[6月18日12:00.天候:曇 東京都台東区上野 東京中央学園上野高校付近のコインパーキング]
コインパーキングに止められた1台のミニバン。
その運転席の外側には高橋がタバコを燻らせており、助手席の後ろにはリサが座っていた。
リサは学校が休みなので、私服姿である。
黒いTシャツには、血文字のような字体で、『☣Biohazard☣』と書かれていた。
下はデニムのショートパンツ。
リサ:「あっ、先生帰ってきた」
リサは車内では第1形態に戻っていた。
リアシートの窓はスモークガラスになっているので、外からは見えない。
高橋:「あっ、先生。お帰りなさい」
高橋は煙草を消すと、携帯灰皿に吸い殻を入れた。
別にマナーを意識しているのではなく、『足がつかない』ようにする為だ。
かつてまだ高橋が半グレだった頃、ポイ捨てしたタバコを抗争相手の半グレに拾われ、そのグループが起こした事件現場に捨てられたことがある。
煙草の吸い殻にはその喫煙者のDNAが残っており、後で捜査にやってきた警察が高橋のタバコの吸い殻を回収し、高橋が犯人だと疑ったことがあった。
それ以来、それに懲りた高橋は煙草をポイ捨てするのはやめている。
愛原からは、「禁煙したら?」と、言われているのだが……。
愛原:「おー、ただいま」
高橋:「お疲れ様です」
愛原:「うん」
愛原は助手席に乗り込んだ。
リサ:「先生、お帰り」
愛原:「ああ」
リサ:「新しい制服、注文したよ」
愛原:「そうか」
車で愛原を学園前に降ろした後、リサは高橋と制服の販売店に向かった。
リサのサイズについては店のデータに残っており、そのサイズ通りに新しい夏服を注文すれば良かった。
尚、費用についてはデイライトが持ってくれるとのことである。
夏服のブラウスについては、ブラウスに校章等の入ったワッペンが縫い付けられているものである。
高橋:「飯に行きますか、先生?」
愛原:「そうだな。善場主任とは、午後に会うことにしよう」
もう昼の時間に入っている為、愛原はLINEかメールで善場に連絡したようだ。
高橋:「何にします?」
愛原:「ラーメンでも食うか。リサは?」
リサ:「ラーメンでいい」
高橋:「分かりました。じゃあ、そこに寄ります」
愛原:「頼んだぞ」
[同日13:30.天候:曇 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]
新橋まで車で移動する。
国道4号線の昭和通りと国道15号線の銀座中央通りを通って行くと、新橋まで行ける。
地下鉄だと、銀座線がその下を走っているだろう。
新橋駅近くの駐車場に車を止めて、そこから近くのラーメン屋に向かう。
そこでリサは、大盛りのチャーシュー麺を注文して平らげた。
愛原:「味はどうだ?」
リサ:「美味しかった!」
ということは、味覚は人間のままだということか。
その足で、今度はデイライトの事務所に向かう。
高橋:「俺はニンニク入りが良かったなぁ……」
愛原:「これから人に会うのに、それは臭うからダメだ」
高橋:「はぁーい……」
事務所に入ると、善場が出迎えた。
また、事務所には土曜日にも関わらず、他にも何人か職員が出勤しているようだ。
善場:「お疲れ様です。どうぞ、こちらへ」
と、善場はリサ達を応接会議室へ案内した。
善場:「まずは保護者説明会、お疲れ様でした」
善場が茶を持って来て言った。
愛原:「ああ、すいません。まあ、何とか終わりました」
善場:「それで、騒動の真相は何だったのですか?」
愛原:「元々、自殺志願のケがあったようです。進路がなかなか決まらない悩み、本人にとっては押し付けられたとされる新聞部部長職への重圧。それが積もりに積もって、あのような結果を齎したようです。『7人目が見つからなかったことで、他の語り部や他の新聞部員に責められる。顧問の教師を通じて、評価が落ちるかもしれない』という悩みです」
善場:「それで、飛び下りたと?」
愛原:「そのようです。ですが、地面に激突する直前、布団屋が運んでいた布団の山に落ちましてね。ちょうどあの時間、布団屋が保健室や仮眠室で使用されている布団の回収に来ていたみたいで。それに落ちたはいいんですが、それがトランポリンのように弾かれまして、運悪くそこが新聞部の部室の前だったわけです。今度は新聞部の窓ガラスをブチ破って飛び込んで来た、というわけですよ」
リサ:「ガラスは粉々で、わたしの制服も血だらけになった!」
善場:「なるほど。状況はよく分かりました。リサはその血だらけの生徒を見て、涎を垂らしましたか?」
リサ:「う、うん。ちょっとだけ……」
他のBOW(生物兵器)と違い、人間の食事も難無く受け付けるリサも、それ以上に人間の血肉に対する欲求は大きい。
それを普段の食事で誤魔化しているだけに過ぎないのだが、人間の体液は臭いが強い。
ましてやBOWとなったリサは、嗅覚も鋭くなっているので、尚更臭いの強い人間の体液(特に血液)には、すぐに食人衝動が発動してしまうのだ。
