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Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

令和版・海外俳優列伝(74)クリント・イーストウッド(後)

2023-05-21 00:10:00 | コラム
イーストウッド御大の列伝、最終章…って、大袈裟な(^^;)


『愛のそよ風』(73)を除けば・・・
『ペイルライダー』(85)や『ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場』(86)のように、監督作品には「当然のように」主演も果たしていたイーストウッドが、「これは演出に専念する」と気合いを入れて臨んだのが86年の『バード』。

ジャズサックス奏者、チャーリー・パーカーの半生を描いた傑作伝記映画です。

このあたりから、(本人はどうだったかは分からないけれど)映画ファンも批評家も、俳優イーストウッドではなく「監督イーストウッド」と捉えるようになっていく。


『ピンク・キャデラック』(89)に主演したのち、

映画監督ジョン・ヒューストンをモデルとした『ホワイトハンター ブラックハート』(90)、
チャーリー・シーンと共演した『ルーキー』(90)、
そして、西部劇『許されざる者』(92)を監督主演。

硬軟自在はほんとうに尊敬しますが、イーストウッドにはやっぱり重~~い一発を期待しちゃいます。
そんな自分にとって、イーストウッド「監督」の最高傑作といえば、やはりコレになりますね。

伝説のガンマンだったはずなのに、銃をマトモに撃てなかったり、相手がトイレ中に襲撃したり。

つまり、とっても格好悪い。ダサい。
実際の戦場や殺し合いというものは勇ましいものなんかじゃない、、、『ローハイド』や『ダーティハリー』に出演してきた肉体派が、過去を否定するかのような作品を創ったわけです。

胸を打たれたな…この演技と演出で、最初のオスカーを受賞



いっぽうで、俳優としても『ザ・シークレット・サービス』(93)のような佳作に出演。


うん、絶頂期はこのころなんだと思います^^


これ以降、「ほぼ」すべての主演作で監督も兼任し・・・

追うもの(イーストウッド)と追われるもの(ケビン・コスナー)の関係性をサスペンスフルに描く『パーフェクト・ワールド』(93)、
ベストセラー小説を映画化、メリル・ストリープと共演した『マディソン郡の橋』(95)、
『真夜中のサバナ』(97…出演はせず)、『目撃』(97)、『トゥルー・クライム』(99)、
がんばるおじさんたちを宇宙にまで運ぶ『スペース カウボーイ』(2000)、
『ブラッド・ワーク』(2002)、イヤな結末がいつまでも頭に残る『ミスティック・リバー』(2003…出演せず)、
そして女ボクサーの成長譚と見せかけておいて、深刻な主題(安楽死)と向き合う『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)で、2度目のオスカー作品賞&監督賞に輝く。


2部作という形を取って戦争を見つめた『父親たちの星条旗』(2006)と『硫黄島からの手紙』(2006…いずれも出演せず)、

『チェンジリング』(2008…出演せず)、
ほとんど遺書のように捉えたファンも多い『グラン・トリノ』(2008)、


『インビクタス/負けざる者たち』(2009)、『ヒア アフター』(2010…出演せず)、『J・エドガー』(2011…出演せず)などなど、批評面あるいは興行面で振るわない作品だってあったはずなのに、圧巻のキャリアでそう思わせていないところも驚異的です(^^;)


『人生の特等席』(2012)で久しぶりに俳優に専念して以降は「監督のみ」に専念し・・・

『ジャージー・ボーイズ』(2014)、『アメリカン・スナイパー』(2014)、
トム・ハンクス主演でUSエアウェイズ1548便不時着水事故の顛末までを描く『ハドソン川の奇跡』(2016)、
『15時17分、パリ行き』(2017)、
久しぶりに主演も兼ねた『運び屋』(2018)、
『リチャード・ジュエル』(2019)、
そして最新作が2021年の『クライ・マッチョ』で、こちらも主演している、、、って、ほぼ毎年なにかやっているじゃん!



すげー!!

後半は「俳優列伝」というより「監督列伝」になってしまいましたが、このキャリアですものしょうがないでしょう。

もうね、120歳くらいまで生きて、最後の最後まで映画俳優・監督をつづけてほしいです。


次回の列伝は、グレゴリー・ペックさんから。

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明日のコラムは・・・

『森高とAIR』
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令和版・海外俳優列伝(74)クリント・イーストウッド(中)

2023-05-20 00:10:00 | コラム
8人居る子どものうち・・・
アリソン、スコット、フランチェスカが積極的に俳優活動をつづけている。

とくに注目したいのがフランチェスカで、『ツイン・ピークス』の新章ではウェイトレスを演じていました^^


190cmを超す長身、ハンサムな顔立ちながらイーストウッドは最初からスターだったわけではなく。

何度もオーディションを受けるも落選つづき。

映画俳優デビュー作は、55年の『半魚人の逆襲』。
超のつく端役でした。

最初に注目されたのは、テレビシリーズ『ローハイド』(59~65)のロディ・イェーツ副隊長役。


このときすでに28歳、業界人の目は節穴だらけだぜ!!


