報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
 尚、ブログ内全ての作品がフィクションです。
 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「鬼娘リサ」

2018-11-09 18:48:22 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[10月7日09:00.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 今日は3連休中日だ。
 しかし、やることはない。
 明日は横浜港に着岸するという豪華客船“正信”号の探索に参加することになっているのだが……。
 そして今日はリサが中学校に編入して初めてできた友人、斉藤絵恋(えれん)が遊びに来るという。
 恐らく、『に描いたような愛をしてほしい』という願いを込めてそういう名前を付けたものと思われるが、カテゴリー的にはDQNネームの類になってしまうことだろう。

 高橋:「いや、先生、むしろかわいい方ですよ。俺も、もっとカッコいい名前を付けてもらいたかったくらいです。正義なんて名前、ダサくて……」
 愛原:「そうかな?俺なんか高校生の頃、渾名は『ホスト』だったぞ?」
 高橋:「それだけ先生がイケメンだってことですよ」
 愛原:「違う違う」

 私はガン否定した。
 ホストというなら、むしろ高橋の方が適任だ。
 彼の場合、オラオラ営業でナンバーワンになれそうだ。
 惜しむらくは、彼がLGBTのGであることだ。

 愛原:「俺の名前が、まるでホストの源氏名っぽいからだってよ」
 高橋:「う……。確かに、俺の知り合いに似たような名前のホストがいますけど……」
 愛原:「やっぱ、いるんかい!それにしても、オマエはホント交友関係が広いなー」
 高橋:「いや、ハハハハ……」

 高橋は照れ笑いをした。

 高橋:「先生の性癖がノーマルなのは認めます。もし女が欲しくなったら、2〜3人ほど連れて来ますんで、いつでも言ってください」

 すぐに2〜3人連れて来れるというのも凄いことだが、しかし……。

 愛原:「違法な連れ込みしやがったらクビ!」
 高橋:「じゃあ、ちょっとお時間頂きます……」
 愛原:「やっぱりか!」

 私はふとリビングの時計を見た。

 愛原:「てか、今日斉藤さんが来るんだろ?リサのヤツ、起きて来ないなー」
 高橋:「休みだからって、中坊ン時からダラダラするのは良くないですね」
 愛原:「それ以前に、斉藤さんが来てしまうぞ。早く起こそう」
 高橋:「あいつの朝飯どうします?先生の残飯?」
 愛原:「アホか。ちゃんとしたのを用意してやれ」
 高橋:「了解です」

 私はリサの部屋に向かった。
 そして、ドアをノックする。
 如何に居候とはいえ、そこは中学生の女の子の部屋だ。
 いきなり入るわけにはいかんだろう。

 愛原:「おーい、リサー。そろそろ起きろー」

 しかし、返事が無い。
 私はもう1度ノックした。
 しかし、やっぱり返事が無い。

 愛原:「おーい、入るぞー」

 私はそっとドアを開けた。
 今日は元々天気が悪い上に、リサの部屋は厚手のカーテンが閉めてある為、もっと暗かった。

 愛原:「リサー、そろそろ起きろー?」

 私は布団を頭から被って寝ているリサを揺り動かした。

 リサ:「ウウウ……!」
 愛原:「!?」

 リサが呻き声を上げた。
 この呻き声はどこかで聞いたことがある。
 これはBOWの……!

 リサ:「ウアアアアアアッ!!」

 リサは布団を跳ね除けて飛び起きた。
 だが頭には角が2本生え、全ての歯が鋭く尖り、両耳は長く尖り、両手の爪も長く鋭く尖っていた。

 愛原:「わあっ!!」

 私はリサに押し倒されてしまった。
 暗闇に光る赤い目。
 中学生の女の子とは思えない力で床に押し付けられる私。

 愛原:「リサ、やめろ!!」
 リサ:「ガァァァァァァッ!!」

 と、そこへ!

 高橋:「テメェ、この野郎!!」

 高橋が部屋に飛び込んで来た。
 手にはマグナムを持っている。
 本当に持ってたのか、こいつ?

