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ファイナンシャル・ジャーナリスト 竹川美奈子のブログ。
お金に関する情報や日頃感じたことを発信していきます。

大手運用会社の直販参入で思うこと

2014-09-01 15:00:50 | 投信

三井住友アセットマネジメントが、2015年からネットを通じて投信の直接販売(=直販)を始めると、報道されています。

日経新聞電子版:三井住友アセット、投信をネット直販 手数料抑える 

記事によれば、
・来年4月をメドに専用ファンドを数本つくり、ネットで販売開始
・日本株で積極的に運用するタイプや、株や債券などに分散投資するバランス型運用の商品を投入する計画
・ネット証券やネット銀行向けの商品供給も並行して強化。対面型営業の販売会社だけに頼らない収益構造をめざす

ロイター:インタビュー:投資先の経営戦略まで踏み込んで対話=三井住友AM社長

記事中「運用大手による投信の直販は珍しく」とありますが、過去には既存金融機関系の大手運用会社が直販を行うケースはありました。例えば、日興アセットマネジメントは直販でパレットシリーズ(国内株式、国内債券、外国株式、外国債券など7つのインデックスファンドから選択・スイッチング可能。信託報酬が割安で購入時手数料は無料)を取り扱っていました。大和投信も投信の直販事業を行っていて「ダイワ投信倶楽部」というファンドシリーズなどを取り扱っていました。

しかし、こうした取り組みはとん挫しています。日興アセットのパレットは1998年スタート。日興アセットの直販部門撤退後は日興コーディアル証券に移管できましたが、新規の販売はされず…。2008年10月にひっそり満期償還となりました。大和投信「ダイワ投信倶楽部」も直販サービス撤退によりDC専用ファンドに変更され、一般投資家は追加購入ができなくなりました(大和証券に移管できた投信もありましたが、ダイワ投信倶楽部は対象外)。「2003年度中間期経営戦略説明会Q&A」でも、「大和投資信託ではネットなどで直販を行っていましたが、十分な実績があがりませんでした」とあります。

また、直販ではありませんが、1999年に投信の販売に特化した「野村ファンドネット証券」が登場。さまざまな投信を低コストで販売しましたが、2003年に事業を清算、業務は「野村証券」に引き継がれることになりました(私も、ここで「ステート・ストリート 外国株式インデックス」などを購入していたのですが…)。

では、今後はどうでしょうか。現状では、ネット証券などで購入時手数料無料・運用管理費用(信託報酬)の安いインデックスファンドは購入できるようになりましたし、単にコストが安いというだけでは直販にはなびかない気がします。むしろ、その運用会社が、どのような投資哲学を持っていて、どんな投資スタイルを得意としているのか、その結果、どういう商品を提供していくのか――などを明確にしてほしいです。また、受益者が5つのPを判断できるような情報開示も期待したいところ。運用会社さんの本気度に注目しています。
 
1.Philosophy(フィロソフィー): 運用理念・投資哲学は明確か
2.Process(プロセス):運用スタイル・投資プロセスは分かりやすく説明されているか
3.Portfolio(ポートフォリオ):1.2.に沿った中身になっているか、どのようなリターン・リスク特性があるか
4.People(ピープル): 運用体制や運用担当者の経歴は開示されているか、人材は定着しているか
5.Performance(パフォーマンス):運用実績(リスク・リターン、運用の効率性)などは納得できるものか

過去のエントリ:投信をつくっている会社にも目を向けよう 


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