[5月27日06:00.天候:晴 東京都江東区豊洲・敷島エージェンシー]
平賀は敷島の計らいで、敷島エージェンシー内部にある仮眠室で夜を明かした。
今は洗面所で洗顔や髭剃りをしている。
エミリーはその間、平賀が寝ていたベッドを整えている。
どうしてこの時間の起床なのかというと、豊洲駅前から始発の東京駅行きのバスに乗り、そこから新幹線に乗り換える為であった。
「おはようございます」
仮眠室にMEIKOがやってきた。
「ん?ああ、MEIKOか。お前も早いな。どうしたんだ?」
「事務所は朝7時から開けるので、皆1時間前から起動することになっているんですよ」
と、赤のバドスーツを着たMEIKOが説明した。
「そうなのか」
赤はMEIKOのイメージカラーである。
ボーカロイドはイメージカラーを持つことが慣例になっており、KAITOは青で、初音ミクは緑、鏡音リン・レンは黄色がベタである。
ところが、段々とボカロが増産されてくると1色だけでは足りなくなってきた。
量産型とされるLilyは、コンポジットの衣装から黄色と黒とされ、専用のマイクスタンドなど、まるで踏切の遮断棒のようである。
「要はそこで自己診断を行ったり、ウィルスチェックなどを行うのです」
「ああ、そうか」
「それじゃ。自分達はもう仙台に戻る。敷島さん達によろしくな」
平賀達はその言葉を残して、豊洲駅に向かった。
見送ったのはMEIKOと初音ミク。
まだこの時間、豊洲アルカディアビルの正面エントランスは開いていない。
防災センター受付のある夜間通用口から出なければならない。
仮眠明けなのか、眠そうな顔をしている警備員の前で入館証の貸し出し簿に返却の記入を行う。
「あ、金探はロボット専用ですから……」
警備員が、自ら率先して金属探知機の装置の中を通るエミリーに言った。
「ええ。彼女は“ロボット”です」
平賀はニヤッと笑った。
「ええっ!?」
「特に・何も・出ませんでした」
「は、はい。それなら結構です。あちらが、出口となっておりますので……」
平賀達が去って行った方向を見送った警備員は、
「本当、見分けがつかないな……」
と、呟いた。
[同日06:35.天候:晴 豊洲駅前バスターミナル→都営バス東16系統車内]
朝日の差すバスターミナル。
そこでバスを待っていると、始発のバスがやってきた。
「よくまあ、敷島さんはああいうので体当たりできるものだ。なあ?」
「イエス」
前扉が開いてバスに乗り込む。
この時間はまだそんなに混んでおらず、平賀は真ん中の1人席に腰掛けた。
その横にエミリーが大きな荷物を持って立つ。
〔発車致します。お掴まりください〕
バスは朝の陽ざしを浴びて、豊洲駅前バスターミナルを発車した。
〔毎度、都営バスをご利用頂きまして、ありがとうございます。このバスは月島駅前、リバーシティ21、住友ツインビル前経由、東京駅八重洲口行きです。次は豊洲2丁目、豊洲2丁目。……〕
車内はそんなに混んではいないが、しかしガラ空きというわけでもない。
既に車内は、通勤途上のサラリーマンの姿が見受けられる。
バスの車内表示版を見ると、途中に『IHI前』とか『日本ユニシス本社前』とかあるところを見ると、ビジネス路線と言える。
尚、豊洲駅からは勝どき経由の路線もあり、こちらはやや遠回りである。
聖路加国際病院へは15系統が良い。
シンディなら多弁で色々と話し掛けてくるのだろうが、それと比べて寡黙なエミリーは話し掛けてはこない。
それでも必要なことがあれば、話し掛けて来る。
例えば……。
[同日06:55.天候:晴 都営バス東16系統車内→東京駅]
〔毎度、都営バスをご利用頂きまして、ありがとうございました。次は東京駅八重洲口、東京駅八重洲口。終点でございます。……〕
「プロフェッサー平賀。まもなく・終点です」
うつらうつらして、窓に体をもたらせている平賀の左肩に手を置いて、エミリーが起こしてきた。
既に車内は立ち客が目立つほどの混雑ぶりになっていた。
「お……そうか。つい、うたた寝してしまった」
バスはJRバスも発着するバスターミナルの一画に進入し、都営バス降車場の前で止まった。
降車用の中扉が開くと、一気に乗っていた乗客が吐き出されて行く。
既に運賃は払っているので、降りる時はフリーである。
これもまた都営バスの定時運行に一役買っているのだろう。
遅延の原因の1つに客扱い遅れがあり、これは降車時に乗客が運賃の支払いに手間取ることがあるからだ。