 高橋:「先生を放せ!でないと、頭ブチ抜く!!」
 愛原:「た、高橋……!」

 高橋はリサの頭に向かってトリガーを引いた。

 カチッ!

 高橋:「!?」
 愛原:「!!!」

 カチッ!カチッ!

 高橋:「…………」
 愛原:「…………」
 リサ(鬼娘):「…………」

 え……?も、もしかして……?

 高橋:「サーセン!弾入れてませんでした!」

 ズコーッ!!

 高橋:「今取って来ますんで!」
 愛原:「その間に死ぬわ!」
 リサ:「ウガァァァーッ!……あ……ああ……」

 その時、リサの手が止まった。

 リサ:「……あ、あれ……?」

 リサの赤い眼光が消える。
 しかし、角と牙はそのままだ。

 リサ:「あ、愛原さん……?お兄ちゃん……?」
 愛原:「リサ!?正気に戻ったのか?」
 リサ:「わ、私……!?」
 高橋:「よし、今のうちに弾取って来ます!」
 愛原:「ちょっと待てや!」

 そして、ようやく角と爪も消えた。
 犬歯の部分だけが、普通の人間より尖っているくらいか。
 まあ、これくらいなら、生まれつきで通せるだろう。

 それからリサは落ち着きを取り戻した。

 リサ:「怖い夢見ちゃって……。化け物の姿になってたら、軍人さん達に銃で一斉射撃される夢……」
 高橋:「予知夢で正夢じゃねーのか、あぁ?」
 愛原:「高橋」
 高橋:「ですが先生、危うく殺されるところだったわけでしょ?」
 愛原:「しかし、想定内ではある。こういうことも見越して、俺はこの仕事を引き受けたんだ。それに備え、善場さんが超法規的な措置で俺達の銃の携帯を認めるよう、上層部に掛け合ってくれているところらしいけどな」
 高橋:「どうしてこう、日本のお役人ってのは対応が遅いんスかね?俺はもう持ってますよ?」
 愛原:「どこで手に入れたんだ?霧生市の時は持ってなかったろ?」

 霧生市で手に入れた銃器や銃弾はあの後、没収されたからな。

 高橋:「顕正号で手に入れた物ですよ。何故だかこの時は、没収されなかったんです。アネゴなんて、狙撃用ライフル持ってますよ?」
 愛原:「マジかよ」

 リサは朝食をペロリと平らげた。

 愛原:「育ち盛りだからよく食べるな」
 リサ:「うん。お兄ちゃんの料理美味しい」
 高橋:「人間食いやがったら、今度こそマグナム全弾撃ち込むからな?」
 愛原:「だからリサには効かないって……」

 するとリサ、再び角を2本生やし、先ほどよりは控え目だが爪や牙を伸ばした。

 高橋:「お、おい!」
 リサ:「大丈夫だよ。……何か、こっちの方が落ち着く……」
 愛原:「調節できるのか?また元の人間形態になってみろ」

 リサは深呼吸をすると、また角を引っ込め、爪も牙も丸くなった。

 リサ:「少し緊張する……」
 愛原:「だけどある程度、力を自分で調整できるようになったってことか?これは善場さんに報告しといた方がいいな」
 高橋:「ついでに、さっき暴走しかけたことも言っといた方がいいですよ」
 愛原:「嘘を付くわけにはいかんからな、それはそうだ」

 私は固定電話の受話器を取った。
 すると、インターホンが鳴った。

 高橋:「はい、どなた?」

 高橋はインターホンの受話器を取った。

 斉藤:「あ、あの……私、斉藤と申します」
 高橋:「ああ……」

 高橋は受話器を掛けた。

 高橋:「先生、リサのダチ、来ちゃったみたいです」
 愛原:「そうか。じゃあ、俺はこれで自分の部屋から掛けるよ」

 私は自分のスマホを手にした。
 そして、リサは急いで玄関に向かった。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« “私立探偵 愛原学” 「連休... | トップ | リアル勧誡前夜の魔の嵐 »

コメントを投稿

私立探偵 愛原学シリーズ」カテゴリの最新記事