[12月13日18:32.天候:不明 栃木県日光市某所 旧日本アンブレラ地下実験場]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
どのくらいの時間……何をしていたのか……。
リサとタイラントがタッグを組み、迫りくるクリーチャーやBOWをバッタバッタと倒していったところまでは覚えている。
最後の一匹が逃げ込んだ教室らしき場所に入ったら、そこが罠だった。
ダクトから催眠ガスのようなものが噴き出して来て、私達は意識朦朧となった。
そして力尽きて倒れた私の前に、悠然と歩いてやって来た者がいた。
それは人間であったと思われるが、顔は分からない。
何しろ、ガスマスクを着けていたからだ。
だからそいつは、催眠ガスが充満する中でも悠然と歩いて来れたのだ。
そいつはしゃがみ込んで私の顔を覗き込んだ。
そして、言った。
そうそう!その声はガスマスクの中で籠っていたが、少なくとも野太い男の声であった。
ガスマスク:「ようこそ。日本アンブレラの実験場へ。愛原学所長」
そこで私の意識は途絶えて、気が付いたらここにいた。
ここは……どうやらまだ学校(を模した実験場)のようだな。
私がいる場所は保健室のようだった。
保健室のベッドの上に寝かされていたのだ。
だが、参ったことに持ち物を殆ど盗られてしまっている。
銃もケータイも無い。
しかし、ここにいても仕方が無い。
取りあえず、ここから出て高橋達と合流しなくては。
私はベッドから出ると、保健室の出口へ向かおうとした。
その時、背後から何か呻き声が聞こえた。
ウーズ:「アァア……!」
ベッドの下からクリーチャーが現れた。
それは白くふやけた体をしていた。
ベッドの下から這い出ると、起き上がって長くて太い触手のような舌をベロンと出してくる。
辛うじて人型ではあるが、元は人間だったことなど分からぬほどに化け物だ。
確かこれはウーズだ!
Tアビスというウィルスに感染した人間の成れの果て。
立ち位置的にはゾンビと同じ。
但し、ゾンビが生きている人間の肉を求めるのに対し、このウーズは生き血を求めるのである。
愛原:「銃が無い!」
しかもドアには鍵が掛かっていた。
鍵はどこだ!?
ウーズ:「ウアァァァ!!」
ウーズが飛び掛かって来る。
愛原:「わあっ!」
私が咄嗟に避け、更に体当たりをかましてやると、ウーズは薬品棚に頭から突っ込んだ。
ウーズ:「ウウウッ!」
ガラスが粉々に割れ、薬品の入った瓶などが床に落ちて散乱する。
その時、私は消毒用アルコールの入った瓶を拾い上げった。
ウーズ:「アアァァ!」
ウーズが体勢を立て直して、また私に向かってきた。
私はアルコールをウーズにぶっ掛けた。
ウーズ:「ウゥッ!」
そしてライターで火を点けてやった。
ウーズ:「ギャアアアアア!!」
ウーズの体は一瞬にして燃え上がった。
今のうちに脱出だ!
幸い、鍵が床に落ちていた。
どうやら鍵は戸棚の中にあったらしい。
それで私は鍵を開け、外に出た。
TウィルスやCウィルスに感染し、発症した人間は腐乱死体のようなゾンビになる。
しかしTアビスに感染すると、水死体のようなゾンビになるとでも言えば良いか。
TウィルスやCウィルスには一定数の割合で最初から抗体を持った人間がいるが、Tアビスには無い。
2000人に1人の割合で最初から抗体を持っている人間もいるらしいが、それはそれでまた別の化け物(スキャグデッドという太ったウーズ。こちらは生き血ではなく、肉を求める)に変化するだけらしい。
本当にちゃんとした抗体を持つには、ワクチンを接種しなければならない。
愛原:「マジかよ。ウーズだらけだな!」
だがウーズは動きが遅く、こちらが走り回っている分には捕まることはない。
ただ、普通のゾンビと違って、体を変化させることが自由にできるらしく、先ほどもベッドの下から現れたが、ダクトの中から現れたり、消火栓の中に隠れていたりと、どこからでも現れる。
但し、手が鉄球というか、棘の付いた棍棒みたいな形をしているおかげで、ドアを開けることはできない。
もちろん、ヘタに近づくとそれで殴り掛かって来るのだが。
高橋:「先生!」
私が学食のような場所に迷い込むと、別の出口から高橋が入って来た。