大きな荷物はエミリーが軽々と持っており、その後に続いてバスを降りると、既に駅前の歩道は多くの通勤客が行き交っていた。
「プロフェッサー平賀。御朝食は・どうされますか?」
「駅弁でも買うよ。それより、早いとこ新幹線に乗ろう」
「イエス」
平賀達は朝ラッシュでごった返す東京駅構内に入り、すぐ近くにある『JR全線きっぷ売り場』に入った。
これはJR東海版“みどりの窓口”で、東海道新幹線のキップを率先して販売しているが、もちろん、東北新幹線のキップも売っている。
窓口だけではなく、ちゃんと券売機もあった。
平賀は先日、デイライト・コーポレーションの鳥柴からもらったグリーン車の回数券を手にしていた。
これで座席指定を受ければ、あとはそのグリーン車に乗れる。
「おっ、“はやて”があるな」
“はやて”の普通車指定席は虫食い状態で空席がある程度だったが、グリーン車は余裕があった。
普通車は全て指定席なので、そもそも自由席が無い。
回数券で座席指定を受けたキップを手に、JR東日本の改札口に入る。
そのまま横の青いフラッパーの改札機を通ろうとするのはミスリード。
そこは東海道新幹線専用改札口である。
JR東日本としての緑色のフラッパーゲートを通るべし。
……え?JR東海のコーポレートカラーはオレンジなのに、どうして青なのかって?
葛西名誉会長に聞いてくれ。
「エミリー。俺は一服するから、弁当とお茶買ってきてくれ」
「イエス」
平賀はエミリーに財布から2000円を出して渡した。
駅構内禁煙の東京駅だが、新幹線ホームには喫煙所がある。
最近になって、ホーム最南端にも喫煙所ができたらしい。
〔まもなく20番線に、“なすの”252号が10両編成で参ります。この電車は折り返し、7時16分発、“はやて”111号、盛岡行きとなります。黄色い線まで、お下がりください。……〕
エミリーにお使いを頼み、自分はホーム北部の喫煙所でタバコに火を点けた。
手持ちのスマホで、仙台で留守を預かる家族に、これから新幹線に乗る旨の連絡を行う。
〔「20番線、ご注意ください。7時16分発、東北新幹線“はやて”111号、盛岡行きの到着です。黄色い線まで、お下がりください。到着後、車内整備・清掃の為、一旦ドア閉めを行います。再度ドアが開くまで、乗車位置でお待ちください。……」〕
エミリーが売店で駅弁とお茶を買っていると、
「おはようございます」
と、エミリーに挨拶をする者がいた。
「!?」
それは紺色のスーツを着用した若い男。
すぐにスキャンすると、『Human』ではなく、『Loid』と出た。
「『東京弁当』と冷たいお茶を……」
男もまた駅弁とお茶を買っていた。
「……マスターに・頼まれた……のか?」
「そうです」
男はそれだけ答えると、足早に平賀達が乗る列車とは反対側のホーム(21番線)の方を歩いて行った。
21番線には上越新幹線が発着するようだ。
(執事ロイド・か……。久しぶりに・見たな)
エミリーはそう思って、自分は平賀の待つ20番線の9号車に向かった。
シンディからは、2度とオトコに絆されることの無いようにと釘を刺されているが……。
平賀は敷島の計らいで、敷島エージェンシー内部にある仮眠室で夜を明かした。
今は洗面所で洗顔や髭剃りをしている。
エミリーはその間、平賀が寝ていたベッドを整えている。
どうしてこの時間の起床なのかというと、豊洲駅前から始発の東京駅行きのバスに乗り、そこから新幹線に乗り換える為であった。
「おはようございます」
仮眠室にMEIKOがやってきた。
「ん?ああ、MEIKOか。お前も早いな。どうしたんだ?」
「事務所は朝7時から開けるので、皆1時間前から起動することになっているんですよ」
と、赤のバドスーツを着たMEIKOが説明した。
「そうなのか」
赤はMEIKOのイメージカラーである。
ボーカロイドはイメージカラーを持つことが慣例になっており、KAITOは青で、初音ミクは緑、鏡音リン・レンは黄色がベタである。
ところが、段々とボカロが増産されてくると1色だけでは足りなくなってきた。
量産型とされるLilyは、コンポジットの衣装から黄色と黒とされ、専用のマイクスタンドなど、まるで踏切の遮断棒のようである。
「要はそこで自己診断を行ったり、ウィルスチェックなどを行うのです」
「ああ、そうか」
「それじゃ。自分達はもう仙台に戻る。敷島さん達によろしくな」
