[4月27日14:00.天候:晴 東京都江東区豊洲・豊洲アルカディアビル18F・敷島エージェンシー]
1台の黒塗りミニバンがビルの地下駐車場に入構する。
来客用の駐車スペースに止まると、運転席と助手席から黒スーツを着用した黒人2人が降りてきた。
そして助手席の黒服が、スライドドアを開けた。
そこから降りてきたのは、白人の男性。
金髪を真ん中から分けた短髪で、こちらは青色のスーツを着用していた。
年齢は40歳くらい。
スラッとした体型が特徴だった。
白人男性は黒人2人に挟まれるようにして、エレベーターホールに向かった。
「!」
自動ドアから中に入ろとすると、1人の女性が待ち構えていたので、黒人男性2人は思わず身構えた。
「ミスター・アルバート・F・スノーウェルですね?私は敷島エージェンシーで敷島社長の秘書を務めておりますシンディ・サードと申します。お迎えに上がりました」
シンディは普段使用している言語を『日本語』から『英語』に切り替えて挨拶した。
なので、シンディが今喋った言語は英語である。
何も、作者が日本語しかできないからって、日本語で書いたわけではないぞ。
ほぼ100パー、読者の皆様は日本人であるから、自動的に日本語に訳したのだ。
シンディの恭しい挨拶に、アルバートと呼ばれた白人男性は、
「ヒュー……」
と、口笛にも似た息を吹いた。
「これは丁寧な出迎え、ありがとう。キミのことは聞いてるよ。あの世界的なマッド・サイエンティスト、ドクター・ウィリーの最高傑作だと。実に美しい。正に、造形美と機能美の集大成だ」
「お褒めに預かりまして、大変光栄です。どうぞ、こちらへ。社長がお待ちです」
シンディは先に立つと、エレベーターのボタンを押した。
すぐにエレベーターのドアが開く。
若くして1つの大きな研究所を任せられるのだから、とても天才なのだろう。
しかし、何故かシンディは『Attention』を解除できないでいた。
恐らく今、社長室にあるシンディを遠隔監視する端末でも、注意報が発報したことだろう。
エレベーターが18階に到着する。
「このフロア、全て敷島エージェンシーのオフィスなのか?」
「はい、そうです。社長室にご案内致します」
「雑多な、私のラボに比べてとてもきれいなオフィスだ」
「恐れ入ります」
シンディは社長室のドアをノックした。
「失礼します。アルバート・F・スノーウェル様をご案内致しました」
シンディ、今度は日本語に切り替えて敷島に言った。
「ご苦労さん」
そう言った後、敷島は英語で、
「ようこそ、敷島エージェンシーへ!私、代表取締役社長の敷島孝夫です」
と、挨拶した。
もう1度言うが、読者の皆様の為に自動翻訳させて頂いている。
「デイライト・コーポレーション・インク、アーカンソー研究所から参りましたアルバート・F・スノーウェルです。あなたに会えて、光栄です」
敷島とアルバートは握手を交わした。
尚、黒人護衛は1人が社長室の外に立ち、1人はアルバートの後ろに控えている。
御多聞に漏れず、サングラスを掛けていた。
シンディはすぐに紅茶とコーヒーを持って来た。
人間の女性秘書よろしく、アルバートの前には紅茶をゆっくり置く。
「やはり、本場のオリジナルは違う。私が製造したマルチタイプは、ここまで丁寧な対応はできませんよ」
「そうなんですか?」
「何しろ、メイドまでガイノイドにしてしまうという発想自体がアメリカには無いものでしてね。こちらのマルチタイプは、メイドのガイノイドの代わりを十分に果たせると聞きました」
「ええ、そうなんです。メイドどころかナース(子守り)も可能です」
「それは素晴らしい。あいにくと、私が開発したマルチタイプはテロと戦うことに関しては、世界一だと自負しておりますが、それ以外のソフト面に関しましては改良の余地があると考えています」
