報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「孝夫と孝之亟の会談」

2017-03-15 20:22:35 | アンドロイドマスターシリーズ
[2月10日11:00.天候:晴 東京都江東区豊洲 敷島エージェンシー]

 敷島の会社に、四季グループの最高顧問である敷島孝之亟がやってきていた。

 孝之亟:「無事で何よりじゃったのぅ……」
 敷島:「色々とご迷惑をお掛けして、申し訳ありません」
 孝之亟:「いやいや、孝夫が謝ることはない。悪いのは全てギャング団じゃ。敷島家の男たる使命を果たし、ワシも鼻が高い。……おっ、キミも孝夫の使命に協力してくれたんじゃったな?礼を言うぞ」
 エミリー:「いえ、私はあまりお役に立てなくて……申し訳ありませんでした」
 敷島:「最後のタンカーの時なんて、1人で黒いロボット軍団に立ち向かっていたじゃないか。あれは普通の人間にはできないことだよ」
 孝之亟:「ワシも、もうまもなくそれを手にすることができるというわけじゃな」
 敷島:「そういうことになりますね。……もしここに来られることが分かっていれば、エミリーではなく、シンディを配置させていたのですが……」
 孝之亟:「構わんよ。姉妹だけあって、顔がよく似ておる」
 エミリー:「恐れ入ります」
 孝之亟:「ところで、ワシのはいつ出来上がるのかな?」
 敷島:「今月の半ばには完成しまして、動作確認などのテストを経て、月末にはお引き渡しができるだろうとのことです」
 孝之亟:「なるほど。このプロジェクトを秘密のベールに隠す理由は理解できるのじゃが、どうじゃろう?造っている所を見せてもらうことはできんかの?」
 敷島:「造っている所……ですか?」
 孝之亟:「うむ」
 敷島:「アリスに聞いてみませんと……。あ、いや、製作部門の方がいいかな……」
 孝之亟:「国内で造れるのじゃから、日本の技術は素晴らしい」
 敷島:「そうですね。ちょっと聞いてみましょう」

 敷島は社長室内の応接セットから立ち上がると、机の上の電話機を取った。

 敷島:「あ、もしもし。私、敷島エージェンシーの敷島と申します。いつもお世話になっております。実は……」

 敷島がDCJに連絡をしている間、エミリーは社長室のドアの所に向かった。
 そして……。

 エミリー:「何をしている?」
 鏡音リン:「わあっ!?」
 エミリー:「盗聴は大きな罪だぞ?」
 鏡音リン:「な、何でもないですYo〜!」

 ピューッと脱兎の如く逃げるリンだった。

 エミリー:「最高顧問、申し訳ありません」
 孝之亟:「なに、四季エンタープライズのジュニアアイドルよりも元気があって良いではないか」
 敷島:「……はい。というわけでありまして、製作依頼者の敷島孝之亟よりそのような希望がありまして……」
 孝之亟:「無理には言わんよ」
 敷島:「……そうですか。少々お待ちください」

 敷島は一旦電話を保留にした。

 敷島:「最高顧問、どうやら可能らしいですよ」
 孝之亟:「本当かね?しかし、ムリをさせてはならんぞ?」
 敷島:「クライアントが様子を見に来られるのは当然とのことです」
 孝之亟:「なるほど。そういう考えか」
 敷島:「いつ見に行きますか?」
 孝之亟:「向こうさんの都合で良い。ワシは所詮、第一線からも二線からも退いた身じゃ。時間ならたっぷりある」
 敷島:「もしもし。お待たせしました。最高顧問のお話ですと……」
 エミリー:(引退されているはずなのに、グループ内では最高の発言権をお持ち。……まだ私はこのグループのことを、そして人間そのもののことを全て知っているわけではない……)
 敷島:「……そうですか、分かりました。では、その時に……」