平賀達はその言葉を残して、豊洲駅に向かった。
見送ったのはMEIKOと初音ミク。
まだこの時間、豊洲アルカディアビルの正面エントランスは開いていない。
防災センター受付のある夜間通用口から出なければならない。
仮眠明けなのか、眠そうな顔をしている警備員の前で入館証の貸し出し簿に返却の記入を行う。
「あ、金探はロボット専用ですから……」
警備員が、自ら率先して金属探知機の装置の中を通るエミリーに言った。
「ええ。彼女は“ロボット”です」
平賀はニヤッと笑った。
「ええっ!?」
「特に・何も・出ませんでした」
「は、はい。それなら結構です。あちらが、出口となっておりますので……」
平賀達が去って行った方向を見送った警備員は、
「本当、見分けがつかないな……」
と、呟いた。
[同日06:35.天候:晴 豊洲駅前バスターミナル→都営バス東16系統車内]
朝日の差すバスターミナル。
そこでバスを待っていると、始発のバスがやってきた。
「よくまあ、敷島さんはああいうので体当たりできるものだ。なあ?」
「イエス」
前扉が開いてバスに乗り込む。
この時間はまだそんなに混んでおらず、平賀は真ん中の1人席に腰掛けた。
その横にエミリーが大きな荷物を持って立つ。
〔発車致します。お掴まりください〕
バスは朝の陽ざしを浴びて、豊洲駅前バスターミナルを発車した。
〔毎度、都営バスをご利用頂きまして、ありがとうございます。このバスは月島駅前、リバーシティ21、住友ツインビル前経由、東京駅八重洲口行きです。次は豊洲2丁目、豊洲2丁目。……〕
車内はそんなに混んではいないが、しかしガラ空きというわけでもない。
既に車内は、通勤途上のサラリーマンの姿が見受けられる。
バスの車内表示版を見ると、途中に『IHI前』とか『日本ユニシス本社前』とかあるところを見ると、ビジネス路線と言える。
尚、豊洲駅からは勝どき経由の路線もあり、こちらはやや遠回りである。
聖路加国際病院へは15系統が良い。
シンディなら多弁で色々と話し掛けてくるのだろうが、それと比べて寡黙なエミリーは話し掛けてはこない。
それでも必要なことがあれば、話し掛けて来る。
例えば……。
[同日06:55.天候:晴 都営バス東16系統車内→東京駅]
〔毎度、都営バスをご利用頂きまして、ありがとうございました。次は東京駅八重洲口、東京駅八重洲口。終点でございます。……〕
「プロフェッサー平賀。まもなく・終点です」
うつらうつらして、窓に体をもたらせている平賀の左肩に手を置いて、エミリーが起こしてきた。
既に車内は立ち客が目立つほどの混雑ぶりになっていた。
「お……そうか。つい、うたた寝してしまった」
バスはJRバスも発着するバスターミナルの一画に進入し、都営バス降車場の前で止まった。
降車用の中扉が開くと、一気に乗っていた乗客が吐き出されて行く。
既に運賃は払っているので、降りる時はフリーである。
これもまた都営バスの定時運行に一役買っているのだろう。
遅延の原因の1つに客扱い遅れがあり、これは降車時に乗客が運賃の支払いに手間取ることがあるからだ。
大きな荷物はエミリーが軽々と持っており、その後に続いてバスを降りると、既に駅前の歩道は多くの通勤客が行き交っていた。
「プロフェッサー平賀。御朝食は・どうされますか?」
「駅弁でも買うよ。それより、早いとこ新幹線に乗ろう」
「イエス」
平賀達は朝ラッシュでごった返す東京駅構内に入り、すぐ近くにある『JR全線きっぷ売り場』に入った。
これはJR東海版“みどりの窓口”で、東海道新幹線のキップを率先して販売しているが、もちろん、東北新幹線のキップも売っている。
窓口だけではなく、ちゃんと券売機もあった。
平賀は先日、デイライト・コーポレーションの鳥柴からもらったグリーン車の回数券を手にしていた。
これで座席指定を受ければ、あとはそのグリーン車に乗れる。
「おっ、“はやて”があるな」
“はやて”の普通車指定席は虫食い状態で空席がある程度だったが、グリーン車は余裕があった。
普通車は全て指定席なので、そもそも自由席が無い。
回数券で座席指定を受けたキップを手に、JR東日本の改札口に入る。
そのまま横の青いフラッパーの改札機を通ろうとするのはミスリード。
そこは東海道新幹線専用改札口である。
JR東日本としての緑色のフラッパーゲートを通るべし。
……え?JR東海のコーポレートカラーはオレンジなのに、どうして青なのかって?