「所長もまた、ロボット・テロを許さないという強い正義感をお持ちのようですね」
「当然です。本来、人類に貢献すべきロボットがその逆を行うことは許されません。ましてや殺戮など、言語道断という言葉ですら手ぬるい」
「激しく同意です。おかげさまで、今ではシンディも贖罪の道を突き進んでおります」
「あえて廃棄処分ではなく、贖罪の道を歩ませる。敷島社長の懐の広さには、頭が下がりますよ」
「もちろん、最終的な決定をしたのは、日本人の研究者達ですがね。私は実験の立会人をしているのですよ」
「実験の立会人?」
「私もシンディと敵対していた頃がありました。ドクター・ウィリーと敵対していたのですから、その使役ロイドが敵として立ちはだかるのは当然ですね。そんな存在が180度立場を変えた時、何が起きるのか。本当に贖罪ができるのか。これは却って、研究者ではない人間が行うべきだという判断になりましてね。もちろん、研究者は遠くから見ていますよ。研究者が主観的に行うと、穿った見方になってしまうということですね」
「……少し難しい話だが、面白い発想ではありますね。それで、実験の進捗具合は?」
「順調ですよ。後期タイプのボディですが、それを使用してからというもの、シンディは誰1人殺していません。それどころか、何度も人助けをしていますよ」
「KR団の最終兵器が、再びフクシマの原子力発電所を破壊しに行こうとしていた事件は、私も見ました。それを阻止したのが、そこにいるシンディ・サードだと?」
「ええ。その最終兵器をダウンさせる方法が分かった時、日本人研究者達が右往左往してしまいました。私自身も動くことができなかった。そこを自分の判断で動いたのがシンディでした」
シンディは敷島の後ろで畏まるシンディを見た。
シンディは微笑を浮かべたまま、小さく頷いた。
(もっとも、アルエットを壊してしまう形にはなったけどね)
と、敷島の話を聞いてそう思った。
「なかなかできないことでしょう?」
「確かに。うちのマルチタイプ達は、その最終兵器に立ち向かって行くという判断をしたでしょう」
「それでそのバージョン400を倒せるのでしたら、その判断を悪くは無かったと思います」
「倒せてましたよ。一応、実験でバージョン400のコピーロボットと戦わせてみましたが、圧勝でした」
「それはそれは……」
敷島とアルバートとの対談は2時間にも及んだ。
アルバートは敷島のテロとの戦いの話を、何度も頷いて聞いていた。
[同日18:00.天候:晴 江東区東雲・マンスリーマンション]
敷島とシンディは同じ区内のマンスリーマンションを借りて、平日は別宅としてそこに住んでいる。
といっても、そこはマンスリーマンション。
間取りは同じ区内の森下の時と同様、2DKである。
敷島はシンディが夕食を用意している間、アリスに電話していた。
今日会ったアルバートについてだ。
「テロを許さないという正義感の強さは、平賀先生と通じるものがあったな。平賀先生がエミリーを引き取って、彼女にテロ対策させているのと似ているかもしれない。……そうだな。でもなあ、初対面のせいなのかな?そんなに、何というか……あんまり信用できないというか……。どこかしら冷たい所が感じられて、首を傾げる所はあったね。アメリカ人だからか?」
{「それは偏見だよ。理系男子なんて、みんなクール属性なもんでしょ。プロフェッサー平賀みたいに、パッション系なのが珍しいの」}
「それもそれで偏見だと思うぞ?……まあ、とにかく、明日はロボット未来科学館を視察したいというから、西山館長にもよろしく。……ああ、それじゃ。……いや、俺は行けんよ。俺は明日、都議会議員と会合があるんだ」
敷島は電話を切った。
(それとも、デイライトさんのアメリカの研究員達ってのは、皆あんな感じなのか?)
