Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

初体験 リッジモント・ハイ(271)

2018-09-15 00:10:00 | コラム
映画のなかに出てくる図書館で『セブン』(95)が印象的なのは、等間隔に配置されたテーブルと緑色のカバーがつけられた電気スタンド、その背景に流れるバッハの『G線上のアリア』が効いているのだと思う。



このショットを思いついた瞬間、監督デヴィッド・フィンチャーは「よし、いける!」と思ったのではないだろうか。

そんなことはないか、フィンチャーはクールな男だからね。


さて自分が、「図書館で出会い、夢中になった本」について。

高校1年生の夏ごろ―。

父親の書斎から勝手に持ち出した『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』にショックを受けた自分は、村上春樹に興味を抱き、学校の図書館をうろついて? みた。
らば、どういうわけか村上龍の『コインロッカー・ベイビーズ』を手に取っていた。



たぶん、タイトルに魅かれたんだと思う。

前半こそ「こういう物語なんじゃないか」という想像を裏切ることがなかったが、中盤から思いもよらぬ展開が待っていて引き込まれた。

連日、図書館に通い昼休みの数十分間を使って、単行本の上下巻を読み終えた。
大長編というほどでもないが、1ヶ月くらいを要したのではないか。

ん?

借りればよかったじゃないかって?

そうなのだが、高校では仲良しというほどの友達が出来なかったからね、長めの昼休みを潰そうという意図があったのだと思う。
そうしたら、ハマってしまったと。

結果、『コインロッカー・ベイビーズ』は自分のオールタイムベスト5に入るほどお気に入りの1作となった。

後年、自作シナリオのタイトルに『アネモネは、笑う。』と冠するほどに影響を受けているし。
(『コイン~』を読んだひとなら、分かるでしょう)


その数ヶ月後―。
父親の書斎以外でも「よい本との出会い」があることを知った自分は、「図書館のうろつき」を日課にするようになる。

そこで知ったのが、映画批評家・田山力哉(以下、田山師匠)の名前。


群馬県立西邑楽高校の図書館は、内容が充実しているとはいえなかった。

とくに映画の本は「ないに等しかった」ため、数多くあるコレクションからそれを選んだというより、映画の本がそれしかなかったから手に取った―といってよかった。

それが、田山師匠の『世界映画名作全史 ニューシネマ篇』だった。




選定者の趣味か、ほかの「〇〇篇」はないのに、「ニューシネマ篇」だけが置かれていたんだ。

ここ数年は誰にも読まれることがなかったであろうこの1冊を手に取り、ページを繰り始めた。


自分はこのころにアメリカン・ニューシネマを知り、『俺たちに明日はない』(67)や『真夜中のカーボーイ』(69)、そしてその影響下にある『タクシードライバー』(76)に衝撃を受けている。

それと符合するかのように出会った田山師匠の本。

こりゃ運命だろうと確信した自分は、高校1年の冬から卒業時まで、何度も何度もこの本を読み込み、完全に自分のなかに吸収した。

誇張でもなんでもなく、ほぼすべての項目を暗記していたものね。


だから。
23歳のとき初めて映画の批評集を書き上げたのだが、真っ先に連絡先を調べ、原稿を持ち込んでみたのは田山師匠だった。

大病を患っていたはずの田山師匠だが、こころのこもった手紙を送ってくれて感激したなぁ。


天国の田山師匠へ。

中途半端ではあるし、あなたのような文章を書けているわけではないけれど、未だ映画小僧をやっていますよ。

あなたの映画愛が、わが血と肉になっています。

ありがとうございました。


おわり。

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明日のコラムは・・・

『結局は脚。なのか』
コメント (1)
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