[4月3日07:19.天候:晴 東京都墨田区菊川 都営地下鉄菊川駅]
〔まもなく1番線に、各駅停車、橋本行きが、短い8両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください。この電車は、京王線内、区間急行となります〕
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
仕事とはいえ、急な出張だ。
まさか、斉藤社長からの依頼が今日出発だったとは。
よほど何か急ぎであると見える。
〔1番線の電車は、各駅停車、橋本行きです。きくかわ~、菊川~〕
8両編成の都営車両に乗り込む。
京王電車と違い、ラインカラーの黄緑色の塗装がされている。
それの先頭車に乗り込んだ。
〔1番線、ドアが閉まります〕
電車のドアとホームドアが閉まる。
先頭車は、平日ダイヤのこの時間帯だと女性専用車両となるが、土休日は適用外である。
運転室から発車合図のブザー音と、ハンドルを操作する音が聞こえると電車が走り出した。
〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
この仕事には助手の高橋だけでなく、リサも来ていた。
仕事内容が日本アンブレラの白井絡みなだけに、BOWの襲撃を想定すると、リサのような上級BOWが護衛に付いていると心強い。
何しろ今日の出張は飛行機に乗るのだ。
とても機内に銃など持ち込めないからな。
なので、BOWと遭遇した場合、リサが頼りだ。
私がリサにそれを頼むと、リサは大きく頷いて快諾した。
何より、仕事とはいえ、私と旅行に行けることが嬉しいようだ。
愛原:「これから大空を飛ぶというのに、今はその逆だ。地べたどころか、地下に潜っている」
高橋:「俺達は地下も上空もコンプするんですから凄いっスね」
愛原:「まあな」
入学式が終わった後、リサ達は土日は授業が無かった。
リサが所属する1年5組の担任教師からは、『高校生になれば勉強に部活と毎日が忙しくなる。せめて最初の土日くらいはゆっくり過ごすように』とのことだった。
実際は土日も行われる部活動の見学会が行われるそうだが、参加は任意であるし、リサとしてはあまり部活動には興味を示さなかった。
リサが憧れたのは学校生活そのものであって、その中の何かを集中的にやりたいというわけではなかったようだ。
そこはスポーツ特待生で入学した者とは、対照的と言えよう。
斉藤絵恋さんは女子空手部一択であるようだが……。
[同日07:23.天候:晴 東京都中央区日本橋横山町 都営地下鉄馬喰横山駅→同区東日本橋三丁目 都営地下鉄東日本橋駅]
〔1番線の電車は、各駅停車、橋本行きです。ばくろよこやま~、馬喰横山~〕
乗換駅に着いた私達は、ここで電車を降りた。
そして、すぐに乗り換え通路に向かう。
都営地下鉄から都営地下鉄に乗り換えるだけなのだが、東京の地下鉄あるあるで、何故か1つ改札口を挟まなくてはならないのだ。
事実上の同一駅であるにも関わらず、駅名が違う理由はこれだろうか。
愛原:「こっちの改札口を通るんだ」
私達は大きく浅草線と書かれた改札口を通った。
尚、ICカードで乗る場合は、別に乗換改札機でなくても良いという。
あくまで、キップで乗る場合だ。
愛原:「次の乗り換えで、羽田空港行きに乗れば大丈夫だ」
地下通路を通って、今度は都営浅草線のホームに行く。
リサ:「ゾンビが出て来そう……」
愛原:「こら」
アメリカのラクーン市やトールオークス市でも、地下鉄はゾンビパラダイスと化していたらしいが、全駅がそうだったというわけではないようだ(ラクーン市のレッドストーン・ストリート駅は、ゾンビの進入を拒むことができていた)。
〔まもなく1番線に、各駅停車、羽田空港第1・第2ターミナル行きが到着します。黄色いブロックの内側で、お待ちください。この電車は、京急線内、“エアポート急行”となります〕
都営新宿線と違って、様々な鉄道事業者の様々な車両が走行しているからか、都営浅草線はあまりホームドアが普及していない。
但し、やってきた電車は、東京都のイチョウマークを車両の前面はもちろん側面や内装にも着けた、都営の車両だった。
新宿線用と違って軌間は異なり、外装も内装も異なる。
〔1番線の電車は、各駅停車、羽田空港第1・第2ターミナル行きです。ひがしにほんばし~、東日本橋~、問屋街です〕
新宿線用の車内はシックな感じであるが、こちらは明るい感じである。
因みに旧型車両である。
〔1番線、ドアが閉まります〕
ドアチャイムは都営大江戸線の物と同じ音色。
ピンポーンピンポーンと2回鳴る。
ピンク色の座席に腰かけた。
土曜日なので、あまり混んでいない。
この路線もツーマン運転なので、車掌の発車合図のブザーが鳴ってから発車する。
先頭車に乗っていると、だいたい聞こえてくる。
