ひねもすのたりにて

阿蘇に過ごす日々は良きかな。
旅の空の下にて過ごす日々もまた良きかな。

名も知らぬ駅に来ませんか -10-

2008年07月24日 | 「名も知らぬ駅」に来ませんか
Dさんの嘆きはひとかたならぬものだった。
「マスター、あんまりじゃないですか、自分の娘がいじめに関わっていたなんて。」
「それも、よりによっていじめる方ですよ。」
Dさんの娘さんは、今年小学校5年生になると聞いていた。

Dさんはそう言いながら、ホワイト レディーを口にした。
Dさんのお好みはジンベースのカクテル。
ホワイト レディーは、ドライジンにコアントローとレモンジュースを加えてシェイクする。
ドライジンをブランデーに変えるとサイドカーになる。
この後のDさんのオーダーは、ジントニックと思って間違いない。

さて、Dさんの話によると、今週火曜日に、奥さんが学校に呼ばれて、
娘さんが、数人で同じクラスの女の子をいじめているという注意が、担任からあったそうだ。
Dさんがいつものように、9時過ぎに家に帰ると、奥さんからその話を聞き、
娘さんを問い詰めて、そのいじめが間違いないことを確かめたそうである。

「私は初めて娘を叩きましたよ。」と言ったDさんの顔は本当に悲しそうだった。
翌日は、早めに仕事を終え、奥さん共々、娘さんを連れていじめた子の家に謝罪に行ったそうだ。
それでもまだ、Dさんの心は晴れなかったそうで、
その帰りに、近くのファミレスに家族で寄って、娘さんといじめについてしっかり話し込んだということだった。

Dさんによると、
Dさんがやはり小学校5年生の時、同じクラスの2人の男の子に、
ほぼ1年間にわたり、いじめられたそうである。
暴力沙汰や、金銭的なことはなかったが、その苦しみによく耐えたものだということだった。

卒業後、いつか仕返しをしてやろうと、合気道の道場に通い、
その2人を頭に浮かべながら練習に励んだという。
いつしか身体の小さかったDさんは、中学校を卒業する頃には、175㎝を超え、
いじめていた2人よりも大きくなって、2人はDさんに会っても、コソコソと身を隠すようになった。
そういう姿を見て、Dさんはいつしか仕返しのことも忘れてしまったと、声を出して笑っていた。

Dさんの娘さんにいじめられていた女の子の母親は、ほとんど家事をしないような人で、
そのため、子どもたちは風呂に入らない日もあったり、
着替えをしないこともあったりということで、
クラスで、「汚い」「臭い」と言われて、一部にそれがエスカレートしていじめになったようだ。

「いじめられる方にも一因あるようなことを言う親もあったんですが」
「自分の娘だけにはそういう考えを持って欲しくなかったんです。」
「いじめられた女の子に何の責任があるんですか。その子はどうすれば良かったんですか。」
「悲しいですよ。情けないですよ。娘が、何でその子の気持ちになってあげられなかったのか。」
Dさんは本当に悔しそうに言って、ジントニックをあおった。

Dさんは、今日はあまりつまみに興味がなさそうだったので、
ピスタチオを少し強めにローストして出した。
イラン産のピスタチオの方が、アメリカ産より若干コクと甘味が強いようだ。
しかし、娘さんのことに気を取られているDさんには、その違いは分かって貰えないようだった。

その後、Dさんの娘さんのいじめ事件がどうなったかですって。
さあ、私も詳しくは聞いていません。

あなたもいじめられたことがあるんですって、それはそれは。
その後の経緯をお知りになりたければ、一度名も知らぬ駅に来てみませんか。

※この話及び登場人物も基本的にはフィクションです。
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みんな煮込んじゃって

2008年07月19日 | 酒と料理と
ずいぶんとブログをサボってしまった。
いよいよ世界一周旅行へ、30日前に入った。
結構準備するものがある。
何より情報。それに人気が高いスペインの列車の事前予約。
タイ国鉄のチケットに、エアアジアの航空券。
ネットがなければ、スムーズな旅行も出来ない時代になってきたようだ。
昔はそれこそどうにでもなれみたいな、出たとこ勝負の旅行だったのだが。
ま、それやこれやでブログをサボっていたという言い訳です。

以前、収穫したての出来損ないの小さなタマネギをコンソメで煮た話を書いたが、
これに最近でき始めたミディトマトの赤いやつを入れ、
彩りが今ひとつということで、ついでにオクラも入れる。
スープは基本コンソメ。これに娘の友人がラオスで買ってきたという、ピメンタ(胡椒)をすりつぶして香り付け。
タマネギだけの時より、若干塩加減を強くする。

煮上がった材料は皿に取り出しておく。
ホワイトソースは定番通りに作るが、そのとき煮出したスープで溶いていく。
今イチの時は強い味方、ハウスのホワイトシチューの元に手助けを乞う。
深めの皿に材料を入れて、上からホワイトソースをかける。
その上に、市販のピザ用チーズ(溶ければなんでもよい)をたっぷり載せる。

後は、オーブンでじっくり焼くだけ。
チーズがブクブクとし始めたらできあがり。
菜園の野菜だけグラタン。
こういうのをグラタンというんだっけ?