「社長、夕食できたよー」
「ああ」
敷島は深く考えることはやめにして、シンディが作ってくれた夕食に箸をつけることにした。
1台の黒塗りミニバンがビルの地下駐車場に入構する。
来客用の駐車スペースに止まると、運転席と助手席から黒スーツを着用した黒人2人が降りてきた。
そして助手席の黒服が、スライドドアを開けた。
そこから降りてきたのは、白人の男性。
金髪を真ん中から分けた短髪で、こちらは青色のスーツを着用していた。
年齢は40歳くらい。
スラッとした体型が特徴だった。
白人男性は黒人2人に挟まれるようにして、エレベーターホールに向かった。
「!」
自動ドアから中に入ろとすると、1人の女性が待ち構えていたので、黒人男性2人は思わず身構えた。
「ミスター・アルバート・F・スノーウェルですね?私は敷島エージェンシーで敷島社長の秘書を務めておりますシンディ・サードと申します。お迎えに上がりました」
シンディは普段使用している言語を『日本語』から『英語』に切り替えて挨拶した。
なので、シンディが今喋った言語は英語である。
何も、作者が日本語しかできないからって、日本語で書いたわけではないぞ。
ほぼ100パー、読者の皆様は日本人であるから、自動的に日本語に訳したのだ。
シンディの恭しい挨拶に、アルバートと呼ばれた白人男性は、
「ヒュー……」
と、口笛にも似た息を吹いた。
「これは丁寧な出迎え、ありがとう。キミのことは聞いてるよ。あの世界的なマッド・サイエンティスト、ドクター・ウィリーの最高傑作だと。実に美しい。正に、造形美と機能美の集大成だ」
「お褒めに預かりまして、大変光栄です。どうぞ、こちらへ。社長がお待ちです」
シンディは先に立つと、エレベーターのボタンを押した。
すぐにエレベーターのドアが開く。
若くして1つの大きな研究所を任せられるのだから、とても天才なのだろう。
しかし、何故かシンディは『Attention』を解除できないでいた。
恐らく今、社長室にあるシンディを遠隔監視する端末でも、注意報が発報したことだろう。
エレベーターが18階に到着する。
「このフロア、全て敷島エージェンシーのオフィスなのか?」
「はい、そうです。社長室にご案内致します」
「雑多な、私のラボに比べてとてもきれいなオフィスだ」
「恐れ入ります」
シンディは社長室のドアをノックした。
「失礼します。アルバート・F・スノーウェル様をご案内致しました」
シンディ、今度は日本語に切り替えて敷島に言った。
「ご苦労さん」
そう言った後、敷島は英語で、
「ようこそ、敷島エージェンシーへ!私、代表取締役社長の敷島孝夫です」
と、挨拶した。
もう1度言うが、読者の皆様の為に自動翻訳させて頂いている。
「デイライト・コーポレーション・インク、アーカンソー研究所から参りましたアルバート・F・スノーウェルです。あなたに会えて、光栄です」
敷島とアルバートは握手を交わした。
尚、黒人護衛は1人が社長室の外に立ち、1人はアルバートの後ろに控えている。
御多聞に漏れず、サングラスを掛けていた。
シンディはすぐに紅茶とコーヒーを持って来た。
人間の女性秘書よろしく、アルバートの前には紅茶をゆっくり置く。
「やはり、本場のオリジナルは違う。私が製造したマルチタイプは、ここまで丁寧な対応はできませんよ」
「そうなんですか?」
「何しろ、メイドまでガイノイドにしてしまうという発想自体がアメリカには無いものでしてね。こちらのマルチタイプは、メイドのガイノイドの代わりを十分に果たせると聞きました」
「ええ、そうなんです。メイドどころかナース(子守り)も可能です」
「それは素晴らしい。あいにくと、私が開発したマルチタイプはテロと戦うことに関しては、世界一だと自負しておりますが、それ以外のソフト面に関しましては改良の余地があると考えています」
「所長もまた、ロボット・テロを許さないという強い正義感をお持ちのようですね」
「当然です。本来、人類に貢献すべきロボットがその逆を行うことは許されません。ましてや殺戮など、言語道断という言葉ですら手ぬるい」
「激しく同意です。おかげさまで、今ではシンディも贖罪の道を突き進んでおります」
「あえて廃棄処分ではなく、贖罪の道を歩ませる。敷島社長の懐の広さには、頭が下がりますよ」
