[5月13日19:00.天候:雨 東京都墨田区菊川 愛原学探偵事務所]
愛原:「……よし、できた」
クライアントへの報告書作成が終わり、私は帰る支度を始めた。
そういえば応接室で休んでいるリサは、あれから一度も出て来ない。
先に起こしておくことにした。
愛原:「リサ、リサ。起きてるか?」
応接室のドアをノックする。
しかし、中から応答は無い。
愛原:「開けるぞ?」
ドアを開ける。
リサ:「グー……グー……」
リサは3人掛けソファに横になり、あられもない姿で寝ていた。
あられもないというのは、上はブラウスのボタンを全部外し、下のスポブラ丸見えであり、下は下でスカートを脱いで、その下のスパッツ丸出しで寝ていた。
そんなに寝相は悪くないはずなのに、今はそれがウソみたいな悪い寝相だ。
で、第1形態に戻っている。
愛原:「リサ、そろそろ起きろよ」
私がリサの肩を揺さぶると……。
リサ:「!」
一瞬、鼾が止まった。
そして……。
リサ:「ガァァッ!!」
飛び掛かって襲って来た。
愛原:「うわっ!?」
組み付かれてしまった!
(ここでクイックタイムイベント、略称QTE発生。制限時間以内にコントローラの操作が上手くできないと、愛原は暴走したリサに食い殺されてゲームオーバー)
愛原:「やめろ、リサ!」
私はどうやら制限時間以内にQTEをクリアできたようだ。
リサを引き剥がし、突き飛ばした。
リサは後ろに倒れて、床に頭をゴツンとぶつけて動かなくなった。
と、第1形態から第0形態へと変化する。
リサ:「うぅう……」
そして、呻いて起き上がって来た。
リサ:「いたたた……」
愛原:「だ、大丈夫か?」
今度はどうやら、暴走していないらしい。
リサ:「大丈夫……。ああ、わたし、ソファから落ちたんだね」
本当は私が突き飛ばしたのだが、それは黙ってておこう。
愛原:「どうしたんだ、こんな格好で?」
リサ:「途中で暑くなったから脱いだの。スカートは、シワになるとアレだし……」
愛原:「そうか……。とにかく、そろそろ帰るから、早く着るんだ」
リサ:「分かった」
リサはブラウスのボタンを留め始めた。
その間私は応接室を出て、高橋に電話する。
愛原:「……ああ。今から帰る。それじゃ」
制服を着たリサが応接室から出てくると、私は事務所をあとにした。
[同日19:15.天候:雨 同地区内 愛原のマンション]
尚、帰り際、善場主任から電話があった。
何でも、BOW探査アプリのアラームが一瞬だけ鳴動したのだが、何か知らないかと。
私や高橋は感度を低く設定しているので、特に鳴動していないが、善場主任のは鳴動したらしい。
もちろん、さっきリサが暴走した時のアレだ。
私は知らないと答えておいた。
愛原:「ただいまァ」
高橋:「お帰りなさいっス!」
愛原:「どうだ、今日の夕飯は?俺の言った通りに作れたか?」
高橋:「はい。前回の湯豆腐にヒントをもらったんで、今回も鍋にしました」
愛原:「その心は?」
高橋:「はい。鶏の水炊きです」
愛原:「おっ、そう来たか!」
それならサッパリしているだろう。
私は着替えて、食卓についた。
リサも制服から部屋着に着替えている。
シンプルにTシャツに短パンであり、寝る時もその恰好である。
愛原:「明日、善場主任が、何か話があるらしい」
高橋:「そうなんスか」
愛原:「どうやら今、リサがどんな肉が食えるかを実験するらしい」
リサ:「実験!?やだ!!」
しまった!
リサは実験アレルギーだった!
第0形態だったのが、今ので第1形態に戻ってしまった。
愛原:「ああ、違うんだ!けして、痛い実験とかじゃないから!」
リサ:「!」
リサは不貞腐れるように、目の前の食事をガツガツ食べ始めた。
どうやら、食欲は落ちていないらしい。
今のところ、普通の食事ができていれば、暴走の恐れはない。
高橋:「でも、ムリして肉を食わないとダメなんスか?」
愛原:「ダメらしいな。ある一定量食わないと、暴走の恐れがあるらしい」
先ほど一瞬、暴走したのも、それが原因だろうか。
鶏肉だけでは、抑えきれないのかもしれない。
[同日21:00.天候:曇 愛原のマンション]
取りあえずリサは、鶏の水炊きを始めとする今回の夕食は完食した。
それでも全盛期と比べれば、食事量は少ない。
リサ:「本当はもっと重い物食べたい。だけど、食べたら吐いちゃう。どうしよう……」
というのが、今のリサの悩み。
そして、その極地が食人なのだろう。
どこかのホラー漫画だったかな?
