今年12月から投信のトータルリターン通知制度がスタートします。
<参考>
2014/10/27付 日本経済新聞 朝刊
投信成績分かりやすく 通算損益を通知・報告書に簡易版-12月に改正法施行 分配金偏重を是正
日本では、毎月分配型、中でもたくさんの分配金がもらえる投信が人気ですが、たくさん分配金を受け取っても、基準価額が下がってしまいトータルでは損益がマイナスということもありえます。そもそも投信の損益については、基準価額の値動きと分配金の両方をあわせてみる必要があるのです。それに、投信を1回で購入し、一度にすべての投信を解約するというケースばかりではありません。保有する投信を買い増したり、一部を解約したりすることもあるでしょう。そうなると、自分で記録をとっておかないと「結局どれくらい儲かっているのか(あるいは損しているのか)」がわからなくなってしまいます。
そこで、投資判断をするときに分配金の金額だけに偏らないように、そして、損益を把握しやすいようにということで、今年12月から導入されるのが「トータルリターン通知制度」です。トータルリターンというのは、投資信託を購入した時点から現在までの投資期間全体における受け取ったすべての分配金を含む損益のこと。銀行や証券会社など、投信の販売を行っている金融機関は、投信を保有する顧客に対して、投信のトータルリターンを定期的に通知しなくてはならなくなります。
●トータルリターンの計算方法は以下の通りです。
トータルリターン=(「①評価金額」+「②累計受取分配金額」+「③累計売付金額」)-「④累計買付金額」
*計算要素はそれぞれ
①評価金額・・・・・計算基準日時点で顧客が保有する投信の評価金額
②累計受取分配金額・・・保有期間中に受け取った分配金の累計額
③累計売付金額・・・保有期間中に当該投資信託を一部換金した際の売却金額の累計額
④累計買付金額・・・投信の買付金額の累計額
これにより、保有する投信について、初回購入時から、追加購入・一部解約、分配金の受取りをすべて反映した現在の合計損益(=トータルリターン)がひと目でわかるようになります。適用となるのは12月以降に新たに買い付ける投資信託ですが、金融機関によっては保有している投信に対しても、トータルリターンを算出するようです。また、通知される頻度は年1回以上、通知方法は、書面のほか、FAXやメール、WebなどでもOKとされています。WEB上で日々みられる金融機関もあれば、年1回の通知にとどめる金融機関もあるかもしれません。その辺は金融機関によって差がでそうです。
また義務化は12月からですが、それに先駆けて、大手ネット証券の1つ、楽天証券は2014年8月末から「投資信託のトータルリターン通知サービス」を開始しています。Webコンテンツもなかなか充実しています(詳しくはこちら)。
そのほか、独立系直販投信の鎌倉投信では2014年2月3日から、オンラインサービスMy鎌倉倶楽部でトータルリターンの開示をはじめています→こちら
最後に、注意点も押さえておきましょう。
・率ではなく、金額で表示されます
→トータルリターンというと、「○%のプラス」とか「○%のマイナス」といった率で表示されそうですが、前述の計算式をご覧いただくとわかるように、損益は金額で表示されます。
・累計受取分配金額、基本は税引き
→受け取った分配金については税金を差し引いた金額が使用されますが、「分配金受渡金額は税引前の金額を用いることもできる」とされているため、どちらを利用しているのかは確認したほうがよさそうです(前述の楽天証券は税引き後、鎌倉投信は税引き前で計算されています)。
・投信の評価損益とは異なるため、税額計算には利用できません。
投資信託を保有している方は、12月以降にぜひトータルリターンを確認してみてください。