報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「検査は淡々と」

2021-09-30 21:06:30 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月29日12:00.天候:不明(多分、雨) 神奈川県相模原市緑区 国家公務員特別研修センターB2F地下研究施設]

 検査技師:「はい、目を大きく開いてー。虹彩を撮ります」

 検査は本当に細かいものだった。
 確かにこれじゃ、移動診療車みたいなものではできないだろう。
 ついでにということで、私や高橋も受けることになった。

 検査技師:「虹彩データの採取に御協力ありがとうございました。それでは午前中の検査は以上になります。先ほどの受付に向かってください」
 愛原:「分かりました」
 高橋:「指紋もあっちこっち取られて、これじゃ俺達、もう悪い事できませんよ」
 愛原:「当たり前だろうが。というかオマエの場合、それ以前の問題だろ」
 高橋:「あ……」

 少年鑑別所から少年刑務所までコンプリートした高橋であった。

 高橋:「俺はケーキは3等分できますよ?」
 愛原:「そういうことじゃない」

 私達は更衣室に行くと、検査着から私服に着替えた。

 リサ:「先生」

 女子更衣室からはリサと絵恋さんが出て来た。
 私達の場合は、企業の健康診断の延長みたいなものだが、彼女らは違う。
 午後にも様々な検査が目白押しである。

 愛原:「おっ、リサ。ご苦労さんだったな」
 リサ:「いい。またアンブレラの研究所に戻ったとでも思えば……」
 愛原:「いや、別に何もそこまで……」
 絵恋:「お待たせしましたー」

 同じく体操服に着替えてきた絵恋さんが出て来た。

 愛原:「これで午前中の検査は終わりらしい」
 リサ:「お腹空いた」
 高橋:「さすがにもう昼飯っスよね?」
 愛原:「……と、思うがな」

 そんなことを話しながら受付に向かうと、先ほどの受付係の女性が待っていた。
 30歳前後で、高野君や善場主任を足して2で割ったような見た目だ。
 リサが特に何も関心を示さないところを見ると、BOWではなく、普通の人間なのだろう。
 名前を善野と言った。
 名字まで高野君と善場主任を足して2で割った感じである。

 善野:「お疲れ様でした。それでは、これより13時までお昼休憩となります。先ほどの会議室までご案内致します」
 高橋:「ここの食堂じゃねーのかよ?」
 善野:「あいにくですが、食堂は職員が使用します。お食事は先に選んで頂いたものを御用意しておりますから」

 実は最初の説明の後で、昼食のメニューを選ばされた。
 どうやら、ここの食堂で出る物と同じ物を出してくれるらしい。
 善野氏の案内で最初の会議室に行くと、確かに選んだ定食等が用意されていた。

 善野:「室内にある給茶機はご自由にお使いください。自販機コーナーはあちらにありますので、それもご利用頂いて結構です」
 高橋:「なあ。喫煙所も使っていいんだろ?」
 善野:「はい、結構です。そのリストタグで開錠できますので」
 リサ:「その自販機コーナー、お菓子売ってる?」
 善野:「はい。菓子パンやチョコレートもありますよ」
 リサ:「おー!」
 善野:「適度な糖分の補充は、適切な脳の活性化に有効であることが科学的に証明されています」
 絵恋:「その前にお手洗いに行きたい。このリストタグで使えるんでしたっけ?」
 善野:「大丈夫です。それでは13時になりましたら、お迎えに上がります。それまでごゆっくりお過ごしください」

 会議室は一般職員以上の立場の者が持つタグでないと開錠できないようになっていたが、私達が休憩している間は常時開錠状態にしてくれた。
 善野氏がそうしたのではなく、内線電話でどこかに連絡してそうなったのだから、どこかで遠隔で操作できる所があるらしい。
 あの守衛所だろうか?
 それとも、また別のどこかか。

