報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「東北新幹線やまびこ134号」

2018-07-27 10:22:02 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月11日10:15.天候:晴 JR東北新幹線“やまびこ”134号8号車内]

 ホームへ上がると、既に上り本線である13番線にはエメラルドグリーンの塗装が目立つ列車が発車を待っていた。

 愛原:「8号車だな」
 高橋:「BSAAの奴ら、もっと後ろの車両を取ってくれりゃ良かったのに。先生をナメてます」
 愛原:「だから、いいっつってんだろ。早く乗るぞ。……ほら、リサ」
 リサ:「……あ、はい」

 私達は普通車指定席である8号車に乗り込んだ。
 外は夏の暑さに包まれていたが、車内はクーラーが効いて涼しい。
 “はやぶさ”用の車両を転用しているこの列車は、例え普通車であったとしても、照明はグリーン車と同じ電球色、しかも座席にもピローが付いているというものだった。

 高橋:「この席ですね」
 愛原:「よし。リサは窓の景色でも眺めててくれ」
 リサ:「はーい」

 私は真ん中の席に座り、高橋は通路側に座った。

〔「ご案内致します。この電車は10時15分発、東北新幹線上り“やまびこ”134号、東京行きでございます。停車駅は福島、郡山、宇都宮、大宮、上野、終点東京の順です。電車は10両編成での運転です。自由席は1号車から5号車、グリーン車は9号車、グランクラスは10号車です。お待たせ致しました。まもなく発車致します」〕

 ホームの方から発車メロディの音色が微かに聞こえて来る。

 愛原:「それにしても、BSAAの人が付いて来るのかと思いきや、誰もいないな?」
 高橋:「中国のどこかで発生したバイオハザードの鎮圧で忙しいんですよ。それで、先生にそっちのBOWの輸送を依頼したってわけです」

 そんなに大規模なバイオハザードが発生したのか。
 昔は外国でそんなことが発生したとしても、『暴動』だとか『放射能汚染』とかで誤魔化していたのだが、霧生市のバイオハザード事件以来、少なくとも国内のマスコミはちゃんと『バイオハザード』と報道するようになった。
 北朝鮮の拉致事件が問題化する前は黙って誤魔化していたのに、それが確実になった途端報道するようになったのだから、全くマスコミというものは……。
 列車は定刻通りに発車した。

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は東北新幹線“やまびこ”号、東京行きです。次は、福島に止まります。……〕

 高橋:「さすがに東京駅には迎えに来るみたいですけどね」
 愛原:「そうでないと、リサも俺達も宙ぶらりんになってしまう」
 高橋:「俺達は事務所に帰ればいいんです」
 愛原:「こらこら」

 そんなことを話していると、デッキに出るドアの上の電光表示板にニュースが流れた。
 最初は車内の案内とかを流していたのだが、それが流れ終わると、ニュースだの天気予報だのが流れる。

『◆◇◆チョンイル新聞ニュース◆◇◆ 日本時間10日未明に発生した中国◯×省□■市で発生したバイオハザードは、国連組織BSAA極東支部方面部隊の投入により、終息へ向かう見通し。なお、中国当局はウィグル族を中心した犯人グループを拘束』

 愛原:「おー、さすがBSAAだ。精鋭部隊だな」
 高橋:「軍人には勝てませんね」
 愛原:「ウィグル族が犯人って本当かなぁ……?」
 高橋:「さあ……。何しろ中国人のやることですから……」
 愛原:「おっ、何か中国人に対して何か嫌な思い出でも?」
 高橋:「俺が少年院に入る前、怒羅権と一戦やらかしたことがあるんですよ。全く、ウザい連中でした。まだ川崎の在日朝鮮人達とボコし合う方が良かったです」
 愛原:「……DNA的には在日朝鮮人よりも、怒羅権のメンバーの方が日本人に近いからね?」

 怒羅権のメンバーは中国残留孤児の子孫達で構成されている。

 車販嬢:「失礼致します。車内販売でございます」

 そこへ車内販売がやってきた。
 食堂車が全廃されて久しく、自動販売機も全廃されている昨今、車内サービスは粛々と縮小されている。
 この車内販売も御多聞に漏れず、その運命を辿りつつある。

 愛原:「何か飲むか」
 高橋:「はい。サーセン」
 車販嬢:「はい」
 愛原:「アイスコーヒー2つ……と、リサは何がいい?」
 リサ:「オレンジジュース」
 愛原:「オレンジジュースください」
 車販嬢:「ありがとうございます」

 私はポケットからSuicaを取り出した。
 それで支払う。

 車販嬢:「ありがとうございました」

 車販嬢が立ち去ると、私はアイスコーヒーにガムシロップを入れた。
 ミルクは要らないブラック派なのだが、さすがに無糖は苦いな。
 なので私はブラック加糖派または微糖派である。
 だが、そこは高橋君。
 彼はブラック無糖派のはず……って、あれ!?
 高橋君もシロップを入れ始めたぞ?

 愛原:「高橋君、キミ、無糖派じゃなかったっけ?」
 高橋:「ええ。確かにケンカは得意ですが、腕っぷしだけで、口ゲンカはちょっと苦手です」
 愛原:「……何の話?」
 高橋:「俺が武闘派かどうか、ですよね?」
 愛原:「違う!コーヒーに砂糖入れるかどうかだよ!」
 高橋:「さ、サーセン!とんだ聞き間違いを……!確かに前はブラックで飲む派でしたが、俺が少しでも先生に近づく為には、コーヒーの飲み方も参考にしないといけないと思ったんです」

 妙な所が真面目だよな、コイツ。

 リサ:「オレンジジュースは甘くて美味しいよ?」
 愛原:「そりゃあ良かった。リサはオレンジジュースが好きなのかな?」
 リサ:「うん、好き。これのおかげで助かったから」
 愛原:「……リサにも、何か過去の秘話が?」
 リサ:「この前、バカなことをした『4番』はコーヒー飲んだら、ああなったんだもの」
 愛原:「んん?」

 どうやらだいぶ前、リサを始めとするナンバリングされた少女達が集められ、様々な飲み物を与えられたらしい。
 実はその飲み物、コーヒーならコーヒーの、オレンジジュースならオレンジジュースの色や味を付けられた新型ウィルスを液化したものだったらしい。
 生き残った少女達はリサの知る限り、半分以下だったという。

 リサ:「私の飲んだオレンジジュースは、『当たり』だったんだよ。だから、こうして生き残っていられるの」
 愛原:「生き残ったところで、『4番』みたいに暴走したりする恐れもあるわけだからな。本当にリサは……」

 『運がいい』と言おうとしたが、それは止めた。
 もし運がいいのなら、そもそも拉致されることも無かっただろう。
 だが、高橋君は違う考えだったようだ。

 高橋:「もし……お前の親が最悪の虐待野郎で、そこから逃げる為にアンブレラに捕まり、しかも更にそこでも生き延びて先生と出会えたというのなら……スーパーラッキーガールかもしれねぇぜ」
 愛原:「高橋君……?」
 高橋:「『運も実力のうち』って言うからな」
 リサ:「うん。ありがとう」
 愛原:「でも、他にもリサみたいに生き延びて、他にもどこかで生きているコはいるかい?」
 リサ:「それは分かんないけど……。飲んだ後、すぐに解散させられたから……」

 もし他にもリサみたいに生き残っているコがいたら、助けてあげたいけどなぁ……。

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