報恩坊の怪しい偽作家!

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“愛原リサの日常” 「高橋の退院祝い」

2022-12-22 16:12:14 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[9月9日17:39.天候:晴 東京都千代田区外神田 JR秋葉原駅→総武線1792B電車1号車内]

 秋葉原で山手線を降りたリサは、その足で交差する中央・総武線ホームに向かった。
 ここから1人である。
 BSAAとの取り決めでは、通学ルート以外を単独行動をすることは認められていないが、そのルートが人身事故などで使用できないことがある。
 その為、事後報告で良いので、代替ルートの自己選択は認められていた。
 かつてはそれすらも認められていなかったことを考えると、リサもだいぶ信用されてきているということだ。

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の6番線の電車は、17時39分発、各駅停車、西船橋行きです。次は、浅草橋に、停車します〕

 リサは先頭車の来る乗車位置に並び、自分のスマホで専用アプリを開いた。
 通常ルートから外れる旨を、BSAAが開発したアプリを使って、リサ自身が報告できるようになっている。
 もしもリサがウソを付いたらどうするのかという懸念もあるが、そもそもこんなことをさせるのは、リサが暴走したりしていないかを監視する為である。
 もし暴走したのなら、そもそもこんなアプリを開いて、報告内容を入力……なんてことはできないだろう。
 ウソを付いているかどうかは、そもそもGPSでバレる。

 リサ:(『秋葉原』→『錦糸町』。『中央・総武線(各駅停車)』。『先頭車』。17時39分発。『愛原先生達と焼肉を食べに行くため』)

〔まもなく6番線に、各駅停車、西船橋行きが参ります。危ないですから、黄色い点字ブロックまで、お下がりください。次は、浅草橋に、停車します〕

 内容を入力していると、もう電車がやってきた。
 尚このアプリ、ワザとリサに意地悪する項目がある。
 恐らくそれは、BSAAがなるべくリサに単独行動をさせない為の物なのだろうと愛原は言っていた。
 それは……『列車番号は?』というもの。
 そう、冒頭に表示してあるアルファベット付きの数字のことである。
 『「列車番号」の入力は必須です。入力できない場合、単独行動は認められません』と出て来てしまう。
 路線バスに乗る場合はその系統番号、タクシーに乗る場合はその車番(ナンバープレートではなく、そのタクシー会社の管理番号)を入力しなければならない。
 飛行機の場合は便番号と座席番号、船舶や高速バスの場合も同様である。

 リサ:(1792B……!)

 
(リサが乗車した中央・総武線各駅停車に使用されているE231系電車。向かって左上のLED表示の数字とアルファベットが列車番号である。リサが単独行動をする際に入力するアプリには、必須項目として、この列車番号がある)

 先頭車を狙えば、乗車位置に来る頃、電車は停車しかかっているので、確認はしやすくなる。
 例え最後尾でも、リサの視力なら確認はできるが。

〔あきはばら~、秋葉原~。ご乗車、ありがとうございます。次は、浅草橋に、停車します〕

 中央・総武線には先代の山手線電車も多数運転されているが、リサが乗ったのはオリジナルの車両。
 夕方ラッシュが始まっているということもあってか、さすがに着席はできず、リサは運転室の後ろに立った。
 まだ外が明るいからか、ブラインドは閉められていない。
 発車メロディが流れるが、他の駅でも聴けるファンファーレのような曲調。
 曲名を『教会の見える駅』という。

〔6番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車を、ご利用ください〕

 電車のドアが閉まる。
 中央・総武線ホームには、特急列車も停車するからか、ホームドアが設置されていない。
 なので、電車のドアが閉まり切れば、すぐに発車する。
 と、同時に、リサのスマホにも着信がある。
 アプリの方で、リサの入力内容が認められた旨のお知らせだった。
 あとはBSAAの方で、GPSと照らし合わせて、リサがウソを付いていないか、監視されるわけである。

〔次は浅草橋、浅草橋。お出口は、左側です。都営地下鉄浅草線は、お乗り換えです〕

 普段利用している都営地下鉄新宿線では、なかなか電車の前方を見ることはできない。
 リサはそれを時々見ながら、スマホの方でもLINEとTwitterをやった。
 『魔王軍』の『四天王』から、そろそろリサの生徒会対策計画を教えて欲しいという話が出ている。

 リサ:(そうだなぁ……)

 リサは首を傾げた。
 『四天王』だけには話そうか、或いはやっぱり当日まで黙ってておくか、少し迷ったのである。

[同日17:46.天候:晴 東京都墨田区江東橋 JR錦糸町駅→テルミナ3]

〔まもなく錦糸町、錦糸町。お出口は、右側です。総武快速線と、地下鉄半蔵門線はお乗り換えです〕

 リサを乗せた電車は、無事に錦糸町駅に到着した。
 もし途中で止まるようなことがあったら、リサの機嫌は一気に悪化したことだろう。

〔きんしちょう、錦糸町。ご乗車、ありがとうございます。次は、亀戸に、停車します〕

 ここでの乗降客も多い。
 リサはその波に乗って電車を降りた。

 リサ:(南口……)

 階段を下りて、南口改札に向かう。
 すると……。

 リサ:「いた!」

 リサの瞳が一瞬、金色に光る。
 改札口の外側には、愛原と高橋がいた。
 急いで手持ちのPasmoで、改札口を通過する。
 ピピッという音がして、キップ運賃であれば160円分が引かれた。
 地方から見れば、やはり運賃は安い。

 リサ:「先生!お兄ちゃん!」
 愛原:「よお、帰って来たな」
 リサ:「ちゃんと1人で来れたよ」
 高橋:「高校生にもなって何言ってやがんだ」
 リサ:「わたしは監視付きだけど、お兄ちゃんは職質付きでしょ?」
 高橋:「ンだと、テメ?コノヤロー」
 愛原:「さすがだ、リサ。この錦糸町では、高橋みたいなのは警戒されやすいらしく、さっきもお巡りさんが……」
 高橋:「先生!それはナシでオナシャス!」
 愛原:「ん、そうか?」
 高橋:「それより先生。予約は18時なんで、早いとこ行きましょう」
 愛原:「それもそうだな」
 リサ:「おー!予約!」

 リサは愛原達と合流すると、錦糸町駅ビルのテルミナ3に向かった。
 テルミナは3棟に分かれているが、南口には1と3があり、3人の目的の店は3にあった。

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