リサ:「鬼斬り……栗原先輩が隣にいたおかげで助かった」
愛原:「栗原さんも軽傷だったもんな」
リサの隣の席にいたので、割れた窓ガラスの破片が刺さってしまったのだ。
リサ:「うん」
一応、病院に運ばれたが、入院の必要は無く、ケガの治療を受けただけで帰宅したとのこと。
リサ:「別の意味で伝説回になっちゃったな。2年生の男子に、昔うちの学校で、屋上から飛び下り自殺があって以来、その幽霊が出るなんて話もあったけど、それとリンクしてるみたいで……」
善場:「それで、その自殺志願の生徒は?」
愛原:「病院で搬送されましたが、未だに意識不明の重体です。全身にガラスの破片が刺さったもので、出血多量で……」
リサ:「はぁ……」
リサは私の言葉に反応し、少し目を見開いた。
善場:「話を伺った限りでは、事件性は無さそうですね」
愛原:「警察もそのように見ています。あとは自殺の背景について、調べることでしょう」
善場:「分かりました。ありがとうございます」
愛原:「それより、ようやく日本人乗客がロシアから帰って来れるようですな?」
善場:「そうなんです。『全員のスパイ容疑が晴れたので、日本側に引き渡す』とのことです」
テロ組織にハイジャックされた日本の旅客機が、ロシアに着陸した。
ハイジャック犯達は現地の治安当局に拘束されたが、ロシア当局は『日本人乗客の中にスパイがいる!!』という因縁をつけて、『その容疑が晴れるまで全員拘束する!』という暴挙に出た。
これは、日本のロシアに対する経済制裁に対する報復だとされている。
その中に、斉藤元社長もいたのだ。
善場:「まずいことに、斉藤容疑者は帰国者リストの中には入っておりません」
愛原:「は!?」
善場:「見事に、ロシアに国外逃亡したということです」
愛原:「どうやって!?」
善場:「表向きは、『斉藤元社長がスパイだと判明したので拘束する!日本側に引き渡すつもりはない!』ということにしておいて、裏では逃亡の手筈にしていたということでしょうね」
愛原:「じゃ、じゃあ、あのハイジャック犯達も?」
善場:「まだ確たる証拠はありませんが、斉藤容疑者の仲間か、あるいは金で雇われたかしたのかもしれません」
愛原:「あの社長も、とんだ食わせ物だったか……」
ロシアに逃げられては、もう日本は手も足も出まい。
今頃、シベリア鉄道にでも乗っているのだろうか?
最終的には、カルロス・ゴーンみたいにレバノンに逃げるのだろうか?
コインパーキングに止められた1台のミニバン。
その運転席の外側には高橋がタバコを燻らせており、助手席の後ろにはリサが座っていた。
リサは学校が休みなので、私服姿である。
黒いTシャツには、血文字のような字体で、『☣Biohazard☣』と書かれていた。
下はデニムのショートパンツ。
リサ:「あっ、先生帰ってきた」
リサは車内では第1形態に戻っていた。
リアシートの窓はスモークガラスになっているので、外からは見えない。
高橋:「あっ、先生。お帰りなさい」
高橋は煙草を消すと、携帯灰皿に吸い殻を入れた。
別にマナーを意識しているのではなく、『足がつかない』ようにする為だ。
かつてまだ高橋が半グレだった頃、ポイ捨てしたタバコを抗争相手の半グレに拾われ、そのグループが起こした事件現場に捨てられたことがある。
煙草の吸い殻にはその喫煙者のDNAが残っており、後で捜査にやってきた警察が高橋のタバコの吸い殻を回収し、高橋が犯人だと疑ったことがあった。
それ以来、それに懲りた高橋は煙草をポイ捨てするのはやめている。
愛原からは、「禁煙したら?」と、言われているのだが……。
愛原:「おー、ただいま」
高橋:「お疲れ様です」
愛原:「うん」
愛原は助手席に乗り込んだ。
リサ:「先生、お帰り」
愛原:「ああ」
リサ:「新しい制服、注文したよ」
愛原:「そうか」
車で愛原を学園前に降ろした後、リサは高橋と制服の販売店に向かった。
リサのサイズについては店のデータに残っており、そのサイズ通りに新しい夏服を注文すれば良かった。
尚、費用についてはデイライトが持ってくれるとのことである。
夏服のブラウスについては、ブラウスに校章等の入ったワッペンが縫い付けられているものである。
高橋:「飯に行きますか、先生?」
愛原:「そうだな。善場主任とは、午後に会うことにしよう」
もう昼の時間に入っている為、愛原はLINEかメールで善場に連絡したようだ。
高橋:「何にします?」
愛原:「ラーメンでも食うか。リサは?」
リサ:「ラーメンでいい」
高橋:「分かりました。じゃあ、そこに寄ります」
愛原:「頼んだぞ」
[同日13:30.天候:曇 東京都港区新橋 NPO法人デイライト東京事務所]
新橋まで車で移動する。
国道4号線の昭和通りと国道15号線の銀座中央通りを通って行くと、新橋まで行ける。
地下鉄だと、銀座線がその下を走っているだろう。