「もちろん、最終的な決定をしたのは、日本人の研究者達ですがね。私は実験の立会人をしているのですよ」
「実験の立会人?」
「私もシンディと敵対していた頃がありました。ドクター・ウィリーと敵対していたのですから、その使役ロイドが敵として立ちはだかるのは当然ですね。そんな存在が180度立場を変えた時、何が起きるのか。本当に贖罪ができるのか。これは却って、研究者ではない人間が行うべきだという判断になりましてね。もちろん、研究者は遠くから見ていますよ。研究者が主観的に行うと、穿った見方になってしまうということですね」
「……少し難しい話だが、面白い発想ではありますね。それで、実験の進捗具合は?」
「順調ですよ。後期タイプのボディですが、それを使用してからというもの、シンディは誰1人殺していません。それどころか、何度も人助けをしていますよ」
「KR団の最終兵器が、再びフクシマの原子力発電所を破壊しに行こうとしていた事件は、私も見ました。それを阻止したのが、そこにいるシンディ・サードだと?」
「ええ。その最終兵器をダウンさせる方法が分かった時、日本人研究者達が右往左往してしまいました。私自身も動くことができなかった。そこを自分の判断で動いたのがシンディでした」
シンディは敷島の後ろで畏まるシンディを見た。
シンディは微笑を浮かべたまま、小さく頷いた。
(もっとも、アルエットを壊してしまう形にはなったけどね)
と、敷島の話を聞いてそう思った。
「なかなかできないことでしょう?」
「確かに。うちのマルチタイプ達は、その最終兵器に立ち向かって行くという判断をしたでしょう」
「それでそのバージョン400を倒せるのでしたら、その判断を悪くは無かったと思います」
「倒せてましたよ。一応、実験でバージョン400のコピーロボットと戦わせてみましたが、圧勝でした」
「それはそれは……」
敷島とアルバートとの対談は2時間にも及んだ。
アルバートは敷島のテロとの戦いの話を、何度も頷いて聞いていた。
[同日18:00.天候:晴 江東区東雲・マンスリーマンション]
敷島とシンディは同じ区内のマンスリーマンションを借りて、平日は別宅としてそこに住んでいる。
といっても、そこはマンスリーマンション。
間取りは同じ区内の森下の時と同様、2DKである。
敷島はシンディが夕食を用意している間、アリスに電話していた。
今日会ったアルバートについてだ。
「テロを許さないという正義感の強さは、平賀先生と通じるものがあったな。平賀先生がエミリーを引き取って、彼女にテロ対策させているのと似ているかもしれない。……そうだな。でもなあ、初対面のせいなのかな?そんなに、何というか……あんまり信用できないというか……。どこかしら冷たい所が感じられて、首を傾げる所はあったね。アメリカ人だからか?」
{「それは偏見だよ。理系男子なんて、みんなクール属性なもんでしょ。プロフェッサー平賀みたいに、パッション系なのが珍しいの」}
「それもそれで偏見だと思うぞ?……まあ、とにかく、明日はロボット未来科学館を視察したいというから、西山館長にもよろしく。……ああ、それじゃ。……いや、俺は行けんよ。俺は明日、都議会議員と会合があるんだ」
敷島は電話を切った。
(それとも、デイライトさんのアメリカの研究員達ってのは、皆あんな感じなのか?)
「社長、夕食できたよー」
「ああ」
敷島は深く考えることはやめにして、シンディが作ってくれた夕食に箸をつけることにした。
テロ対策のため警備会社と契約して
赤外線による機械警備システムが入ってます。
侵入検知すると警報が発報して
警備員が駆け付ける様になっているのですが
如何せん、廻りが風致地区に指定されてる所で
降雨があると雑草が伸び放題状態になり
誤作動します。
先日も誤作動したんですが、確認が必要です。
ところが、駆け付けた警備員が吐いた言葉にビックリ!
「蜘蛛の巣があるので行きたくない」だと!
頭にきたので怒鳴り付けてやりました。
「何のために高い契約してしてるのか?
誤作動か不法侵入かを確認するのが
貴方の仕事だろうが」と。
信じられますか?ww
本音が出たのかもしれませんが、バカ正直に言うことではありませんな。
私だったら、手持ちの警戒棒で巣を払いながら進みますね。
あとは、巣が当たらないように完全防備で行くか……。
ちょっとプロ意識がありませんな。