鳥が食い荒らされているのを見た主人公達が、その後、食人する化け物に襲われるという描写があった。
これはつまり、肉食を最初は鳥肉で我慢していたのが、それでも耐え切れなくなり、主人公達を見つけた化け物が、ついに人肉に手を出すという流れであったのだ。
人間側から見ればただの恐怖の対象でしかないが、化け物側の視点で見ると、色々と物語が分かってくることもある。
さて、どうしたものか……。
高橋:「えっ、リサが暴走!?」
リサが風呂に入っている時、私は高橋に事務所であったことを話した。
高橋:「QTEに成功したんスね!でも、失敗してたら……」
愛原:「食い殺されていただろうな」
改めて思い返すと、背筋が寒くなるのだが。
愛原:「どうしてもBOWの特性上、肉を食う必要があるらしい。それは、あの上野姉妹やその母親も同じだ」
高橋:「らしいっスね」
母親はともかく、娘達はまだ半分人間の血が入っているからいいようなものだ。
母親の方は、人肉よりも血液の方に興味があるらしい。
その為、藤野の施設では、献血パックが『食事』として与えられているのだとか。
そういえばリサも、私の『足つぼマッサージ』と称して、私の足の裏から血液を摂取していた。
愛原:「最終的には『1番』の通り、どの肉も食べれなくなり、人肉しか食べれなくなる体になるとのことだ」
高橋:「マジっスか……」
愛原:「しかし、うちのリサはまだ望みがある。他の肉が食べれるうちに、その肉で満足させるんだ。どうも、善場主任には考えがあるらしいから、それに期待するしかないだろう」
高橋:「分かりました。差し当たり、明日の朝飯は何にします?」
愛原:「まあ、普通でいいよ」
高橋:「分かりました」
善場主任の考えに期待しよう。
愛原:「……よし、できた」
クライアントへの報告書作成が終わり、私は帰る支度を始めた。
そういえば応接室で休んでいるリサは、あれから一度も出て来ない。
先に起こしておくことにした。
愛原:「リサ、リサ。起きてるか?」
応接室のドアをノックする。
しかし、中から応答は無い。
愛原:「開けるぞ?」
ドアを開ける。
リサ:「グー……グー……」
リサは3人掛けソファに横になり、あられもない姿で寝ていた。
あられもないというのは、上はブラウスのボタンを全部外し、下のスポブラ丸見えであり、下は下でスカートを脱いで、その下のスパッツ丸出しで寝ていた。
そんなに寝相は悪くないはずなのに、今はそれがウソみたいな悪い寝相だ。
で、第1形態に戻っている。
愛原:「リサ、そろそろ起きろよ」
私がリサの肩を揺さぶると……。
リサ:「!」
一瞬、鼾が止まった。
そして……。
リサ:「ガァァッ!!」
飛び掛かって襲って来た。
愛原:「うわっ!?」
組み付かれてしまった!