愛原:「高橋!無事だったか!」
高橋:「先生こそ、よく御無事で!」
愛原:「ああ!だが、施設内は化け物だらけだ。リサもいないし……」
高橋:「リサは多分大丈夫でしょう」
愛原:「……だといいがな」
高橋:「それより先生、盗られた物は見つけたんです」
愛原:「本当か!?」
高橋:「でも、俺1人じゃちょっと無理っぽくて……。2人一緒なら何とかなるかもしれません。一緒に来てもらえますか?」
愛原:「ああ、分かった」
私は高橋に付いて学食を出た。
少し進むと、図書室の入口に着いた。
高橋:「待ってください。この先に奴らがいます。途中でこいつを見つけたんですが、結構使えそうですよ」
高橋が取り出したのは閃光手榴弾のようだった。
愛原:「何だってそんなものが?」
高橋:「さっき使ってみたんですが、奴らにも効きましたよ」
愛原:「そうなのか。見た目、目も耳も無くなってる感じだったがな」
高橋は図書室のドアを開けて、ポイッと閃光手榴弾を放り投げた。
すぐに大きな爆発音と眩い閃光が図書室内に炸裂する。
高橋:「先生、今のうちに!」
愛原:「おう!」
図書室内にはウーズが5~6匹いたが、閃光手榴弾の炸裂をまともに受けたせいで、動きを止めていた。
顔は男か女かも分からないノッペラボウで、耳も無いのに、大きな音と光に弱いようである。
図書室の中を突っ切り、蔵書室に入ろうとすると、シャッターがほんの少しだけ開いた状態だった。
隙間から覗くと、確かに私達の持ち物が机の上に置かれている。
高橋:「シャッターが重くて……!」
愛原:「分かった!一緒に上げよう!」
私と高橋でシャッターの隙間に手を入れ、持ち上げた。
何とか持ち上げた時、後ろからウーズ達の呻き声が迫って来た。
愛原:「くそっ!もうちょっと転がってろってんだ!」
私と高橋がするりと中に飛び込むと、シャッターが勢い良くガッシャーンと閉まる。
その直後、追い付いて来たウーズ達がシャッターを乱暴に叩くが、ビクともしない。
愛原:「しつこい奴らめ!これで諦めてくれるといいが!」
取りあえず、武器や持ち物は取り返した。
高橋:「先生、これからどうします?」
愛原:「次はリサを探すぞ。あいつもきっとキミと同様、俺達を探し回っているに違いない」
高橋:「そうっスね。でもその前に……」
シャッターの向こう側ではウーズ達が呻き声を喚き散らしながら、シャッターを何度も叩いている。
こちら側には何故か開閉スイッチがあるので、これを操作すればシャッターは上がるだろう。
だが、上げると同時に奴らがなだれ込んで来るのは目に見えている。
少しでも隙があれば、まだ閃光手榴弾はあるので、それを投げ込んで怯ませるということは可能だが、さすがに同じ手は2度も食らってくれないだろう。
で、この蔵書室には他に出口が無い。
さて、どうしたものか……。
私が思案すると、シャッターの向こうから震動が聞こえてきた。
何か、大男がドスッドスッと歩き回る音。
そして、今度はウーズ達の断末魔が聞こえて来た。
愛原:「な、何だ何だ?」
そして、またもやシャッターを乱暴に叩く音が聞こえた。
あまりの強さにシャッターが歪んでいく。
そして、バリバリという音がして、シャッターがこじ開けられた。
愛原:「た、タイラントだ!!」
高橋:「ウソでしょ!?」
それはタイラントだった。
一瞬リサが一緒であることを期待したが、世の中そんなに甘くなかった。
私達は銃を構えたが、タイラントは蔵書室を覗き込むとガッカリしたように立ち去って行った。
愛原:「な、何なんだ?」
図書室に戻ると、タイラントに惨殺されたと思われるウーズ達の死体が転がっていた。
高橋:「先生、あのタイラントもきっとリサを捜してるんですよ」
愛原:「そ、そうか!」
しかし、タイラントもリサを見つけられないでいるとは……。
しかもタイラントは、私達と協力して捜すつもりは無いらしい。
愛原:「とにかく、タイラントを追ってみよう。あいつなら真っ先にリサを見つけてくれそうだ」
高橋:「はい!」
私達は図書室を出ると、随分先まで行ってしまったタイラントを追った。
