報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「帰京後の報告」

2024-01-03 06:11:52 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月10日06時30分 天候:晴 東京都墨田区菊川2丁目 愛原家3階ダイニング]

 愛原「おはよう……」

 私は半分目が覚めていない様子で起きた。

 リサ「おはよう!」
 パール「おはようございます」

 食卓には、既に制服に着替えたリサが朝食を取っていた。

 愛原「あれ、高橋は?」
 パール「もうすぐ来ると思いますよ」

 その通り、奥の洗面所の方から高橋がやってきた。

 高橋「おはざーっス!」
 愛原「ああ、おはよう。結局昨夜は、夜中まで掛かっちゃったなぁ……」
 高橋「アネゴのことを内緒にして書いたから、しょうがないっスね」
 リサ「先生、また出かけるの?」
 愛原「今度はデイライトの事務所に行くだけだぞ」
 高橋「アネゴ達に先越されたのと、どっかのアホが爆弾仕掛けたせいで邪魔されたから、善場のねーちゃんブチギレますよ」
 愛原「その時は俺が怒られるから、高橋は心配すんな」
 高橋「うっス」
 愛原「このまま何も進展が無いと、また仕事が暇になる」
 高橋「と、いうことは……」
 リサ「遊びに行ける!」
 愛原「違う。また事故物件の調査依頼とか受けるハメになるってことだよ」
 高橋「ああ……」

 実は単価は高いのだが、殺人事件があった事故物件を調査する為、住み込んでいたら、戻って来た殺人犯に襲われたなんて話もあるからな……。
 ぶっちゃけ、発砲を許可して欲しい。

 愛原「リサは学校、今日の午後まで?」
 リサ「うん。明日と明後日は休み。さすがに勉強しなきゃ」
 愛原「俺も邪魔はしないさ。いい点取ったら、美味い物食いに連れてってやろうな」
 リサ「ありがとう!」

[同日10時00分 天候:晴 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]

 

 善場「昨日はお疲れさまでした。お2人がご無事で何よりです」
 愛原「何の成果も上げられず、申し訳ございません」
 善場「いえ、想定外のことですから。現状、こちらで分かっていることを、まずはお話しさせて頂きます」
 愛原「恐れ入ります」
 善場「まず、民宿さのやで起きたガス爆発ですが、どうもテロ事件だったようです」
 愛原「テロ事件!?」
 善場「はい。爆発したガスボンベに、小型の時限爆弾のようなものが取り付けられていたことが分かりました。よって実質的な経営者である所長の御親族については、釈放されることとなります」
 愛原「良かった……」

 私はホッとした。
 と、同時に高野君の言っていたことは本当だったと確信した。
 伯母さんの過失による事故ではなかったということで、釈放されることになる。
 その後は、名古屋に住んでいる従兄が伯母さんを引き取って、取りあえず名古屋まで連れて行くことになっている。

 高橋「じゃあ、誰が爆弾仕掛けたんだ?」
 善場「それはまだ捜査中です。……が、私は“青いアンブレラ”だと思っています」
 愛原「ブッ!」
 善場「どうかされましたか?」
 愛原「善場主任は、どうしてそう思われるのですか?」
 善場「まず、警察の聞き込み調査などから、当時、上空を怪しいヘリコプターが飛行していたことが目撃されています。そのヘリコプターを確認すると、“青いアンブレラ”だということが分かりました。それと、宿泊客の中に、それらしき人物も泊まっていたことが分かりました」
 愛原「よくそこまで分かりましたねぇ……」
 善場「宿泊客については、所長の御親戚が覚えてらしたので。宿帳などは爆発や火災で燃えてしまいましたが、あまり大きな民宿ではないですし、この季節は富士山も登山できません。つまり、登山客はいないわけです」
 愛原「まあ、今の時期は工事関係者とか、或いは週末に大石寺の関係者が泊まり来るとか、伯母さんは言ってましたね」
 善場「そうです。工事関係者でも、大石寺の信徒でもない。だから、余計に覚えていたのです」
 愛原「まさか、高野君が泊まっていたなんて仰るのでは……」
 善場「そのまさかです。御親戚の話では、1人の容姿が正に高野芽衣子こと、エイダ・ウォン・コピーとそっくりなのです」
 愛原「うへー……」
 善場「恐らく彼女らは所長達より先に愛原公一容疑者のアジトを調べ、重要証拠物を持ち去り、そして犯行の痕跡を消す為、爆弾テロに及んだのでしょう。BSAAに楯突く、卑怯な連中です」

