昨日、「資産形成支援のあり方を考える勉強会」がとりまとめた『個人資産形成の拡大に向けての提言』に関する記者説明会が東京証券会館で行われました。私も参加しましたので、概要をご報告したいと思います。
●詳細についてはこちら をご覧ください。
発表内容は以下の3点です。
1)NISA制度の改善・発展
2)個人向けアドバイザー制度
3)投資信託手数料に係る透明性向上
最初に楽天証券の楠社長より
・昨年の暮れから、仲介業、ETFの組成、証券会社、投信会社など異業種のメンバーが集まって、6回にわたり、議論を行ってきた。(メンバーについてはこちらの1ページ目をご覧ください)。
・個人の立場になった真の長期投資になっていない。足元の課題を踏まえつつ、日本が個人投資家を向いたインフラづくりに取り組むべく、意見をまとめた。
次に、コモンズ投信伊井社長より
・6カ月にわたり、金融庁にもオブザーバーで入ってもらい、議論してきた。さまざまな成長戦略がでてきているが、一方で貯蓄から投資への流れはなかなか進まない。一番大事なのは、家計が長期で資産形成できること。そこで、インターネット証券、ETF、IFA(独立系のアドバイザー)、直販などが集まった。
・日本では(金融業界は)供給側の力が強い業界。金融資産も高齢者に偏っている。若い世代の長期の資産形成に役立つ施策、投資家層の拡大が必要だ。
1)NISA制度の改善・発展では以下の4つを提言しています。
●非課税保有期間の恒久化を!
・5年後に上昇していたら一斉に売って利益を得る、あるいは値下がりしていたらロールオーバー・取得価格の変更で、非課税のメリットを得られないといった問題がある。
●枠内でのリバランス(スイッチング)の許容
・(現状では)商品を入れ替えたいときに売却すると枠が再利用できない
・リバランスを行いながら長期で運用するのが基本だが、現状ではそれができない。早急に解消してほしい
・英国のISAは口座内のスイッチングが認められている。だが、ISA口座内は通常の口座に比べて(投信等の)保有期間が長い。NISA口座内でスイッチングを認めても、短期売買の促進にはならないのではないか。
●ジュニアISAの創設
・親から子への世代間の資産移転を進めるための受け皿として有効
●私的年金的な投資税制優遇制度としての「リタイアメントNISA」の導入
・現状の企業型確定拠出年金は使い勝手が悪い(限度額あり、ポータビリティが悪い)し、個人型DCには公平性、利便性、税制・システム面で課題が多い。
・NISAのスキームを使い、現行の私的年金を補完する制度の導入がよいのではないか。その代わり、引き出し制限などを付ける。また、親世代から贈与があった場合は、一定の贈与税免除枠を設けてもよいのではないか。
2)個人向けアドバイザー制度
・現状では、販売会社の営業員、IFAは手数料収入に依存している。
・米国では投信の残高のうち、6~7割はIFA経由。残高連動型のフィーを主な収益源として、顧客の側に立ったアドバイスを行っている。また、一任による運用を行う小規模投資顧問業者(RIA)の台頭がみられる。
・日本では、顧客と販売する側の利害が一致するための、適した制度がない(現在、投資運用業の登録を行うためには、組織構成、資本金5000万円など厳格な要件があり、小規模事業者の参入がむずかしい)。
・預かり資産残高の上限を決める、証券会社がカストディ業務を請け負うなど、ルール整備を行った上で登録要件を緩和、小規模投資運用業を解禁して、アドバイザーと顧客の利害の一致ができるほうこうに進むべきでは。
3)投資信託手数料に係る透明性の向上
・投資家が最終的に負担する費用の概算値として、実質信託報酬を開示するケースは増えているものの(注:おもに交付目論見書におけるファンド・オブ・ファンズの実質信託報酬手数料のことを念頭においていると思われます)、開示のしかたが運用会社によってまちまち。
・類似ファンドとの比較が現状では困難。販売会社側も、ウエブサイトや交付書面における表示の要件と形式を統一すべき。
・負担する報酬料率が相対的にみて合理的かどうかを判断するため、モーニングスターといった外部機関の算出する平均値などを併記することも有効では。
・手数料ではなく、お客様の資産残高をふやす方向に。
(その2へ続く)