途中、タイラントに殺されたと思われるクリーチャー達の死体を横目に見ながら……。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
どのくらいの時間……何をしていたのか……。
リサとタイラントがタッグを組み、迫りくるクリーチャーやBOWをバッタバッタと倒していったところまでは覚えている。
最後の一匹が逃げ込んだ教室らしき場所に入ったら、そこが罠だった。
ダクトから催眠ガスのようなものが噴き出して来て、私達は意識朦朧となった。
そして力尽きて倒れた私の前に、悠然と歩いてやって来た者がいた。
それは人間であったと思われるが、顔は分からない。
何しろ、ガスマスクを着けていたからだ。
だからそいつは、催眠ガスが充満する中でも悠然と歩いて来れたのだ。
そいつはしゃがみ込んで私の顔を覗き込んだ。
そして、言った。
そうそう!その声はガスマスクの中で籠っていたが、少なくとも野太い男の声であった。
ガスマスク:「ようこそ。日本アンブレラの実験場へ。愛原学所長」
そこで私の意識は途絶えて、気が付いたらここにいた。
ここは……どうやらまだ学校(を模した実験場)のようだな。
私がいる場所は保健室のようだった。
保健室のベッドの上に寝かされていたのだ。
だが、参ったことに持ち物を殆ど盗られてしまっている。
銃もケータイも無い。
しかし、ここにいても仕方が無い。
取りあえず、ここから出て高橋達と合流しなくては。
私はベッドから出ると、保健室の出口へ向かおうとした。
その時、背後から何か呻き声が聞こえた。
ウーズ:「アァア……!」
ベッドの下からクリーチャーが現れた。
それは白くふやけた体をしていた。
ベッドの下から這い出ると、起き上がって長くて太い触手のような舌をベロンと出してくる。
辛うじて人型ではあるが、元は人間だったことなど分からぬほどに化け物だ。
確かこれはウーズだ!
Tアビスというウィルスに感染した人間の成れの果て。
立ち位置的にはゾンビと同じ。
但し、ゾンビが生きている人間の肉を求めるのに対し、このウーズは生き血を求めるのである。
愛原:「銃が無い!」
しかもドアには鍵が掛かっていた。
鍵はどこだ!?
ウーズ:「ウアァァァ!!」
ウーズが飛び掛かって来る。
愛原:「わあっ!」
私が咄嗟に避け、更に体当たりをかましてやると、ウーズは薬品棚に頭から突っ込んだ。
ウーズ:「ウウウッ!」
ガラスが粉々に割れ、薬品の入った瓶などが床に落ちて散乱する。
その時、私は消毒用アルコールの入った瓶を拾い上げった。
ウーズ:「アアァァ!」
ウーズが体勢を立て直して、また私に向かってきた。
私はアルコールをウーズにぶっ掛けた。
ウーズ:「ウゥッ!」
そしてライターで火を点けてやった。
ウーズ:「ギャアアアアア!!」
ウーズの体は一瞬にして燃え上がった。
今のうちに脱出だ!
幸い、鍵が床に落ちていた。
どうやら鍵は戸棚の中にあったらしい。
それで私は鍵を開け、外に出た。
TウィルスやCウィルスに感染し、発症した人間は腐乱死体のようなゾンビになる。
しかしTアビスに感染すると、水死体のようなゾンビになるとでも言えば良いか。
TウィルスやCウィルスには一定数の割合で最初から抗体を持った人間がいるが、Tアビスには無い。
2000人に1人の割合で最初から抗体を持っている人間もいるらしいが、それはそれでまた別の化け物(スキャグデッドという太ったウーズ。こちらは生き血ではなく、肉を求める)に変化するだけらしい。
本当にちゃんとした抗体を持つには、ワクチンを接種しなければならない。
愛原:「マジかよ。ウーズだらけだな!」
だがウーズは動きが遅く、こちらが走り回っている分には捕まることはない。
ただ、普通のゾンビと違って、体を変化させることが自由にできるらしく、先ほどもベッドの下から現れたが、ダクトの中から現れたり、消火栓の中に隠れていたりと、どこからでも現れる。
但し、手が鉄球というか、棘の付いた棍棒みたいな形をしているおかげで、ドアを開けることはできない。
もちろん、ヘタに近づくとそれで殴り掛かって来るのだが。
高橋:「先生!」
私が学食のような場所に迷い込むと、別の出口から高橋が入って来た。
愛原:「高橋!無事だったか!」
高橋:「先生こそ、よく御無事で!」
