報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「栗原蓮華を追え!」 4

2024-03-09 21:20:08 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[3月8日15時15分 天候:晴 静岡県御殿場市神山 駒門パーキングエリア下り線]

 私達は足柄サービスエリアの次の休憩地、駒門パーキングエリアに入った。
 パーキングエリアとしてはやや広め敷地であり、2017年に旧場所より移転した為、建物などはまだ新しい。
 さすがにガソリンスタンドは無い。
 まだ善場主任から連絡は無く、私達はここで休憩することにした。
 足柄サービスエリアより、こちらの方が空いている。

 高橋「あっ、ヤベ!」
 愛原「どうした?」
 高橋「タバコ切らしたの、忘れてました。ちょっと買ってきます」
 愛原「ああ。俺も外に出てよう」

 このパーキングエリアには、コンビニのローソンが入居している。
 タバコはそこで買えるだろう。
 私も手持ちが少なくなったので、少し現金を確保しようとコンビニのATMに行こうと思った。

 愛原「おー、富士山がよく見えるなぁ」
 高橋「そうっスね」

 私と高橋は建物の中に入った。
 下り線にはコンビニの他に、フードコートもある。
 高橋は真っ直ぐレジに行き、私はATMに向かった。
 ATMはすぐに使えたが、レジは少し混んでいるようなので、時間が掛かりそうだ。
 私は先に店を出た。
 それにしても、富士山がきれいだ。

 ???「富士山の見える所まで、ご苦労さんなこった」

 外側のベンチに座る老人、そして聞き覚えのある声。
 私がベンチの方を見ると……。

 愛原公一「よお」
 愛原学「公一伯父さん!?」

 そこには公一伯父さんがいた。

 学「どうしてここへ!?」
 公一「ヒッチハイクぢゃ」

 公一伯父さんは、建物の後ろの方を指さした。
 実はこの駒門パーキングエリア、一般道と共用である。
 建物の裏手には、国道246号線に面した駐車場があるのだ。

 学「う、ウソだぁ~」
 公一「ま、信じるかそうでないかは、学次第じゃ」

 おおかた、“青いアンブレラ”の関係者にでも乗せてきてもらったのだろう。

 公一「何か、新しい情報は手に入ったかね?」
 学「俺達は栗原蓮華を追っているんだ。足柄サービスエリアで車を乗り換えた所までは分かったんだけど、そこからどこへ向かったのかまでは分かんないんだ」
 公一「なるほど……。これは一般論しゃが、元人間の鬼は、時折人間だった頃の習慣を真似る癖があるそうじゃ。人間だった頃の歳が上であればあるほどな」
 学「それで?」
 公一「栗原家は代々、法華経を行ずる寺の信徒だったのじゃろう?かつては鹿島神宮の氏子じゃったらしいが……」
 学「らしいね」
 公一「信徒だった頃の記憶が戻り、総本山参りにでも向かったのではないかね?」
 学「やっぱりそう思うか……」

 静岡県富士宮市にある大石寺だ。
 しかし、こんな真っ昼間から参詣しているとは思えないけどな。

 学「どうも蓮華は昼間は行動できないみたいなんだ」
 公一「昼間はどこかに隠れていると見えるな。もちろん、日の当たらない所じゃ」

 と、その時、私のスマホに着信があった。
 画面を見ると……。

 学「デイライトの善場主任だよ」
 公一「ほー!」

 私は電話に出た。

 学「もしもし?愛原です」
 善場「愛原所長、お疲れさまです。善場です。例の黒い車の事ですが、目撃情報を掴みました」
 学「それはどこですか?」

 私は富士宮市だと思っていた。
 ところが……。

 善場「愛鷹で降りたようです」
 学「愛鷹?」
 善場「所長方は今、GPSによると、駒門パーキングエリアでお休みのようですね?」
 学「そうです」
 善場「その次のパーキングエリアです。で、そこにはスマートインターチェンジがあります。ETC搭載の車しか出入りできないインターですね」
 学「それは知っていますが……」
 善場「どうも、そこから東名高速を降りたようなのです」
 学「えっ!?」

 まだ御殿場市だろう?いや、沼津市か?
 とにかく、まだ富士市でもないのに高速を降りるとは……。

 学「高速を降りて、そこから先はどこに向かったのでしょうか?」
 善場「申し訳ありません。そこまでは、まだ分かりません。何しろ、真夜中だったので、目撃情報も少ないのですよ」

 蓮華を乗せた車は簡単に特定できたらしいが、それが愛鷹SICから降りたと分かったのは、そこに付いていた監視カメラの映像と、ETCの通行履歴からである。
 あいにくとカメラは、その先までは映していない為、そこから車がどこ方面へ向かったかまでは分からないという。

 学「分かりました。取りあえず、愛鷹付近を捜索してみることにします」
 善場「お手数お掛けします。何か分かりましたら、また御連絡させて頂きます」

 善場主任は電話を切った。

 学「伯父さん、蓮華はどうやら次の愛鷹で降りたみたいだよ?」
 公一「ふーむ……。これは誤算じゃったのう……。ちょっと確認してくるから、またどこかで会おう、明智君」
 学「いや、あんたの甥っ子だよ!」

 公一伯父さんは、建物の中へと消えて行った。

 高橋「何で博士がここに?」
 学「おおかた、俺達を追って来たんだろうさ。さて、どうする?」
 高橋「とにかく、次の愛鷹に行ってみましょう」
 学「それしか無いな」

 私達は再び車に乗り込み、それから車を出した。

 高橋「俺、1つ思ったんスけど……」
 愛原学「何だ?」

 高橋が車を走らせながら言った。

 高橋「愛鷹で降りたのは、蓮華とヤるつもりだったんじゃないでしょうか?どうせそれ目的で、あいつのヒッチハイクに応じたんでしょうから」
 愛原「なるほどな。ラブホに連れ込んだのか?」
 高橋「いや、違うと思います」
 愛原「違う?」
 高橋「俺、もしもこの車が満タン状態で東京を出発したなら、給油はなるべく事務所の近くで入れたいと思うんスよ」
 愛原「……それって、まさか!?」

 そして、蓮華を乗せた車は地元の『富士山』ナンバー。

 愛原「ラブホじゃなく、家に連れ込んだってことか!?」
 高橋「……か、もしくは普段、溜まり場にしている場所……例えば、俺達のチームのように、寂れたドライブインとか」
 愛原「そういうことか!……でも蓮華は、それに応じるかな?」
 高橋「化け物の考えることなんか、人間の俺達には理解できないっスよ」
 愛原「それもそうだな」

 取りあえず一旦、愛鷹パーキングエリアに移動してみることにした。

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