〔次は人形町、人形町。日比谷線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Ningyocho.A14.Please change here for the Hibiya line.〕
リサ:「先生、いつ地上に出るの?」
愛原:「泉岳寺まで地下だね。泉岳寺から京急線に入って、品川駅から地上だよ。ただ、京急空港線内はまた地下になる」
地上区間もあるにはあるが、京急空港線は殆ど地下区間だったはずだ。
あまり地下が好きではないリサにとって、せっかく研究所から出れたのに地下にいるというのは好きではないようだ。
高橋:「先生。これから行く白井の実家のあった場所、住所まで割れてるもんだから、そこまで分かったらネットで調べれるじゃないスか」
愛原:「そうだな」
今やグーグルマップのストリートビューで大体分かる時代だ。
それで調べてみたところ、ストリートビューには空き家の廃屋と思しき物が写っていた。
廃屋ならこっそり中に入って調べることができる。
画像は2年前のものであったから、大して変わっていないはずだ。
愛原:「だからこそ、中に何かあるかもしれない。最悪、BOWが眠っていて、俺達が入った途端、襲って来るかもしれない」
リサ:「その時は任せて。ハンターくらいなら、軽くあの世に送ってやるから」
リサはニッと笑った。
緑色のマスクをしているので口元は見えなかったが、恐らく牙が覗いたはずだ。
そして何より、一瞬だがリサの爪が尖ったような気がした。
リサ:「それよりお腹空いた」
高橋:「先生。飛行機の時間より、少し早く着く計算スか?」
愛原:「そうだよ。いくら地下鉄が渋滞無しとはいえ、人身事故とか車両故障とかでダイヤが乱れる恐れがあるだろ?早めに行くに越したことはない。着いたら、空港のレストランで何か食べよう」
リサ:「おー!」
地下区間はいいのだが、京急線内って踏切あったよな?
そんな所で事故らなければ良いのだが。
いや、電車ならその程度の事故でも、中の乗客は意外と無事だったりする。
因みに京急本線で、時速120キロで走行中の快特電車が踏切で立ち往生していたトラックと大激突したというものがあったが、快特はそのスピードで走っても、急行はそんなに速く走らないだろうからな。
いや、私はリサに期待を持たせてしまった。
それが裏切られるダイヤ乱れが起きたりすると、たちまちリサの機嫌が悪くなってしまう。
BOWの常で、暴走直前は何も喋らなくなることが多いらしい。
私は、この電車がダイヤ通りに着くことを祈った。
〔まもなく1番線に、各駅停車、橋本行きが、短い8両編成で到着します。ドアから離れて、お待ちください。この電車は、京王線内、区間急行となります〕
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
仕事とはいえ、急な出張だ。
まさか、斉藤社長からの依頼が今日出発だったとは。
よほど何か急ぎであると見える。
〔1番線の電車は、各駅停車、橋本行きです。きくかわ~、菊川~〕
8両編成の都営車両に乗り込む。
京王電車と違い、ラインカラーの黄緑色の塗装がされている。
それの先頭車に乗り込んだ。
〔1番線、ドアが閉まります〕
電車のドアとホームドアが閉まる。
先頭車は、平日ダイヤのこの時間帯だと女性専用車両となるが、土休日は適用外である。
運転室から発車合図のブザー音と、ハンドルを操作する音が聞こえると電車が走り出した。
〔次は森下、森下。都営大江戸線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
この仕事には助手の高橋だけでなく、リサも来ていた。
仕事内容が日本アンブレラの白井絡みなだけに、BOWの襲撃を想定すると、リサのような上級BOWが護衛に付いていると心強い。
何しろ今日の出張は飛行機に乗るのだ。
とても機内に銃など持ち込めないからな。
なので、BOWと遭遇した場合、リサが頼りだ。
私がリサにそれを頼むと、リサは大きく頷いて快諾した。
何より、仕事とはいえ、私と旅行に行けることが嬉しいようだ。
愛原:「これから大空を飛ぶというのに、今はその逆だ。地べたどころか、地下に潜っている」
高橋:「俺達は地下も上空もコンプするんですから凄いっスね」
愛原:「まあな」
入学式が終わった後、リサ達は土日は授業が無かった。
リサが所属する1年5組の担任教師からは、『高校生になれば勉強に部活と毎日が忙しくなる。せめて最初の土日くらいはゆっくり過ごすように』とのことだった。
実際は土日も行われる部活動の見学会が行われるそうだが、参加は任意であるし、リサとしてはあまり部活動には興味を示さなかった。
リサが憧れたのは学校生活そのものであって、その中の何かを集中的にやりたいというわけではなかったようだ。
そこはスポーツ特待生で入学した者とは、対照的と言えよう。
斉藤絵恋さんは女子空手部一択であるようだが……。