 敷島は電話を切った。

 敷島:「お待たせしました。実はもう殆ど完成している状態ということらしいんです」
 孝之亟:「おおっ!?」
 敷島:「それで、動作確認のテストの方を来週の月曜日から行う予定だということらしいんですが……」
 孝之亟:「分かった。来週以降の予定を空けておこう」
 敷島:「最高顧問のご希望で、明日にでも電源を入れるとのことです」
 孝之亟:「いいのかね?いかに製作部門とはいえ、土日は本来休みではないのかね?」
 敷島:「元々急ピッチで製作していたようですので、休日出勤はよくやっていたとのことです」
 孝之亟:「ワシは無理させるつもりは毛頭無かったのじゃがな……」
 敷島:「25億円もポーンと出してくれるなんて、早々無いですから。DCJさんも最上客に張り切っているみたいですよ」
 孝之亟:「そうなのか」
 敷島:「ところが、問題が1つありまして……」
 孝之亟:「何かね?」
 敷島:「今、件の9号機は埼玉県の研究所で造っている最中なんです。それって、さいたま市の科学館じゃなくて、秩父市の営業所を兼ねている場所なんですよ。私も行ったことありますけど」
 孝之亟:「構わんよ。秩父だろうがチベットだろうが、どこにでも行くぞ。あの世だけはまだカンベンじゃがな」
 敷島:「まあ、最高顧問ならヘリコプターの1機でも簡単に……」
 孝之亟:「いやいや、何を言っておる。秘密の研究所なんじゃろ?ヘリなんぞで行ったら、目立ってしょうがないじゃろ」
 敷島:「表向きは、秩父営業所ということになっています。ヘリポートもありますよ」
 孝之亟:「じゃから、ワシがクライアントということがどこまで秘密にされておるか分からぬ以上、そんな目立った行き方をすれば向こうさんにも迷惑じゃろう。ただでさえ、無理を聞いてもらったようなものなんじゃから……」
 敷島:「車で行くんですか?センチュリーの方が目立つような……」
 孝之亟:「電車で行くに決まっておろう」
 敷島:「ええっ!?急行じゃ飯能で乗り換えありますよ!」
 孝之亟:「何故そこでレッドアローという選択肢を出さんのだ、オマエは……」

[同日12:00.天候:晴 豊洲アルカディアビルB2F・車寄せ]

 地下2階でエレベーターを降りる敷島達。
 エミリーは孝之亟が持っていた入館証を、警備員の立っている横の回収ボックスに入れた。
 無言でお辞儀をする警備員。

 孝之亟:「ちょうどお昼時じゃ。一緒に昼飯でも食いに行こう。なぁに、ちゃんと後でここまで送るわい」
 敷島:「すいません」
 孝之亟:「秘書のお嬢ちゃんや、キミも一緒に来い」
 エミリー:「かしこまりました」

 因みに、表向きは何の権限も持たない名誉職である最高顧問の孝之亟には特定の秘書が付いていない。
 あくまで、役員車と運転手がいるのみである。

 敷島:「エミリー、お前は助手席に乗ってくれ」
 エミリー:「かしこまりました」

 元より、エミリーはそうするつもりであった。
 SPは助手席に乗る。

 運転手:「どこまで参りましょう?」
 孝之亟:「同じ江東区内に、美味い鰻を食わせてくれる店があったじゃろう?確か、名前は……」
 運転手:「鰻遊さんですね。かしこまりました」
 孝之亟:「おお、そうじゃそうじゃ」

 車が走り出す。

 孝之亟:「この歳になると、物忘れが激しくってしょうがないわい」
 敷島:「ははは……」
 孝之亟:「その点、こういう者を抱えておると、こんな年寄りの物忘れなど簡単にカバーしてくれるのじゃろう?」
 敷島:「そうですね」
 孝之亟:「実に、楽しみじゃ」

 エミリーはリアシートの役員達の会話を聞きながら、自然と笑みが零れた。
 少し規格は変わるものの、新しく妹機として造られる者が多大な信用をされるということは、姉機として誇らしいことだからだ。

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