【NISA】金融機関へのアンケート調査報告(その2)
『投資信託事情』2014年4月号に「NISA始動、金融機関へのアンケート調査報告(下)」が掲載されています。「投資信託事情」編集部と竹川が共同で、NISA(少額投資非課税制度)についてのアンケート調査を実施。その2回目です。今号では、資産形成層向けに積み立て投資や、ロールオーバーなどに着目した質問をと回答を掲載しました。詳細は「投資信託事情」2014年4月号をお読みいただくとして、ここではポイントをまとめました。
投資信託の分配金再投資コースを選んだ場合、どこの口座で再投資されますか?
・有効回答のあった地方銀行はすべて「100万円の枠までNISA口座、超えた分は課税口座で再投資」
・それ以外の金融機関の対応はまちまち
・中堅証券とネット証券2社→「100万円の枠までNISA口座、超えた分は課税口座で再投資」
・大手2社を含む証券会社3社と直販投信1社→「分配金は最初から課税口座で再投資される」と回答
・中堅証券会社1社とネット証券1社→「100万円の枠までNISA口座で再投資、100万円を超えた分は課税口座で受取り(再投資されない)」
・中堅証券2社とネット証券1社→「投信の扱いは一般コースのみで、分配金再投資コースは取り扱わない」
●積み立て投資をしたときの、取得額の表示はどうなりますか?
・取得した年次ではなく、NISA口座として通算された平均取得額で表示→ネット証券2社、地銀2社、直販2社
・取得した年次ごとに平均取得価額を表示→地方銀行2社、中堅証券とネット証券(予定)、直販投信が各1社
・未定のほか、無回答も2社、大手証券のうち1社は顧客ニーズに応じて対応と回答
●例えば、2014年から5年間、毎年同じ投信を積み立て、1年目に積み立てた分を6年目のNISA口座(2019年枠)にロールオーバーしたとします。その際、1年目(2014年)に積み立てた分の損益はそのように決まりますか?
・「5年間積み立てた分の全平均取得単価と、移管時の時価で損益が決まる」が最も多く、9社
・1年目ンに積み立てた分の平均取得単価と、移管時の時価で決まると回答した金融機関も6社
・未定・研究中→3社
・そのほか、「NISAの損益に投資額で管理して、ロールオーバーでも時価の洗い替えを行わない」地銀が1社。「NISAには損益のルールはなく、質問が不適切」という指摘もありました。たしかに、損益の計算方法についてルールはありませんが、非課税の制度である以上、投資家は知りたいところだと思います。
●1年目に積み立てた分の損益はどのように開示されますか?
この質問については以下の3つに回答が分かれました。
・1年目に購入した口数が表示され、自分で時価をみて損益を計算する(5社)
・1年目に購入した口数・投資した金額が表示され、自分で時価を見て損益を計算する(6社)
・自分の口座画面上などに損益が表示される(6社)
この回答には業態による傾向はあまりみられませんでした。なお、2社はコールセンターに問い合わせれば返答する、1社は1年目に購入した口数・平均取得価額が表示され、自分で時価をみて、損益を計算するという回答でした。
●非課税期間終了(5年)前でも、課税口座に移管することはできますか?
・ほとんどの金融機関が5年未満でも移管が可能で、5年終了時のみと回答したのは2社のみ
【アンケートを受けて】編集長の島田知保さんと対談をしました。ここでは私が感じたことを少し…。
・NISAについては金融機関によって取り扱う商品やサービス(投信の分配金再投資コースの取り扱いや投信積み立ての有無、積み立てを行った際の平均取得価額の表示方法や、損益のお知らせのしかた)などが会社ごとに様々でした。現状、期限が限られた中で、金融機関も高額な投資をできないという事情もあるでしょう。
・例えば、気になったのは投信積み立てをした場合の損益の把握。現状では口数もしくは口数と投資した金額が表示され、「自分で時価をみて計算してください」という金融機関が主流です。投資初心者へのNISA活用法として投信積み立てをすすめる金融機関や専門家は多いのですが、初心者には少々ハードルが高いと感じます。
・また、分配金の再投資はNISA口座ではなく課税口座で行われる、すでに特定口座で積み立てをしている投信はNISA口座では積み立て設定ができない、口座画面上に損益の表示がでない等々-が口座を開設してみて初めて分かったという人もいます。 こうした細かい情報は口座開設をする段階で顧客に届いていません。NISA口座で投信を購入・解約する際の説明については、より丁寧で分かりやすい開示がのぞまれます。
・最初から完璧なサービスとはいかないのはある意味当然だと思います。ただ、せっかくできた制度。制度面の改正(制度・非課税の恒久化など)だけでなく、新たな投資家が安心して入ってこられるように関係者一同できることをしてい必要性を感じました。