 愛原:「A定食は鯖の生姜焼きだ。B定食はハムカツ定食か」

 それに小鉢と小皿に漬物、そして御飯と味噌汁が付く。
 味はまあまあ。
 職員食堂に出る定食といったところだ。
 会議室内にはテレビもあり、それでテレビを点けた。
 昼の情報番組では、八王子市の発砲事件が取り上げられていた。
 東京オリンピックなど、どこ吹く風である。
 いや……オリンピックの最中にこんな事件が発生したものだから、尚更大騒ぎってところか。
 番組では犯人の身元は不明のままになっていた。
 警察の発表では射殺した1人が元暴力団組員ということで、暴力団同士の抗争も視野に入れていると報道していた。
 もちろん、私達は知っている。
 このニュースがフェイクであることを。
 本当はテロ組織ヴェルトロの関係ではないかということを。

 昼食が終わると、まだ時間があったので、私達は自販機コーナーや喫煙所に向かった。

 愛原:「これは……」

 白い壁が目立つ廊下を進んだ先にある自販機コーナー。
 自販機そのものは何の変哲も無い物だが、現金は使えないようになっていた。
 色々なカードが使えるようだが、その中にICカードも含まれている。

 愛原:「良かった。藤野駅でチャージしておいて」
 リサ:「うん。ジュースもお菓子も買えないところだった」

 パンや菓子は商品棚の番号を入力すると、リフトが動いて、その商品棚から商品を取出口まで持ってくるシステムだった。

 リサ:「あるふぉーと、アルフォート」
 愛原:「リサはアルフォートが好きだな」
 絵恋:「私はリサさんの方が好きです」
 リサ:「先生はコーヒーにするの?」
 愛原:「缶コーヒーより、この紙コップタイプの方が香りがいいんだ」
 絵恋:「そんなぁ、リサさん!スルーしないで!」
 高橋:「けっ、ざまぁみろ」

 高橋は悪態ついて、隣の喫煙所に入って行った。

 愛原:「俺はモカブレンドだな」

 高速道路のサービスエリア辺りにあるのと同じタイプ。
 そこなら抽出中に“コーヒールンバ”のメロディが流れるところだが、企業や学校向けのタイプだと流れないらしい。
 因みに、『昔、アラブの偉いお坊さんが』と歌っているが、アラブで流布されている宗教と言えばイスラム教であろう。
 そこの聖職者は『僧侶』ではないので、『お坊さん』と呼ぶのは間違いである。
 キリスト教の男性聖職者を『神父さん』とか『牧師さん』と呼ぶことはあっても、『お坊さん』とは呼ばないだろう?
 それと同じ。

 リサ:「そういえばサイトー、モカがアキバで彼氏とデートしてるの見た」
 絵恋:「えっ、あの人が!?信じらんない!」
 リサ:「コジマとヤマダでアキバに行ってたら、モカが大学生くらいの男の人と……」
 絵恋:「えっ、私は仲間外れ!?」
 リサ:「夏休み前で、サイトーは空手の道場があった日」
 絵恋:「あの日ね!うぅ……!私もリサさんとデートしたかったーっ!」
 リサ:「……ヒトのハナシ聞いてた?」

 どうやらいきなりJK同士の噂話が始まってしまったらしい。
 こういう時、リサは本当に人間の女の子っぽくなる。
 モカって……ああ!
 そういう名前の女の子がクラスでもいるのかな。

 愛原:「俺は先に戻るぞ」

 私は自販機からコーヒーを取り出して言った。

 リサ:「あっ、ゴメン。私も戻る」
 絵恋:「お供します!」
 高橋:「お供します!」
 愛原:「いいから高橋、オマエはタバコ吸ってから戻れ」

 賑やかなメンツで申し訳ないね。
 ま、こんな感じで午前中は終わったというわけである。

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1 コメント

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Unknown (雲羽百三)
2021-10-01 11:21:45
今年は御登山できそうにない。
皮膚病悪化による通院回数の激増で時間が取れなくなった。
コロナ感染を免れても、このザマである。
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