[同日07:23.天候:晴 東京都中央区日本橋横山町 都営地下鉄馬喰横山駅→同区東日本橋三丁目 都営地下鉄東日本橋駅]
〔1番線の電車は、各駅停車、橋本行きです。ばくろよこやま~、馬喰横山~〕
乗換駅に着いた私達は、ここで電車を降りた。
そして、すぐに乗り換え通路に向かう。
都営地下鉄から都営地下鉄に乗り換えるだけなのだが、東京の地下鉄あるあるで、何故か1つ改札口を挟まなくてはならないのだ。
事実上の同一駅であるにも関わらず、駅名が違う理由はこれだろうか。
愛原:「こっちの改札口を通るんだ」
私達は大きく浅草線と書かれた改札口を通った。
尚、ICカードで乗る場合は、別に乗換改札機でなくても良いという。
あくまで、キップで乗る場合だ。
愛原:「次の乗り換えで、羽田空港行きに乗れば大丈夫だ」
地下通路を通って、今度は都営浅草線のホームに行く。
リサ:「ゾンビが出て来そう……」
愛原:「こら」
アメリカのラクーン市やトールオークス市でも、地下鉄はゾンビパラダイスと化していたらしいが、全駅がそうだったというわけではないようだ(ラクーン市のレッドストーン・ストリート駅は、ゾンビの進入を拒むことができていた)。
〔まもなく1番線に、各駅停車、羽田空港第1・第2ターミナル行きが到着します。黄色いブロックの内側で、お待ちください。この電車は、京急線内、“エアポート急行”となります〕
都営新宿線と違って、様々な鉄道事業者の様々な車両が走行しているからか、都営浅草線はあまりホームドアが普及していない。
但し、やってきた電車は、東京都のイチョウマークを車両の前面はもちろん側面や内装にも着けた、都営の車両だった。
新宿線用と違って軌間は異なり、外装も内装も異なる。
〔1番線の電車は、各駅停車、羽田空港第1・第2ターミナル行きです。ひがしにほんばし~、東日本橋~、問屋街です〕
新宿線用の車内はシックな感じであるが、こちらは明るい感じである。
因みに旧型車両である。
〔1番線、ドアが閉まります〕
ドアチャイムは都営大江戸線の物と同じ音色。
ピンポーンピンポーンと2回鳴る。
ピンク色の座席に腰かけた。
土曜日なので、あまり混んでいない。
この路線もツーマン運転なので、車掌の発車合図のブザーが鳴ってから発車する。
先頭車に乗っていると、だいたい聞こえてくる。
〔次は人形町、人形町。日比谷線は、お乗り換えです。お出口は、右側です〕
〔The next station is Ningyocho.A14.Please change here for the Hibiya line.〕
リサ:「先生、いつ地上に出るの?」
愛原:「泉岳寺まで地下だね。泉岳寺から京急線に入って、品川駅から地上だよ。ただ、京急空港線内はまた地下になる」
地上区間もあるにはあるが、京急空港線は殆ど地下区間だったはずだ。
あまり地下が好きではないリサにとって、せっかく研究所から出れたのに地下にいるというのは好きではないようだ。
高橋:「先生。これから行く白井の実家のあった場所、住所まで割れてるもんだから、そこまで分かったらネットで調べれるじゃないスか」
愛原:「そうだな」
今やグーグルマップのストリートビューで大体分かる時代だ。
それで調べてみたところ、ストリートビューには空き家の廃屋と思しき物が写っていた。
廃屋ならこっそり中に入って調べることができる。
画像は2年前のものであったから、大して変わっていないはずだ。
愛原:「だからこそ、中に何かあるかもしれない。最悪、BOWが眠っていて、俺達が入った途端、襲って来るかもしれない」
リサ:「その時は任せて。ハンターくらいなら、軽くあの世に送ってやるから」
リサはニッと笑った。
緑色のマスクをしているので口元は見えなかったが、恐らく牙が覗いたはずだ。
そして何より、一瞬だがリサの爪が尖ったような気がした。
リサ:「それよりお腹空いた」
高橋:「先生。飛行機の時間より、少し早く着く計算スか?」
愛原:「そうだよ。いくら地下鉄が渋滞無しとはいえ、人身事故とか車両故障とかでダイヤが乱れる恐れがあるだろ?早めに行くに越したことはない。着いたら、空港のレストランで何か食べよう」
リサ:「おー!」
地下区間はいいのだが、京急線内って踏切あったよな?
そんな所で事故らなければ良いのだが。
いや、電車ならその程度の事故でも、中の乗客は意外と無事だったりする。
因みに京急本線で、時速120キロで走行中の快特電車が踏切で立ち往生していたトラックと大激突したというものがあったが、快特はそのスピードで走っても、急行はそんなに速く走らないだろうからな。
いや、私はリサに期待を持たせてしまった。
それが裏切られるダイヤ乱れが起きたりすると、たちまちリサの機嫌が悪くなってしまう。
BOWの常で、暴走直前は何も喋らなくなることが多いらしい。
私は、この電車がダイヤ通りに着くことを祈った。
法華講も一枚岩ではない。