ひねもすのたりにて

阿蘇に過ごす日々は良きかな。
旅の空の下にて過ごす日々もまた良きかな。

最近読んだ本 5

2016年12月29日 | 最近読んだ本
まず一冊目は、塩田武士さんの「罪の声」。
題材は、1984年の江崎グリコ社長誘拐事件を発端とした、
いわゆる、グリコ森永事件です。



私が30代半ばの、リアルタイムで報道の一部始終を見聞きしたはずの事件です。
この小説はそのスタイルからか、非常にリアリティーがあって、
ああ、そうだったのかと頷いてしまいそうな程です。
ですが、あくまでも小説ですので、虚構の混ぜ方が上手いのでしょうね。

私がリアルタイムに見聞きした事件なのに、
人間というのは自分や自分の身近で関係ない報道というのを、
いかに適当に聞き流していたのかということを、痛烈に再認識させてくれた本でもあります。

あの事件がいかに卑劣で、残忍なものだったかを初めて知ったような次第です。
人が口にするもの、口にせざるを得ないものを盾にとって犯罪を犯すことは、
その発想自体を決して許せないものです。

グリコ森永事件の詳細を知りたい方はもとより、
それだけでなく「罪の声」は一気に読ませてくれる小説です。
もちろん阿蘇市図書館にあります。
1月3日までは休館ですが。
なお、この作者の本は他に、将棋界を題材とした「盤上のアルファ」や刑事物の「崩壊」があります。


二冊目は、恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」。
ピアノコンテストをめぐるピアニストたちの姿を描いた小説です。
青春ものという括りにも入るかな?



結構分厚い本です。
でも一気読みします。私も1日で読んでしまいました。
ピアノコンクールという一種の勝負の世界の話ですから、
結構登場人物に思い入れてしまったり、結果に一喜一憂したり、
そこは恩田陸さん、読者の気を逸らせません。

それにしても、音楽特にクラシック音楽を文字で表現するという至難の業を、
こうも豊かに成し遂げられるとは驚くべき才能なのでしょうね。
同じようなジャンルで演劇を主題にした「チョコレートコスモス」も一読の価値ありです。

青春ものとしては、「夜のピクニック」も一晩で読んでしまいました。
高校生のナイトウォークをテーマにしたものですが、
高校生一人一人の姿が浮かび上がるような描写や、互いのやりとりを描く筆には、
作家というものの凄さを改めて思い知らされるのです。

そのほかに、ウイルスハンター・神原恵弥が主役のシリーズ、
「MAZE」、「クレオパトラの夢」「ブラックベルベット」などは、
上記の作品とは全く異なるジャンルのもので、
この人の裾野はどのくらいあるのだろうかと驚いてしまいます。

つい最近まで、「蜜蜂と遠雷」を読むまで、その名前は知っていたものの、
全く作品を読んでいない作家さんでした。
いやあ~、とんでもない人たちが小説界にいるものです。

何度も言いますが、ここに出た本は阿蘇市図書館に全部あります。
中には閉架図書になっているものもありますので、お尋ね下さい。
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