報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「愛原の快気祝い」

2021-02-27 21:12:44 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[2月24日18:00.天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私の名前は愛原学。
 都内で小さな探偵事務所を経営している。
 リサと善場主任の話が終わり、私達は事務所を閉めて家に帰った。

 愛原:「何だ?善場主任に怒られたのか?」
 リサ:「うん……ちょっと……ね」
 愛原:「俺には何も言って来なかったが、まあ善場主任も間違ったことは言わないから、言われたことは守っておけな?」
 リサ:「うん」

 マンションに帰る。
 そこでは先に帰った高橋が夕食の準備をしていた。

 高橋:「あっ、お帰りなさいっス」
 愛原:「おー、ただいま」
 高橋:「もうすぐ夕飯できるんで、もうちょっと待ってください」
 愛原:「ああ。何だか今日は、肉の香ばしい匂いがするな」
 高橋:「今夜は先生の快気祝いです」
 愛原:「はは、そうか。それはありがたい」

 私は高橋に笑い掛け、着替えをする為に自分の部屋に入った。
 リサはトイレに行ったようだ。
 スーツから私服に着替える。
 それからダイニングに行った。

 愛原:「お、今日はステーキか」
 高橋:「点滴と病院食だけじゃ、味気無かったと思いまして」
 愛原:「まあ、そうだな。さすがに禁酒だったし」
 高橋:「もち、ビールもあります」
 愛原:「そうかそうか。……ん、リサはどうした?」
 高橋:「さっきトイレから出て来て、自分の部屋に行きましたけど?」

 そんなことを話していると、リサが部屋から出て来た。

 リサ:「お待たせ」
 高橋:「先生がお待ちだぞ。さ、先生、どうぞビールを」
 愛原:「ああ。ありがとう。高橋、オマエも飲め」
 高橋:「サーセン!」

 私も高橋にビールを注いでやった。

 愛原:「リサはウーロン茶な」
 リサ:「私もビール飲みたい」
 愛原:「あと5年待て」

 てか、BOWに酒なんて飲ませてもいいのだろうか?

 高橋:「それじゃ先生の御病気が全快されたことを祝って、カンパーイ!」
 愛原:「乾杯」
 リサ:「カンパーイ。……てか、ノンアルコールビールならいいんじゃない?」
 愛原:「そういう問題じゃない」
 高橋:「そうだ。そういう問題じゃねーぞ」
 愛原:「このステーキ、美味い」
 高橋:「ライフで安く買いました」
 リサ:「うん。やっぱりお肉は焼いた方が美味しい。けど、生っぽいのもいい」

 だからリサのステーキはレアなんだな。
 私のはミディアムなんだが。

 愛原:「そうだぞ。だから人間を生で食い殺すのは厳禁だ。分かったな?」
 リサ:「はーい。……ん?焼いて食べる分にはいい?」
 愛原:「なワケ無い!なワケ無い!」

 私は首を思いっ切り横に振って、テレビを点けた。
 この時間帯は、どこのテレビ局もニュース番組をやっている。

〔「……昨日未明、北関東で起きました連続猟奇殺人事件について、警察は……」〕

 愛原:「ん?」
 高橋:「ああ。関東近郊で、人が食い殺されるっていう事件が何件かあったらしいっス。表向きは熊か何かってことになってますけど、こいつの見立てじゃ、犯人は『1番』っぽいっスよ」
 リサ:「『1番』は今でも人食いをしている。もう私とは違う存在になっているのかもしれない」
 愛原:「俺が入院している間に、栗原さんがいつの間にか倒してくれていたなんて展開だったら面白かったんだが、そんなことは無かったか」
 高橋:「あの片足JKも、色々と嗅ぎ回っているみたいなんですけど、いつも先越されて逃げられるって言ってました」
 リサ:「『1番』は卑怯で臆病。鬼斬りの人が追い掛けると、応戦しないで逃げてしまう」
 愛原:「ということは、一応それでもまだ栗原さんの方が強いってことかな?」
 高橋:「強いくせにビビりってヤツもいますから、100パーそうとは言えないと思いますよ」
 愛原:「なるほど」
 高橋:「まあ、いざとなったら俺がロケランぶち込んでやりますよ」
 愛原:「どこから調達するんだよ?アキバに都合良く売ってないだろ」
 高橋:「ハハハ……」
 リサ:「お代わり」

 リサは丼飯を平らげると、炊飯器の所に行った。
 因みにリサがこの家に来てから、炊飯器を大きめの物に買い替えた。
 あれだけペロリと食べる割には、リサはそんなに体は大きくならない。
 何でも形態変化の際に多大なエネルギーを使うので、カロリーはそういう所で消費されるのだそうだ。
 それに、善場主任も中学生まではちんまりした体型だったが、高校3年間のうちに一気に成長したとのこと。
 人間の肉体は25歳まで成長期であり、30歳までは安定期。
 そして30代に突入してから老化していく。
 善場主任は20歳そこいらの時に日本アンブレラに捕まり、リサ・トレヴァーに改造されたせいで、そこで体の成長が止まってしまったそうだ。
 別に今の善場主任の体型は、30歳前後の女性としては平均的であると思われる。
 もしリサ・トレヴァーにならなかったら、平均超えであったというのだろうか。
 リサの高校の制服はもう買い揃えたが、リサの成長を踏まえて少しサイズの大きい物にした。
 ダブルのブレザーなのは、成長期に合わせているからだろうか。
 セーラー服よりはゆったりしているが。

 高橋:「あ、先生。聞きました?善場の姉ちゃんから……」
 愛原:「聞いた。あれだろ?警察と善場主任が裏で所属している政府機関が、合同で学校法人東京中央学園にガサ入れするって話だろ?」
 高橋:「はい。何でも、3月2日に踏み込むらしいッス」
 愛原:「そんなことまで教えてくれたか。これは極秘だぞ?」
 高橋:「うっス。でも、何でそんな中途半端な日なんスかね?」
 愛原:「3月1日は高等部の卒業式だ。学校法人東京中央学園の事務所は高等部の校舎に程近い所にある。高等部になるべく影響が出ないように、卒業式の後にやるってことだろ。ヘタすりゃ学園関係者に逮捕者が出るってことだから」
 高橋:「ああ、なるほど」

 その時、リサが不安そうな顔をしていたので、私は頭を撫でてやりながら言った。

 愛原:「ああ、大丈夫。中等部の卒業式は3月半ばだろ?中学校は事件とは直接関係無いから、そっちには影響は無いだろうさ」
 リサ:「うん……」

 その夜、リサが風呂に入っている時に、善場主任が話していたことを高橋は教えてくれた。
 NPO法人デイライトは、早くから東京中央学園にいた白井伝三郎に目を付けていたこと。
 日本アンブレラは日本国内における学校教育振興の協力の一環として、研究員を各地の学校に派遣していた。
 善場主任だって、そのうちの1人の大学の客員教授に捕まったのだから、他の研究員も怪しいとなるだろう。
 その中でも白井は最も怪しい人物の1人とされた。
 しかし、東京中央学園に入り込んで調査する隙が無い。
 そこへ上手い具合にうちのリサを使うことができた。
 学校に興味を持ったリサを東京中央学園に入れて関係を作ることで、捜査の足掛かりにしたかったのだと。
 リサは上手いこと捜査のダシにはされてしまったが、リサとしても期待した通りの学校生活が送れたのだからウィンウィンといったところか。

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