報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“私立探偵 愛原学” 「リサの暴走を阻止せよ」 2

2022-07-04 11:14:22 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[5月13日19:00.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]

 愛原:「……よし、できた」

 クライアントへの報告書作成が終わり、私は帰る支度を始めた。
 そういえば応接室で休んでいるリサは、あれから一度も出て来ない。
 先に起こしておくことにした。

 愛原:「リサ、リサ。起きてるか?」

 応接室のドアをノックする。
 しかし、中から応答は無い。

 愛原:「開けるぞ?」

 ドアを開ける。

 リサ:「グー……グー……」

 リサは3人掛けソファに横になり、あられもない姿で寝ていた。
 あられもないというのは、上はブラウスのボタンを全部外し、下のスポブラ丸見えであり、下は下でスカートを脱いで、その下のスパッツ丸出しで寝ていた。
 そんなに寝相は悪くないはずなのに、今はそれがウソみたいな悪い寝相だ。
 で、第1形態に戻っている。

 愛原:「リサ、そろそろ起きろよ」

 私がリサの肩を揺さぶると……。

 リサ:「!」

 一瞬、鼾が止まった。
 そして……。

 リサ:「ガァァッ!!」

 飛び掛かって襲って来た。

 愛原:「うわっ!?」

 組み付かれてしまった!

(ここでクイックタイムイベント、略称QTE発生。制限時間以内にコントローラの操作が上手くできないと、愛原は暴走したリサに食い殺されてゲームオーバー)

 愛原:「やめろ、リサ!」

 私はどうやら制限時間以内にQTEをクリアできたようだ。
 リサを引き剥がし、突き飛ばした。
 リサは後ろに倒れて、床に頭をゴツンとぶつけて動かなくなった。
 と、第1形態から第0形態へと変化する。

 リサ:「うぅう……」

 そして、呻いて起き上がって来た。

 リサ:「いたたた……」
 愛原:「だ、大丈夫か?」

 今度はどうやら、暴走していないらしい。

 リサ:「大丈夫……。ああ、わたし、ソファから落ちたんだね」

 本当は私が突き飛ばしたのだが、それは黙ってておこう。

 愛原:「どうしたんだ、こんな格好で?」
 リサ:「途中で暑くなったから脱いだの。スカートは、シワになるとアレだし……」
 愛原:「そうか……。とにかく、そろそろ帰るから、早く着るんだ」
 リサ:「分かった」

 リサはブラウスのボタンを留め始めた。
 その間私は応接室を出て、高橋に電話する。

 愛原:「……ああ。今から帰る。それじゃ」

 制服を着たリサが応接室から出てくると、私は事務所をあとにした。

[同日19:15.天候:雨 同地区内 愛原のマンション]

 尚、帰り際、善場主任から電話があった。
 何でも、BOW探査アプリのアラームが一瞬だけ鳴動したのだが、何か知らないかと。
 私や高橋は感度を低く設定しているので、特に鳴動していないが、善場主任のは鳴動したらしい。
 もちろん、さっきリサが暴走した時のアレだ。
 私は知らないと答えておいた。

 愛原:「ただいまァ」
 高橋:「お帰りなさいっス!」
 愛原:「どうだ、今日の夕飯は?俺の言った通りに作れたか?」
 高橋:「はい。前回の湯豆腐にヒントをもらったんで、今回も鍋にしました」
 愛原:「その心は?」
 高橋:「はい。鶏の水炊きです」
 愛原:「おっ、そう来たか!」

 それならサッパリしているだろう。
 私は着替えて、食卓についた。
 リサも制服から部屋着に着替えている。
 シンプルにTシャツに短パンであり、寝る時もその恰好である。

 愛原:「明日、善場主任が、何か話があるらしい」
 高橋:「そうなんスか」
 愛原:「どうやら今、リサがどんな肉が食えるかを実験するらしい」
 リサ:「実験!?やだ!!」

 しまった!
 リサは実験アレルギーだった!
 第0形態だったのが、今ので第1形態に戻ってしまった。

 愛原:「ああ、違うんだ!けして、痛い実験とかじゃないから!」
 リサ:「!」

 リサは不貞腐れるように、目の前の食事をガツガツ食べ始めた。
 どうやら、食欲は落ちていないらしい。
 今のところ、普通の食事ができていれば、暴走の恐れはない。

 高橋:「でも、ムリして肉を食わないとダメなんスか?」
 愛原:「ダメらしいな。ある一定量食わないと、暴走の恐れがあるらしい」

 先ほど一瞬、暴走したのも、それが原因だろうか。
 鶏肉だけでは、抑えきれないのかもしれない。

[同日21:00.天候:曇 愛原のマンション]

 取りあえずリサは、鶏の水炊きを始めとする今回の夕食は完食した。
 それでも全盛期と比べれば、食事量は少ない。

 リサ:「本当はもっと重い物食べたい。だけど、食べたら吐いちゃう。どうしよう……」

 というのが、今のリサの悩み。
 そして、その極地が食人なのだろう。
 どこかのホラー漫画だったかな?
 鳥が食い荒らされているのを見た主人公達が、その後、食人する化け物に襲われるという描写があった。
 これはつまり、肉食を最初は鳥肉で我慢していたのが、それでも耐え切れなくなり、主人公達を見つけた化け物が、ついに人肉に手を出すという流れであったのだ。
 人間側から見ればただの恐怖の対象でしかないが、化け物側の視点で見ると、色々と物語が分かってくることもある。
 さて、どうしたものか……。

 高橋:「えっ、リサが暴走!?」

 リサが風呂に入っている時、私は高橋に事務所であったことを話した。

 高橋:「QTEに成功したんスね!でも、失敗してたら……」
 愛原:「食い殺されていただろうな」

 改めて思い返すと、背筋が寒くなるのだが。

 愛原:「どうしてもBOWの特性上、肉を食う必要があるらしい。それは、あの上野姉妹やその母親も同じだ」
 高橋:「らしいっスね」

 母親はともかく、娘達はまだ半分人間の血が入っているからいいようなものだ。
 母親の方は、人肉よりも血液の方に興味があるらしい。
 その為、藤野の施設では、献血パックが『食事』として与えられているのだとか。
 そういえばリサも、私の『足つぼマッサージ』と称して、私の足の裏から血液を摂取していた。

 愛原:「最終的には『1番』の通り、どの肉も食べれなくなり、人肉しか食べれなくなる体になるとのことだ」
 高橋:「マジっスか……」
 愛原:「しかし、うちのリサはまだ望みがある。他の肉が食べれるうちに、その肉で満足させるんだ。どうも、善場主任には考えがあるらしいから、それに期待するしかないだろう」
 高橋:「分かりました。差し当たり、明日の朝飯は何にします?」
 愛原:「まあ、普通でいいよ」
 高橋:「分かりました」

 善場主任の考えに期待しよう。

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