新橋駅近くの駐車場に車を止めて、そこから近くのラーメン屋に向かう。
そこでリサは、大盛りのチャーシュー麺を注文して平らげた。
愛原:「味はどうだ?」
リサ:「美味しかった!」
ということは、味覚は人間のままだということか。
その足で、今度はデイライトの事務所に向かう。
高橋:「俺はニンニク入りが良かったなぁ……」
愛原:「これから人に会うのに、それは臭うからダメだ」
高橋:「はぁーい……」
事務所に入ると、善場が出迎えた。
また、事務所には土曜日にも関わらず、他にも何人か職員が出勤しているようだ。
善場:「お疲れ様です。どうぞ、こちらへ」
と、善場はリサ達を応接会議室へ案内した。
善場:「まずは保護者説明会、お疲れ様でした」
善場が茶を持って来て言った。
愛原:「ああ、すいません。まあ、何とか終わりました」
善場:「それで、騒動の真相は何だったのですか?」
愛原:「元々、自殺志願のケがあったようです。進路がなかなか決まらない悩み、本人にとっては押し付けられたとされる新聞部部長職への重圧。それが積もりに積もって、あのような結果を齎したようです。『7人目が見つからなかったことで、他の語り部や他の新聞部員に責められる。顧問の教師を通じて、評価が落ちるかもしれない』という悩みです」
善場:「それで、飛び下りたと?」
愛原:「そのようです。ですが、地面に激突する直前、布団屋が運んでいた布団の山に落ちましてね。ちょうどあの時間、布団屋が保健室や仮眠室で使用されている布団の回収に来ていたみたいで。それに落ちたはいいんですが、それがトランポリンのように弾かれまして、運悪くそこが新聞部の部室の前だったわけです。今度は新聞部の窓ガラスをブチ破って飛び込んで来た、というわけですよ」
リサ:「ガラスは粉々で、わたしの制服も血だらけになった!」
善場:「なるほど。状況はよく分かりました。リサはその血だらけの生徒を見て、涎を垂らしましたか?」
リサ:「う、うん。ちょっとだけ……」
他のBOW(生物兵器)と違い、人間の食事も難無く受け付けるリサも、それ以上に人間の血肉に対する欲求は大きい。
それを普段の食事で誤魔化しているだけに過ぎないのだが、人間の体液は臭いが強い。
ましてやBOWとなったリサは、嗅覚も鋭くなっているので、尚更臭いの強い人間の体液(特に血液)には、すぐに食人衝動が発動してしまうのだ。
リサ:「鬼斬り……栗原先輩が隣にいたおかげで助かった」
愛原:「栗原さんも軽傷だったもんな」
リサの隣の席にいたので、割れた窓ガラスの破片が刺さってしまったのだ。
リサ:「うん」
一応、病院に運ばれたが、入院の必要は無く、ケガの治療を受けただけで帰宅したとのこと。
リサ:「別の意味で伝説回になっちゃったな。2年生の男子に、昔うちの学校で、屋上から飛び下り自殺があって以来、その幽霊が出るなんて話もあったけど、それとリンクしてるみたいで……」
善場:「それで、その自殺志願の生徒は?」
愛原:「病院で搬送されましたが、未だに意識不明の重体です。全身にガラスの破片が刺さったもので、出血多量で……」
リサ:「はぁ……」
リサは私の言葉に反応し、少し目を見開いた。
善場:「話を伺った限りでは、事件性は無さそうですね」
愛原:「警察もそのように見ています。あとは自殺の背景について、調べることでしょう」
善場:「分かりました。ありがとうございます」
愛原:「それより、ようやく日本人乗客がロシアから帰って来れるようですな?」
善場:「そうなんです。『全員のスパイ容疑が晴れたので、日本側に引き渡す』とのことです」
テロ組織にハイジャックされた日本の旅客機が、ロシアに着陸した。
ハイジャック犯達は現地の治安当局に拘束されたが、ロシア当局は『日本人乗客の中にスパイがいる!!』という因縁をつけて、『その容疑が晴れるまで全員拘束する!』という暴挙に出た。
これは、日本のロシアに対する経済制裁に対する報復だとされている。
その中に、斉藤元社長もいたのだ。
善場:「まずいことに、斉藤容疑者は帰国者リストの中には入っておりません」
愛原:「は!?」
善場:「見事に、ロシアに国外逃亡したということです」
愛原:「どうやって!?」
善場:「表向きは、『斉藤元社長がスパイだと判明したので拘束する!日本側に引き渡すつもりはない!』ということにしておいて、裏では逃亡の手筈にしていたということでしょうね」
愛原:「じゃ、じゃあ、あのハイジャック犯達も?」
善場:「まだ確たる証拠はありませんが、斉藤容疑者の仲間か、あるいは金で雇われたかしたのかもしれません」
愛原:「あの社長も、とんだ食わせ物だったか……」
ロシアに逃げられては、もう日本は手も足も出まい。
今頃、シベリア鉄道にでも乗っているのだろうか?
最終的には、カルロス・ゴーンみたいにレバノンに逃げるのだろうか?
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