とした場合WTI原油は94、ドバイ原油は98である。

 

 これら3原油の1976年以降の価格の推移は2011年から2013年までの間を除きほぼ同じような歩みを示している。ここではBrent原油の動きを見ると、1976年の同原油の年間平均価格は12.80ドルであった。1979年の第二次オイルショックを契機に価格は急騰、1980年には約3倍の36.83ドルに達した。その後景気の低迷により価格は一転して下落、1986年には14.43ドルと第二次オイルショック前の状況に逆戻りしている。

 

 この状況は1990年代も続きBrentの年間平均価格は20ドル前後で推移している。ところが1998年の12.72ドルを底に急激に上昇に転じ1999年は17.97ドル、2000年には28.50ドルとわずか2年で2倍以上に急上昇した。その後一旦下落したものの2003年からは上げ足を速め2004年には40ドル弱、2005年に50ドルの大台を超えるとさらに急騰、2008年の年央にはついに史上最高の147ドルに達し、同年の平均価格も100ドル目前の97.26ドルを記録している。

 

 同年のリーマンショックで2009年には一旦61.67ドルまで急落したが、再び上昇気流に乗り2011年の年間平均価格はついに100ドルを超えて111.26ドルになり、その後2012年、2013年も平均価格は110ドル前後と原油価格は歴史的な高値を記録、これは2014年前半まで続いた。

 

 しかしその数年前から米国のシェールオイルの生産が急激に増えた結果、市場では供給圧力が高まり、Brent原油価格は米国WTI原油に引きずられ弱含みの状況になった。これに対してOPECは2014年6月の定例総会で生産目標3千万B/Dの引き下げを見送ったため市況は一挙に急落、年末にはついに50ドル割れの事態となった。2015年前半は一時60ドルまで値を戻したが、後半はさらに値下がりし、年末には40ドルを切った。2016年に入っても値下がり傾向は止まらず、この結果2016年のBrent原油の年間平均価格は43.73ドルとなりわずか3年間で半値以下に暴落した。

 

 暴落した最大の要因はOPECが減産調整できずサウジアラビアなど主要産油国が増産に走ったことにある。これに世界景気の停滞が拍車をかけ需給バランスが完全に崩れたのである。サウジアラビアは近年の米国シェールオイルの増産が価格崩壊の主要因と見ており、価格を低水準に抑えることでシェールオイルを抑え込む戦術を取ったとされる。

 

 しかしOPECの戦術は功を奏さず、シェールオイルの生産業者が技術革新によりコスト削減に努めた結果、原油市場の供給圧力は収まらずOPEC産油国は財政難に陥り減産の機運が生まれた。そこでOPECはロシアなど非OPEC産油国を巻き込んだ協調減産体制を構築し、2017年1月以降今年末迄合計180万B/Dの減産を実施中である。この間にOPEC加盟国のリビア及びベネズエラが内戦あるいは経済政策の失敗により原油生産が大幅に落ち込み、OPEC全体としての減産量が目標を大幅に下回った。この結果、現在Brent原油は70ドル台まで回復している。

 

 これに加え米国が対イラン経済制裁を再開、各国に対して今年11月からイラン原油の輸入を停止するよう求めており、世界的な供給不足がさらに高まる懸念が生じている。これに対してサウジアラビアは米国の要請に応じて増産体制を打ち出している。世界の原油供給は不確実な要素をはらんでおり、原油価格は当面不安定な動きをみせるものと思われる。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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