映画俳優としての実質的スタートは、『ローハイド』の視聴率が下降気味となった64年のこと。

黒澤の『用心棒』(61)を「マカロニ」ウエスタン化した快作、セルジオ・レオーネの『荒野の用心棒』がイタリアでスマッシュヒットを記録する。

ん?
米国は?

「許可なくリメイクした」と東宝に訴えられたため、公開されたのは67年だったのです。

※口笛を吹きたくとも、出来ない( ノД`)


このヒットを受け、レオーネは再びイーストウッドを起用、
『夕陽のガンマン』(65)と『続・夕陽のガンマン/地獄の決斗』(66)を発表する―これがいわゆる、ドル箱三部作と呼ばれるシリーズ。

ゴタゴタがなんとか解決した67年、米国に三部作が上陸。
批評家からは愛されなかったものの、いずれの作品も好成績を残し、こうしてタフガイスターは誕生した。


『奴らを高く吊るせ!』(68)、(レオーネとともに)永遠の師匠となるドン・シーゲルと初めて組んだ『マンハッタン無宿』(68)、
戦争大作『荒鷲の要塞』(68)、『真昼の死闘』(70)、
逆紅一点の状況下をスリラーとして描く快作『白い肌の異常な夜』(71)、

そしてこの年に、『恐怖のメロディ』(71…トップ画像)で監督デビューを果たす。

もともと、監督気質があったひとなのでしょうね。
映画監督としてこのひとが面白いのは、テーマの一貫性というものが見えにくいところ。
主義主張や思想は「とりあえず置いておいて」物語として面白いから撮った、、、そんな風に思います。

さらに71年は大忙しで・・・

人気シリーズ『ダーティハリー』の第1作目が公開。
極悪人と対峙するには、法など守っていられない―ダーティなハリー・キャラハン刑事はアンチヒーローの象徴となったのでした。

73年にパート2、76年に3、83年のパート4は自らが監督、シリーズは5(88)までつづきましたが・・・

※個人的には、女性刑事と組まされる3作目が好き^^



作家エルモア・レナードが脚本を担当したことで知られる『シノーラ』(72)、
監督主演第2作『荒野のストレンジャー』(73)、
マイケル・チミノの初監督作『サンダーボルト』(74)、スパイ物に山岳アクションを取り入れた監督主演作『アイガー・サンクション』(75)、
さらに『アウトロー』(76)や『ガントレット』(77)などの監督主演作がつづく。

『ダーティファイター』(78)を経た79年、『アルカトラズからの脱出』に主演。


「ザ・ロック」の名前でも知られる刑務所から脱獄した実在の囚人をモデルに、気の遠くなるような主人公の「努力」を丹念に描いた、見応え充分の傑作だと思います。

そのいっぽうで軽めに楽しめる『ブロンコ・ビリー』(80)や戦闘機アクション『ファイヤーフォックス』(82)に監督主演し、映画監督としての実力もめきめきとつけていく。

自分が「こりゃ、すごい監督なのかも…」と思った最初の作品は、『センチメンタル・アドベンチャー』(82)。
じつに味わい深いロードムービーで、アクションを主軸に置かなくとも映画を創れることをきっちり証明した点で好きです。


サスペンス『タイトロープ』(84)、
当時大人気だったバート・レイノルズと組んだ『シティヒート』(84)、


・・・って、ここまでのキャリアを駆け足で追っていっても、これだけの文量になりました^^


あらためて、すごい…。

あすは、映画監督としての存在感が際立っていく近代になります。。。

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明日のコラムは・・・

『令和版・海外俳優列伝(74)クリント・イーストウッド(下)』
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令和版・海外俳優列伝(74)クリント・イーストウッド(前)

2023-05-19 00:10:00 | コラム
本連載、初の3夜連続になります。
それはそれは、たいへんなキャリアのひとですからね^^

30年5月31日生まれ・92歳。
アメリカ出身。

イーストウッド御大について個人的に想起するのは、5つ。


①オスカー授賞式において、遅刻したチャールトン・ヘストンの代役としてプレゼンターを(途中まで)務める。

「ヘストンの出番のはずだが、なぜか現れない。そこで、三行以上の台詞をいったことがないボクが代わりをね」

場内、爆笑。



このことばは台本にないはずでアドリブでしょう、この自虐性すばらしい!!


