昨日から議論にのぼり、今日の朝刊各紙でも取り上げられているのが「個人型確定拠出年金(以下、個人型DC)の対象者拡大・利便性向上」に関する記事です。
具体的には
・厚生労働省は個人型確定拠出年金(個人型DC)の制度を見直し、誰でも加入できるようにする方針を固めた(→現在は自営業やフリーランスといった第一号被保険者と、企業年金制度のない会社員に限られる)
・これにより、現在は認められていない専業主婦や、別の企業年金に加入している会社員、共済に加入している公務員なども、個人型DCに加入できるようになる
・転職など働き方の変化にも対応した制度に作り替える
・今後、制度改正の詳細を詰め、来年の通常国会で関連法案の成立を目指す
といった趣旨です。
<参考>
日経:確定拠出年金に誰でも加入、主婦・公務員も 厚労省案
時事:「個人型」、誰でも加入可能=確定拠出年金の改革案-厚労省
この記事の元になっているのは、昨日(2014.10.14)開催された第10回社会保障審議会・企業年金部会(厚労相の諮問機関)での議論。議事録はまだ公開されていませんが、資料については厚生労働省のHP上にアップされています。この中の「資料2 ライフコースの多様化への対応」で、個人の自助努力を支援する仕組みと論点として、個人型DCや企業型DCのマッチング拠出などについて記載されています。
●第10回社会保障審議会企業年金部会 資料
●資料2 ライフコースの多様化への対応(PDF:2,554KB)
今回傍聴できなかったため、参加された方にお話をうかがったところ、「記事はやや勇み足ではないか」と言われました。委員のみなさんも方向としては賛成だが、様々な意見があり、会としてこれから議論が必要というトーンだったとのこと。結論が固まったというわけではないようです。
とはいえ、厚生労働省がそうした姿勢を出してきたことは評価できますし、資産形成において自助努力が必要になる中、個人型DCの対象者の拡大・普及、利便性の向上(ポータビリティなど)はよいことです。
私は昨年から数カ月に1度、個人型DCのセミナーを行ってきましたが、「将来、転職した先が確定給付企業年金(DB)を実施していたら」、あるいは女性の方だと「結婚して万一第三号被保険者になったら」といった質問や不安、それに伴い個人型DCへの加入を躊躇する声をよくききました(DBのみ実施する企業に転職したり、第三号被保険者になったりすると、運用指図者となり、掛け金を追加で入れることはできなくなるためです)。
誰でも加入できるシンプルな制度になれば、途中で加入対象から外れたり、移管したりといったこともなくなり、長期的に掛け金を払って運用を続けることが可能になります。また、対象者が広がり加入者が増えることで、(運営管理機関や商品提供会社も商売として成り立ち)結果的に商品・サービスの向上につながることも期待できます。
ただ、これに合わせて企業型のマッチング拠出の制約(個人拠出は拠出限度額の範囲内、事業主掛け金を超えない)や、国民年金保険料を負担してない3号被保険者の問題なども併せて議論する必要があるでしょう。公務員については共済を1本化してからでもいいような気もしますし…。また、現在凍結が延長されている特別法人税についても、明確に廃止を打ち出してほしいです…。いずれにしても、今後の議論は注目していきたいですね。