愛原:「ああ!だが、施設内は化け物だらけだ。リサもいないし……」
高橋:「リサは多分大丈夫でしょう」
愛原:「……だといいがな」
高橋:「それより先生、盗られた物は見つけたんです」
愛原:「本当か!?」
高橋:「でも、俺1人じゃちょっと無理っぽくて……。2人一緒なら何とかなるかもしれません。一緒に来てもらえますか?」
愛原:「ああ、分かった」
私は高橋に付いて学食を出た。
少し進むと、図書室の入口に着いた。
高橋:「待ってください。この先に奴らがいます。途中でこいつを見つけたんですが、結構使えそうですよ」
高橋が取り出したのは閃光手榴弾のようだった。
愛原:「何だってそんなものが?」
高橋:「さっき使ってみたんですが、奴らにも効きましたよ」
愛原:「そうなのか。見た目、目も耳も無くなってる感じだったがな」
高橋は図書室のドアを開けて、ポイッと閃光手榴弾を放り投げた。
すぐに大きな爆発音と眩い閃光が図書室内に炸裂する。
高橋:「先生、今のうちに!」
愛原:「おう!」
図書室内にはウーズが5~6匹いたが、閃光手榴弾の炸裂をまともに受けたせいで、動きを止めていた。
顔は男か女かも分からないノッペラボウで、耳も無いのに、大きな音と光に弱いようである。
図書室の中を突っ切り、蔵書室に入ろうとすると、シャッターがほんの少しだけ開いた状態だった。
隙間から覗くと、確かに私達の持ち物が机の上に置かれている。
高橋:「シャッターが重くて……!」
愛原:「分かった!一緒に上げよう!」
私と高橋でシャッターの隙間に手を入れ、持ち上げた。
何とか持ち上げた時、後ろからウーズ達の呻き声が迫って来た。
愛原:「くそっ!もうちょっと転がってろってんだ!」
私と高橋がするりと中に飛び込むと、シャッターが勢い良くガッシャーンと閉まる。
その直後、追い付いて来たウーズ達がシャッターを乱暴に叩くが、ビクともしない。
愛原:「しつこい奴らめ!これで諦めてくれるといいが!」
取りあえず、武器や持ち物は取り返した。
高橋:「先生、これからどうします?」
愛原:「次はリサを探すぞ。あいつもきっとキミと同様、俺達を探し回っているに違いない」
高橋:「そうっスね。でもその前に……」
シャッターの向こう側ではウーズ達が呻き声を喚き散らしながら、シャッターを何度も叩いている。
こちら側には何故か開閉スイッチがあるので、これを操作すればシャッターは上がるだろう。
だが、上げると同時に奴らがなだれ込んで来るのは目に見えている。
少しでも隙があれば、まだ閃光手榴弾はあるので、それを投げ込んで怯ませるということは可能だが、さすがに同じ手は2度も食らってくれないだろう。
で、この蔵書室には他に出口が無い。
さて、どうしたものか……。
私が思案すると、シャッターの向こうから震動が聞こえてきた。
何か、大男がドスッドスッと歩き回る音。
そして、今度はウーズ達の断末魔が聞こえて来た。
愛原:「な、何だ何だ?」
そして、またもやシャッターを乱暴に叩く音が聞こえた。
あまりの強さにシャッターが歪んでいく。
そして、バリバリという音がして、シャッターがこじ開けられた。
愛原:「た、タイラントだ!!」
高橋:「ウソでしょ!?」
それはタイラントだった。
一瞬リサが一緒であることを期待したが、世の中そんなに甘くなかった。
私達は銃を構えたが、タイラントは蔵書室を覗き込むとガッカリしたように立ち去って行った。
愛原:「な、何なんだ?」
図書室に戻ると、タイラントに惨殺されたと思われるウーズ達の死体が転がっていた。
高橋:「先生、あのタイラントもきっとリサを捜してるんですよ」
愛原:「そ、そうか!」
しかし、タイラントもリサを見つけられないでいるとは……。
しかもタイラントは、私達と協力して捜すつもりは無いらしい。
愛原:「とにかく、タイラントを追ってみよう。あいつなら真っ先にリサを見つけてくれそうだ」
高橋:「はい!」
私達は図書室を出ると、随分先まで行ってしまったタイラントを追った。
途中、タイラントに殺されたと思われるクリーチャー達の死体を横目に見ながら……。
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