熱々の友はキーンと冷えたワイン。
1本あるんです、五一ワインのヴァンブリュー。
本来瓶詰めしてから2週間くらいで飲まないといけない、みたいなことが書いてあるが、そうはいかない。
冷蔵庫で保存したらどんな味になるか、試さない手はない、生ワインだもの。

う~ん、いいなぁ。少しコクが増したのかトロッとした感じがある。
これもまたよし、甘いがさっぱりと爽やかだ。
前年のヴァンブリューは、硫黄臭くて飲めなかった。
出荷するときそれは分かるはずなのだが、それでも販売したため、
ヴァンブリューファンがかなりの数去ったのではないかと思っている。

一度去った購買者を取り戻すのは生半可のことでは出来ない。
何にせよ、ものを売るということはそういうことなのだ。
目先の利益に捕らわれて、将来に禍根を残してしまう。
昔の日本にはそういう風潮はなかったように思うのだが。
食のことで中国を責める資格は、私たちにはないのかも知れない。

なんて難しいことはさておいて、
自給自足の野菜と、国産ワインの夕餉。
我が家の(日本製)食糧自給率は、ほぼ100%が続く。
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暑い

2008年07月10日 | 日記(?)
急に暑くなって身体が対応しない。
8月のもっとも暑い時期に、もっと暑い東南アジアへ行くのだから、
これくらいで参っていてはどうにもならない。
ということで、一昨日は10㎞ほど先の街まで往復自転車で行ってきた。

昨日は、4時過ぎから約50分ほどウォーキングしてきたし、
今日もやはり一昨日同様、20㎞ほど自転車を漕いできた。
足の鍛錬もだが、暑さ慣れもある。
冷房の中で気持ちよく過ごすのもいいが、陽射しを浴びて汗をかくのはまた格別である。

暑くて汗をかけば、当然ビールだって美味い。
美味い豆腐が一の宮町にあって、これを冷や奴にしてビール。
う~む、想像しただけで元気に汗をかけるというものだ。

先日整骨院で先生と話しをしていたら、
1日中冷房の中で仕事をしていると、汗はかくが、
やはり外の暑い中で汗をかくのが本当のような気がすると言っていた。
汗をかくというのは、そういうことだと思う。

たっぷり汗をかいて、ビールを飲んで、
おまけに昨晩は寝ていて、寒くなるほど涼しかった。
これこれ、これが阿蘇のいいところだ。
昼間は真夏日でも、夜に熱帯夜になることは滅多にない。
夏は阿蘇。涼みにいらっしゃい。
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黒豚横町

2008年07月07日 | 日記(?)
7月5日に鹿児島に所用で行ってきた。
知人友人とだいぶ飲んだようで、翌朝記憶が飛んでいるところがある。
焼酎のせいか、歳のせいかは判然としない。
多分どちらもなのだろう。

鹿児島市内の繁華街には、黒豚横町の幟が至る処にある。
と言っても、飲食店の前に立ててあるのだが。
先日鹿児島に行くという娘の友人に、
「おじちゃん、黒豚横町はどこにあるんですか?」と聞かれた。

げにテレビコマーシャルの影響は偉大である。
かく言う私も、「黒豚横町」なる横町が、天文館のどこかにあると信じていた。
しかし、あれは黒豚というブランドを売りにしたキャンペーンなのだ。
ということは、行ってみて初めて気づいたのである。
うっかり地元の人に聞いたら恥をかくはずだった。

黒豚横町の幟が立っている店は、
料理に使っている豚肉は、鹿児島産黒豚を使っていますよということなのだ。
何とも紛らわしい。
「食っちゃえ、黒豚」とか何とかにすれば、こんな誤解はなかったものを。
しかし、インパクトではやはり「黒豚横町」だな。

残念ながら、今回の鹿児島行きでは、黒豚横町にはお世話にならなかった。
次回にとっておこう。
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畑の収穫 -2-

2008年07月02日 | 酒と料理と
今日は上さんが留守で、料理をせんといかん、ということで冷蔵庫の野菜室をかき回していたら、
オー、何ということだ、野菜群の底にちらっと見えるのは、一升瓶の輝きではないか。
入れておいたのをすっかり忘れていた(ほとんどあり得ない話し)のは、
長野県諏訪市の酒蔵、菱友醸造所の「御湖鶴(みこつる) 純米吟醸」。
山田錦を55%に磨いたものだ。

捨てようとした封筒に入っている金を見つけた心境だ。
さて、試飲、試飲。
香りはフルーティー、日本酒度は中口くらいか、さっぱりとして今の季節にもってこい。
よくぞ見つかったものだ、この酒不足の時期に。

ではさっそく料理だ。
畑の収穫の一つ、ジャガイモの傷物が沢山ある。
新じゃがは傷が入ると、すぐにそこから傷んでいく。
何はともあれ傷の入ったジャガイモを、早々に消費しなくてはもったいない。

きんぴらもいいし、サラダもいいが、今ひとつ工夫したい。
思いつかないので、ネットでレシピを検索する。
あった、あった、美味そうなのが。
料理の名前は「ポテトパフ」と書いてある。
まず、マッシュしたポテトを作る。
小麦粉・塩・バター・水をしっかり練って、これに溶き卵を加えて更に練り、
マッシュしたポテトに加えて、馴染むまでしっかり混ぜる。
これを直径3センチくらいに丸めて、揚げればよい。

美味い! これを考えた人、ありがとう。
これだとバリエーションも広がりそうだ。
中に溶けるチーズを包んだり、甘辛く炒めたミンチを包んだり、
ゴマを表面にまぶしたり、きざみパセリを混ぜ込んだりと、
いやいや、甘く味付けたり、バナナを包んだりしたら、お菓子になる。

ジャガイモさん、あなたはエライ!
ジャガイモさんだからこそ、こんなに広がるのです。
アンデスに生まれたあなたが、よくぞ日本にまで来てくれました。
そして、よくぞ日本酒と出会ってくれました。
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