報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「サーカスの休演日」

2016-12-08 21:13:38 | アンドロイドマスターシリーズ
[12月8日10:00.天候:晴 東京都内臨海副都心(お台場)ロボット大サーカス]

 木曜日は休演日としているサーカス。
 ここに捜査の手が及ぼうとしていた。

 鷲田:「警視庁刑事部ロボットテロ対策課の鷲田警視です。突然申し訳無いが、おたくのロボットについて、ちょっとお尋ねしたいことがあります」
 団長:「いきなり何ですね?こっちは何も疚しいことなんざありませんぜ?」
 村中:「同じく村中と申します。ということは、こちらの質問にはお答え頂けるということでよろしいですね?」
 団長:「で、何が聞きたいんです?休演日とはいえ、こっちも忙しいんで、手短にお願いしますね」
 鷲田:「そちらに、ルディというロボットはおりませんかな?ロボットの癖に人間様に成り済ましやがった、マルチタイプと呼ばれる人型兵器のことですがね?」
 団長:「これが団員のリストですがね、ご覧の通り、うちにはルディという名前のロボットはおりませんぜ?用向きがそれだけなら、さっさと他を当たってもらえませんか?」
 鷲田:「警察をナメて頂いてもらっては困ります。ここで『はい、分かりました』なんてやったら、それこそ子供のお巡りさんごっこだ。このリストの中で、最近導入した人間そっくりのロボットはどれですかな?」
 団長:「直近ですと、このアレックスってヤツです」
 村中:「警視。見た目の年齢が合いませんよ?確かルディは、20代前半の成人男性の姿を模して造られたはずです。しかしこのリストでは、15歳程度になっている」
 団長:「そう。だから、刑事さん達のお探しになっているロボットではないと思いますがね」
 鷲田:「念の為に確認したい。このアレックスというロボットを見せてはもらえませんかな?」
 団長:「見てみて違ったら、とっととお引き取りくださいよ。……おい、マーガレット!アレックスを連れて来い!ケーサツのお客さんだ!」

 団長は煙草に火を点けた。

 団長:(日本の警察が飛んで来るとは、何かヤベェもん拾っちまったのか?確かにアレックスのヤツ、足が折れてたから少し詰めてやったら、少年みたいな体型になっちまったが……)
 マーガレット:「警察がどうしたの?今、アレックスの訓練で忙しいんだけど……」
 団長:「こちらの刑事さん達が、どうしてもアレックスに会いたいんだと」
 マーガレット:「アレックス!あんた何かしたの!?」
 アレックス:「し、してないよ、何も……」
 鷲田:「ん?これがアレックス?」
 団長:「そうですぜ。随分と拍子抜けした顔をしてるってことは、違うみたいですな。とっととお引き取りくだせぇ」
 鷲田:「ちょっと待てちょっと待て!我々が追っているのはこのロボットだ!」

 鷲田はスーツのポケットから、ルディの画像をプリントアウトしたものを取り出した。

 団長:「うちにはそんな凶悪そうなツラしたロボットはいませんぜ?」
 アレックス:「ボクじゃありません」
 団長:「ほら、御覧なさい。当の本人がそう言ってるんだから、これ以上の証拠はございますか?」
 村中:「本当にルディはこのサーカスの中にはいないんですね?」
 団長:「だから刑事さん、何度もそう言ってるでしょう。うちは警察の御厄介になるようなことは一切してませんぜ」
 鷲田:「……分かった。村中君、出直そうか」
 村中:「はい」
 鷲田:「あ、そうだ。最後に1つだけよろしいですかな?」
 団長:「右京さんみたいな食い下がりですな。何です?」
 鷲田:「そのアレックスというロボットは、どういった経緯で導入したものですかな?」

 団長は咥えた煙草から煙を噴き出す。

 団長:「……基本、ロボット団員の導入経緯は企業秘密なんですわ。令状があればお答えしなけりゃならんでしょうが、単なる任意でしたらお答えできませんな」
 村中:「どうしてもダメ?」
 団長:「ええ。もしどうしてもお聞きになりたいってんなら、令状を持って来てくれませんかねぇ?そうしたら、私も洗いざらい喋らざるを得なくなる」
 鷲田:「とあるボーカロイドのプロダクションでは導入経緯を公表しているのとは対照的だなっ!……いや、これは失礼。村中君、行こう」
 村中:「はい」

 2人の刑事達が難しい顔をして、バックヤードを出ようとした時だった。

 敷島:「こんにちはー!お邪魔しまーす!」
 鷲田:「捜査の邪魔をするなら帰ってくれ」
 敷島:「はーい……って、鷲田警視!?」
 シンディ:「……と、村中課長」
 村中:「やあ、奇遇ですな。シンディさんは相変わらずの美人さんだ」
 シンディ:「ありがとうございます」
 鷲田:「何しに来た?」
 敷島:「鷲田警視こそ、何しに?」
 鷲田:「ルディを捜しに来た」
 敷島:「ルディを捜しに来たんですけど?……ん!?」
 鷲田:「んおっ!?」
 村中:「もしかして、キミ達もこのサーカス団が怪しいと思ったのかい?」
 敷島:「鷲田警視達が考えているということは、ハズレっぽい。シンディ、帰ろう」
 鷲田:「どういう意味だ、こら!警察官侮辱罪で今日という今日はしょっ引くぞ!」
 敷島:「だって警察の権限で事情聴取に入ったんでしょう?」
 鷲田:「そうだ」
 敷島:「だけど、ルディは発見できなかった。ということはハズレ」
 村中:「そりゃそうだけどさ!w」
 鷲田:「だが、あの団長はかなり怪しい。必ず尻尾掴んでやるぞ。……ところでお前達は、どうやってルディを捜そうとここに来たんだ?」
 敷島:「普通に団長さんに聞いてみようかと思ったんですけど?……あと、シンディにスキャンしてもらおうかと思って」
 鷲田:「なにっ!?」
 敷島:「木を隠すなら森の中。ルディも狡賢いヤツですから、ロボットが隠れるならロボットの中だと考えたかもしれませんからね。でもシンディがスキャンすれば、そんな森の中に隠れていようがすぐに見つけ出せますよ」
 鷲田:「うーむ……その手があったか。だが、なるべくロボットの力は借りたくない……」
 敷島:「あ、そうですか。シンディ、ここはもう警察の捜査が及んだみたいだから帰ろうか」
 シンディ:「分かりました」
 鷲田:「今のは冗談だ!是非、今回は頼む!」
 敷島:「今回でしょ?」
 村中:「今回も頼むよ。私達は外で待ってるから、上手い事やってきてくれよ」
 敷島:「そういうことでしたら、行ってきます。シンディ、行こう」
 シンディ:「はい」

 鷲田と村中はバックヤードの外に出て、代わりに敷島とシンディがバックヤード内に入った。

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