②ソースが見当たらないので申し訳ないが・・・

たぶん『ミスティック・リバー』(2003)のころのインタビューかなにかで、

「観客より大事なものが、映画にはある」

と発言している。

これって、そーとーな覚悟だと思います。




③「戦争を美しく語るものを信用するな、彼らは決まって戦場に行かなかった者なのだから」

二の句が継げない発言でしょう、これは。
継ぐ必要もないだろうし。。。


④まぁ余計なお世話でしょうが・・・

女性の好みは一貫していて、長いこと付き合っていたソンドラ・ロックといい、



『許されざる者』(92)の娼婦ボスといい、


ねっ、なんか分かるでしょう。


⑤自分のモノマネのレパートリーでもある、

「Go ahead, make my day」

ハリー・キャラハンの名台詞ね。


けっこう似てるんですよ、このモノマネ。

もしお会いすることがあれば、披露してさしあげます^^


さて、カリフォルニア州カーメル市市長を務めた(2年間)ことでも知られるイーストウッドは(本人が自虐的に表現したように)長台詞の要らないアクション俳優としてスタート、あすの「中」では、そのあたりのキャリアをまとめてみましょう^^

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明日のコラムは・・・

『令和版・海外俳優列伝(74)クリント・イーストウッド(中)』
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ハルキよりリュウ

2023-05-18 00:10:00 | コラム
某日―。
村上春樹の新作長編『街とその不確かな壁』を読む。

はっきりいえば、可も不可もなく。
いつもどおりのハルキ節ゆえ、ハルキストは好きだろうし、そうでないひとは「まあまあ」なんじゃないだろうか。

嫌い?
そんなことはありません。

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は、やっぱりドキドキワクワクして読んだクチだし。


ただ相性でいったら自分、同じ村上でも村上龍のほうがよいのだよね。

いや相性というか、「出会いのちがい」かもしれない。

高1のころいじめられていた自分は、その避難先として図書室を選んだ。
そこで夢中になって読んでいたのが、『コインロッカー・ベイビーズ』だったわけです。


W村上は、ともに「自意識をめぐる物語」、、、っていうか純文学の主題はすべてそこにあると思うのだけれど、自分のこころを掴んだのはリュウのほうであったと。


双方とも人気作家だから、映画化作品もそこそこあって。

映画との相性という意味では・・・
『ラブ&ポップ』(98)や『オーディション』(2000)など監督にも恵まれたリュウに軍配が上がるか、、、

と思っていたら、
『ドライブ・マイ・カー』(2021)が出現して分からなくなってきたよね。


ハルキ74、リュウ71。
まぁ、同姓の同業というだけで競う感じで捉えるのは受け手の悪い癖かな。

ただ、新作を発表する度に「とりあえず読んでみる」と思える程度には、自分はふたりのことが好きです^^






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日本女優別10傑(55)多岐川裕美

2023-05-17 00:10:00 | コラム
~多岐川裕美のキャリア10傑~

裕美さん72歳、
鮮烈に過ぎるデビューという点では高橋惠子さんと同じだが、その後のキャリアはちょっとちがった。


いや、だいぶちがったというべきか。

ハダカばかり期待されることを嫌い、ハダカを要求される企画を次々と拒否し降板騒動が起こったり、いつまでもデビュー作のことをほじくり返されたり。

性少年は無責任だからね、何年経とうがデビュー作にこだわることもするが、これは本人の矜持に関わることだから。。。


(1)『聖獣学園』(74)

だから本人としては、問題作というべきか。

70年代っぽい無茶苦茶な設定で、とっても楽しめることはまちがいない。



(2)『仁義の墓場』(75)

大笑い 三十年の 馬鹿騒ぎ

実在したヤクザ石川力夫をリアリズムで描く、深作欣二の野心作。



(3)『新女囚さそり 701号』(76)

二代目・松島ナミ(さそり)を演じる。

初代の梶芽衣子が圧倒的であったから分が悪いが、いや、でも好きですよ自分は。


(4)『復活の日』(80)

猛毒ウイルスをめぐる小松左京の小説を、深作欣二が手がけた大作。

内容より、主題歌のほうが有名でしょう。



(5)『いつかギラギラする日』(92)

がんばるおじさんたち―ショーケン、千葉真一、石橋蓮司―の強盗アクション。

裕美さんは、ショーケンの恋人を好演。



(6)『新幹線大爆破』(75)

年々再評価「度」が上がる傑作アクション。

オールスターゆえに裕美さんもチョイ役(スカンジナビア航空係員)。


(7)『GONIN2』(96)

前作の続編ではなく姉妹編。

・・・う~んと、あまりにも低予算だったからか、物語は強引に過ぎるし、ファンが望む映像を再現した「だけ」に見える石井隆の演出は「逆に」らしくなくなっている。
見どころは、大竹しのぶのセーラー服・笑と、喜多嶋舞のハダカだけかな。

裕美さんは、緒形拳の妻役。


(8)『地震列島』(80)

タイトルどおりのパニック映画で、ホンは新藤兼人だからしっかりしているし、地震大国に住む我々はこういうのもどんどん触れていかないとね。



(9)『続・愛と誠』(75)

早乙女愛と太賀誠の「劇画愛」、その続編。

1作目ほどのパワーは感じないが、大番長を演じる裕美さんが面白いので及第点超え!


(10)『任侠花一輪』(74)

藤竜也の初主演作で、裕美さんは二役を演じる。

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『ハルキよりリュウ』
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