 善場主任はBSAAに救出されたこともあり、盲目的に信じている部分がある。
 だがそのBSAA、支部はともかく、本部の方がキナ臭いという噂を聞いたのだが、今はどうなっているのだろうか。
 また、善場主任はディスっているものの、けして“青いアンブレラ”は、反社会組織でもテロ組織でもない。
 警備会社の武装を認めたり、民間軍事会社の存在・活動を認めている国や地域では、立派な武装警備会社であり、民間軍事組織なのである。

 善場「それを踏まえた上で、所長方の御報告をお伺いしましょうか」
 愛原「そのエイダ・ウォン・コピーから、USBメモリーが届きましてね……」
 善場「はあ!?」
 愛原「確認したら、“青いアンブレラ”が上空ヘリから撮影した画像と、その隊員が公一伯父さんの地下室に潜入する画像が入っていたんですよ」

 ヘリからの上空映像は渡さないと言っていた高野君だったが、気が変わったか、高野君より上の役職者から指示か許可されたかしたのだろう。

 善場「こちらに引き渡して頂けますか?」
 愛原「もちろんです」

 私はUSBメモリーを善場主任に渡した。
 早速主任は、手持ちのノートPCに差して中身を確認する。
 映像を観ていた主任は終始ポーカーフェイスだったが、時間が経つにつれ、ゴゴゴゴと激しいオーラが出ているのが分かった。

 善場「……では今、重要証拠物は“青いアンブレラ”の手に渡っていると?」
 愛原「そ、そのようです……」
 善場「これは、ますます“青いアンブレラ”を厳しく取り締まらないといけませんね……」
 愛原「お、お役に立てず、申し訳ありません」
 高橋「ねーちゃん。要はこの軽トラで逃げたヤツが、犯人なんだろ?」
 善場「まあ、そうですね」
 愛原「この人物も“青いアンブレラ”だと思いますか?そうなると自作自演ということになりますが……」
 善場「そういうことも辞さない組織だと思いますよ。だいいち、しっかりとカメラに映っているわけじゃありませんか。まあ、小さな画像ですが」
 愛原「ええ」
 善場「BSAAでしたら、作戦行動を妨害する人物だということで、即座に捕まえに行くはずですけどね。しかしこの画像を見る限り、そのような行動は見受けられません」
 愛原「小さかったから、気が付かなかったんじゃないでしょうかね?」
 善場「いずれにせよ、この人物を特定する必要がありそうですね。ありがとうございます。“青いアンブレラ”がどういう意図で、この動画を所長に送り付けたのかは不明ですが、これについては所長のお手柄だと評価させて頂きます」
 愛原「あ、ありがとうございます」
 善場「今後も引き続き、何か変わったことがございましたら、すぐにご連絡ください」
 愛原「承知しました」
 善場「……あ、そうそう。一両日中に、お預かりしていた旅行券などの有価証券並びに現金・貴金属類以外の景品については、証拠能力無しということが決定しましたので、所長方にお渡しできるかもしれません」
 愛原「そうですか」
 高橋「ということは、札束やインゴットは……」
 善場「こちらはまだ出所を調べている最中ですので、まだお渡しできません」
 高橋「うえー……」
 愛原「そうなりますと、今日は金曜日ですから……」
 善場「来週の月曜日にでもお持ちしましょう」
 愛原「えっ、いいんですか?」
 善場「お預かりしていたのは私共ですから、御返却もこちらから伺いますよ」
 愛原「何でしたら、郵送とかでも構いませんが……」
 善場「いえいえ。返却に際して、色々と書類に記入して頂く必要がございますので」
 愛原「そ、そうですか。そういうことでしたら……」

 ということで、今日の話は終わったわけである。

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