葛西名誉会長に聞いてくれ。
「エミリー。俺は一服するから、弁当とお茶買ってきてくれ」
「イエス」
平賀はエミリーに財布から2000円を出して渡した。
駅構内禁煙の東京駅だが、新幹線ホームには喫煙所がある。
最近になって、ホーム最南端にも喫煙所ができたらしい。
〔まもなく20番線に、“なすの”252号が10両編成で参ります。この電車は折り返し、7時16分発、“はやて”111号、盛岡行きとなります。黄色い線まで、お下がりください。……〕
エミリーにお使いを頼み、自分はホーム北部の喫煙所でタバコに火を点けた。
手持ちのスマホで、仙台で留守を預かる家族に、これから新幹線に乗る旨の連絡を行う。
〔「20番線、ご注意ください。7時16分発、東北新幹線“はやて”111号、盛岡行きの到着です。黄色い線まで、お下がりください。到着後、車内整備・清掃の為、一旦ドア閉めを行います。再度ドアが開くまで、乗車位置でお待ちください。……」〕
エミリーが売店で駅弁とお茶を買っていると、
「おはようございます」
と、エミリーに挨拶をする者がいた。
「!?」
それは紺色のスーツを着用した若い男。
すぐにスキャンすると、『Human』ではなく、『Loid』と出た。
「『東京弁当』と冷たいお茶を……」
男もまた駅弁とお茶を買っていた。
「……マスターに・頼まれた……のか?」
「そうです」
男はそれだけ答えると、足早に平賀達が乗る列車とは反対側のホーム(21番線)の方を歩いて行った。
21番線には上越新幹線が発着するようだ。
(執事ロイド・か……。久しぶりに・見たな)
エミリーはそう思って、自分は平賀の待つ20番線の9号車に向かった。
シンディからは、2度とオトコに絆されることの無いようにと釘を刺されているが……。
>「大謗法者にはキツイ事言っても仕方ない、問題ない」と聞く耳持たなかった様です。
どこからが「キツい事」なのかの線引きは曖昧なのだが、確か、同じ妙観講員さんだったか?
それだけに、対応に困る指摘だったのだろう。
因みに私の大謗法者への対応は、ガン無視である。
相手にするだけ、時間のムダ。
河童さんも「大謗法者」の部類に入るだろうが、正しくそれだった。
ちょっと信心に齧りついているだけの私らが言ったくらいで改めるのであれば、最初から『大いなる』謗法を犯すわけがない。
つまり、そういうことだ。
私は信仰関係は、巌虎ブログのほかいくつかのブログ・掲示板しか見ません(最近は邪義を言うアンチの掲示板・資料はできるだけ見るようにしていますが)。
ですので余所の事情には疎いのですが、発言については同じ講中で他の御信徒であれ同じことだと思います。
ガン無視はベストな対応かもしれません。
それでも海外遠征中の沖氏には勝ってほしいと思います。
普通のエールより、闘志を燃やしてもらえるようなエールを送ったつもりですが。
二重コメのうち、1つを削除しておきました。
人それぞれの考え方がありますからね、どれが正解ってことは無いのでしょう。
私はそもそも法論が嫌いな人間ですから、恐らく武闘派の方と合わないでしょうね。
“となりの沖田くん”を読み進めて行くうちに、段々自分と考えが違ってくるのが分かります。
二重コメントの件、削除のご対応をいただき、お手数をおかけし誠に申し訳ございませんでした。
「となりの沖田くん」、私は大変好きで、一面を読む前に「となりの沖田くん」をまず読んでしまっています。
本当は一面から順に読むべきでしょうか?
とんでもないです。
二重投稿ミスはよくあることですので。
それより、新聞の読み方は人それぞれだと思います。
私も産経新聞は後ろから読むことがありますよ。