報恩坊の怪しい偽作家!

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“愛原リサの日常” 「Gウィルスを使用せよ」

2021-02-23 16:11:31 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月15日17:00.天候:晴 神奈川県相模原市緑区某所 国家公務員特別研修センター]

 愛原達が2度訪れたことのある国家公務員特別研修センターに、1機のヘリコプターが舞い降りた。
 それは自衛隊機で、貨物輸送に使われる機種であった。
 そこから降ろされたのは、大型のゲージ。
 軽自動車くらいの大きさであった。
 さぞかし何か猛獣でも収容しているかと思いきや、その中にいたのは……。

 リサ:「ウウウ……!」

 檻はヘリコプターから、今度はコンテナ運搬用のトラックに乗せられる。
 そのトラックが移動し、それはセンターの地下駐車場に向かった。
 トラックは中型車で、荷台にコンテナが1個だけ載せられるタイプだったので、高さ制限3メートルの地下駐車場に入ることができた。

 守衛:「こっちだ、こっち!」

 センターの警備業務を行っている守衛が地下荷捌場にやってきたトラックを誘導する。

 守衛:「ありゃりゃ!?キミは……前に来たこと無かったっけ?」

 守衛の1人はリサのことを覚えていて、檻に入って第1形態に変化しているリサに話し掛けた。
 リサは檻の中で胡坐をかくようにして座り、不貞腐れた顔をしていた。

 守衛:「何をやったの、キミ?」
 リサ:「ガァァァッ!!」

 リサは牙を剥いて、長く尖らせた右手の爪を立てながら檻の鉄格子に噛み付いた。

 守衛:「な、な、な……!」
 善場:「彼女は興奮しているんです。あまり話し掛けないで」
 守衛:「は、はっ!」
 善場:「いきなりでゴメンね。こうでもしないと、自衛隊が協力してくれなくてね……」
 リサ:「ぶー……!」

 リサは完全に頬を膨らませて拗ねていた。
 何しろ学校帰りにいきなりパトカーに取り囲まれ、有無を言わさず警察の特殊車両に乗せられたのだ。
 一緒に帰っていた斉藤絵恋は必死に抵抗したが、屈強な機動隊員に取り押さえられている。
 それから何がどうなったか、檻に入れられて自衛隊の基地に連れて行かれ、それからヘリコプターに乗せられて現在に至る。

 リサ:「いよいよ殺処分なの?私、最終形態まで変化して暴れるよ?」
 善場:「あなたが人を1人でも食べたらね。でも、そうじゃないでしょう?これは演出なのよ」
 リサ:「随分とお金の掛かった演出だねぇ……!」
 善場:「こうでもしないと、色々と法律で雁字搦めにされている自衛隊や警視庁の協力が得られなかったのよ。私達は表向き、NPO法人の職員。国家公務員としての権限は、非常時にならないと使えない」
 リサ:「で?殺処分じゃないなら、私に何をしろというの?」
 善場:「あなたの血を分けて欲しい。もちろん、私もそうする。今、日本でGウィルスを有しているのは私とあなた、そして『1番』しかいない」
 リサ:「Gウィルス?化け物でも造るの?」
 善場:「その逆。化け物を造れるということは、化け物を抑えることもできるということなのよ」
 リサ:「ふーん……?」
 部下:「お待たせしました」

 善場の部下が急いで鍵を持って来た。
 それで檻の扉を開錠した。

 リサ:「いざとなったら私の力で鉄格子を押し広げることくらいできるんじゃない?」
 善場:「それをしたら高圧電流が流れて、感電死させるようになっているの。そうしなくてあなたは賢いわね」
 リサ:「私もそうだし、タイラント君であってもそれくらいじゃ死なないと思うけど……」
 善場:「早くこっちへ来てくれる。これは愛原所長を助ける為でもあるのよ」
 リサ:「先生を!?え、なに?先生はそんなに重い病気だったの?」
 善場:「そう、重い病気だった。あなたのGウィルスが僅かに愛原所長の体の中に入っていたおかげで、何とか命を繋ぎ止めている。だから、もっとあなたの血が必要なのよ」
 リサ:「わ、分かった。先生を助ける為ならいいよ」
 善場:「それでいいわ。こっちよ」

 リサは善場に付いて、見覚えのある施設に入っていった。

 リサ:「ここは藤野の研究所?」
 善場:「そう。あの研修センターの地下にある研究所よ」
 リサ:「研究所は……嫌だな……」
 善場:「私だって嫌よ。でも、今はそんなこと言ってられる場合じゃないからね」

 善場とて大学生時代に白井伝三郎とは別の日本アンブレラ研究員に捕まり、リサ・トレヴァー『12番』となる人体改造を受けた。
 しかし改造手術後の昏睡状態時に、デイライトやBSAA突入の際に救出され、ワクチンを投与されて元に戻っている(が、人外的な傷痍治癒力や身体能力は残っており、現在も観察中である。その為、便宜的に『0』という数字に変えられた)。
 愛原リサにはそのワクチンは効かないとされており、愛原リサには別のワクチンを用意する必要があるということになっている。

 善場:「このエレベーターに乗って」
 リサ:「うん」

 エレベーターで更に地下深い研究施設に向かう。
 無機質な空間のエレベーター内に表示されているインジゲーターは、B7を示していた。

 善場:「まずは愛原所長の様子から見る?」
 リサ:「見る!見たい!是非!」
 善場:「こっちよ」

 白い壁に白い照明で照らされているフロアの中を進むと、ガラス張りの部屋があった。
 そのガラスの向こう側は、まるで病院のICUのような感じであった。
 そしてその中央のベッドに、愛原が人工呼吸器を着けて横になっていた。
 こちら側から見る限り、意識がある状態には思えない。

 リサ:「先生?!」
 善場:「担当医師の話によれば、愛原所長はもっと別の化け物に変化してしまう所だったらしいわ。突然の激しい咳や吐血ではなく、ゾンビ化するわけでもない。愛原所長はなまじTウィルスに対して、特別な抗体を持っているが為に、もっと別の化け物に変化してしまうはずだったそうよ」
 リサ:「でも、人間の姿をしてる……」
 善場:「それは、あなたから愛原所長にGウィルスが僅かに移ったからよ。まあ、1つ屋根の下で暮らしていれば、そういうこともあるでしょう。保健所も認める濃厚接触だったもんね。でもそのおかげで、愛原所長の体内に入った変異Tウィルスを抑え込むことはできている。あとは追加のGウィルスで造るワクチンを投与すれば、愛原所長は助かるはず。そしてそれは今、都内で蔓延している変異Tウィルスの抑え込みにも役に立つのよ」
 リサ:「分かった。都内のことはどうだか知らないけど、そういうことなら協力する」
 善場:「ありがとう。もちろん私も協力者になる。私のGウィルスとあなたのGウィルスは違うから、どのくらい役に立つのか分からないけど、やってみなければ分からないからね。行きましょ」

 2人は別の場所に移動した。

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