(ここでクイックタイムイベント、略称QTE発生。制限時間以内にコントローラの操作が上手くできないと、愛原は暴走したリサに食い殺されてゲームオーバー)
愛原:「やめろ、リサ!」
私はどうやら制限時間以内にQTEをクリアできたようだ。
リサを引き剥がし、突き飛ばした。
リサは後ろに倒れて、床に頭をゴツンとぶつけて動かなくなった。
と、第1形態から第0形態へと変化する。
リサ:「うぅう……」
そして、呻いて起き上がって来た。
リサ:「いたたた……」
愛原:「だ、大丈夫か?」
今度はどうやら、暴走していないらしい。
リサ:「大丈夫……。ああ、わたし、ソファから落ちたんだね」
本当は私が突き飛ばしたのだが、それは黙ってておこう。
愛原:「どうしたんだ、こんな格好で?」
リサ:「途中で暑くなったから脱いだの。スカートは、シワになるとアレだし……」
愛原:「そうか……。とにかく、そろそろ帰るから、早く着るんだ」
リサ:「分かった」
リサはブラウスのボタンを留め始めた。
その間私は応接室を出て、高橋に電話する。
愛原:「……ああ。今から帰る。それじゃ」
制服を着たリサが応接室から出てくると、私は事務所をあとにした。
[同日19:15.天候:雨 同地区内 愛原のマンション]
尚、帰り際、善場主任から電話があった。
何でも、BOW探査アプリのアラームが一瞬だけ鳴動したのだが、何か知らないかと。
私や高橋は感度を低く設定しているので、特に鳴動していないが、善場主任のは鳴動したらしい。
もちろん、さっきリサが暴走した時のアレだ。
私は知らないと答えておいた。
愛原:「ただいまァ」
高橋:「お帰りなさいっス!」
愛原:「どうだ、今日の夕飯は?俺の言った通りに作れたか?」
高橋:「はい。前回の湯豆腐にヒントをもらったんで、今回も鍋にしました」
愛原:「その心は?」
高橋:「はい。鶏の水炊きです」
愛原:「おっ、そう来たか!」
それならサッパリしているだろう。
私は着替えて、食卓についた。
リサも制服から部屋着に着替えている。
シンプルにTシャツに短パンであり、寝る時もその恰好である。
愛原:「明日、善場主任が、何か話があるらしい」
高橋:「そうなんスか」
愛原:「どうやら今、リサがどんな肉が食えるかを実験するらしい」
リサ:「実験!?やだ!!」
しまった!
リサは実験アレルギーだった!
第0形態だったのが、今ので第1形態に戻ってしまった。
愛原:「ああ、違うんだ!けして、痛い実験とかじゃないから!」
リサ:「!」
リサは不貞腐れるように、目の前の食事をガツガツ食べ始めた。
どうやら、食欲は落ちていないらしい。
今のところ、普通の食事ができていれば、暴走の恐れはない。
高橋:「でも、ムリして肉を食わないとダメなんスか?」
愛原:「ダメらしいな。ある一定量食わないと、暴走の恐れがあるらしい」
先ほど一瞬、暴走したのも、それが原因だろうか。
鶏肉だけでは、抑えきれないのかもしれない。
[同日21:00.天候:曇 愛原のマンション]
取りあえずリサは、鶏の水炊きを始めとする今回の夕食は完食した。
それでも全盛期と比べれば、食事量は少ない。
リサ:「本当はもっと重い物食べたい。だけど、食べたら吐いちゃう。どうしよう……」
というのが、今のリサの悩み。
そして、その極地が食人なのだろう。
どこかのホラー漫画だったかな?
鳥が食い荒らされているのを見た主人公達が、その後、食人する化け物に襲われるという描写があった。
これはつまり、肉食を最初は鳥肉で我慢していたのが、それでも耐え切れなくなり、主人公達を見つけた化け物が、ついに人肉に手を出すという流れであったのだ。
人間側から見ればただの恐怖の対象でしかないが、化け物側の視点で見ると、色々と物語が分かってくることもある。
さて、どうしたものか……。
高橋:「えっ、リサが暴走!?」
リサが風呂に入っている時、私は高橋に事務所であったことを話した。
高橋:「QTEに成功したんスね!でも、失敗してたら……」
愛原:「食い殺されていただろうな」
改めて思い返すと、背筋が寒くなるのだが。
愛原:「どうしてもBOWの特性上、肉を食う必要があるらしい。それは、あの上野姉妹やその母親も同じだ」
高橋:「らしいっスね」
母親はともかく、娘達はまだ半分人間の血が入っているからいいようなものだ。
母親の方は、人肉よりも血液の方に興味があるらしい。
その為、藤野の施設では、献血パックが『食事』として与えられているのだとか。
そういえばリサも、私の『足つぼマッサージ』と称して、私の足の裏から血液を摂取していた。
愛原:「最終的には『1番』の通り、どの肉も食べれなくなり、人肉しか食べれなくなる体になるとのことだ」
高橋:「マジっスか……」
愛原:「しかし、うちのリサはまだ望みがある。他の肉が食べれるうちに、その肉で満足させるんだ。どうも、善場主任には考えがあるらしいから、それに期待するしかないだろう」
高橋:「分かりました。差し当たり、明日の朝飯は何にします?」
愛原:「まあ、普通でいいよ」
高橋:「分かりました」
善場主任の考えに期待しよう。
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