[2月3日15:00.天候:晴 新千歳空港・ANA到着口前バス停]
1台の空港連絡バスがバス停に到着する。
運転手:「お待たせしました。15時ちょうど発、札幌都心直行便です」
やってきたバスはベタな空港連絡バスの法則通りのものだった。
高速バス仕様だが、4列シートのトイレ無しである。
運転席の横に運賃箱はあるが、後払いであり、乗車券を既に購入している乗客は降りる時にその乗車券を運賃箱に放り込むだけで良い。
空港のバスターミナルなだけに、乗り場には係員がいる為、エミリーを入れていた大型のキャリーバッグは係員に荷物室に積んでもらう。
鷲田:「直行便に乗れて良かったな。少しでも早く着いて、ホテル側の事情を聞きたい」
村中:「そうですね」
敷島達はバスに乗り込んだ。
直行便とは言うが、南千歳駅前までは何ヶ所か停車するらしい。
バスは時間通りに出発すると、今度は同じターミナルの並びにあるJAL到着口からも乗客を乗せた。
その次は国際線ターミナルに止まるという。
国際線から先に出発する羽田空港のバスとは順番が逆だ。
その途中で、先ほどの送迎バスや観光バスが発着する場所を通過する。
また北国観光バスが、次の団体客を乗せている所が見えた。
その隣には、どこかのホテルの送迎バス。
それも、ホテルの自社便によるマイクロバスとかではなく、どこかのバス会社に委託しているのであろう。
ホテルの名前が大きく書かれており、バス会社は小さく書かれていたのでどこの会社だかは判別できなかったが、少なくとも緑ナンバーであったことから、そうだとだいたい分かる。
敷島:「ん……!?」
敷島の頭で何かが繋がったような気がした。
鷲田:「どうしたね?また何か、ロクでもないこと思いついたか?」
敷島達のすぐ前に座る鷲田が振り向いてニヤッと笑った。
敷島:「いや、そんなことはないですよ。ただ、アリス達は素直に北国観光バスに乗ったのかなぁ……って」
村中:「何が言いたいんだい?」
敷島:「今さっき、送迎バスの乗り場の所にホテルの送迎バスが止まっていたんです。もしかしたらアリス達、そっちに乗ったのかもしれません」
鷲田:「しかしそうなると、行程表とは違う内容になってしまうことになるが?」
敷島:「ええ、そうです。多分、偽ツアーの方が先に新千歳空港に着いたことで、易々と北国観光バスに乗れたのでしょう。そして、その後に来た本物の科学館のツアーの方は、偽のバスに乗ってしまい、全く別の所に連れて行かれたのかもしれません」
村中:「なるほど。ホテルの方で送迎バスのサービスをしていれば、それに成り済ましてミスリードさせることが可能ってわけか」
鷲田:「だがしかし、そんなことが本当に可能なのかね?」
エミリー:「可能だと思います」
と、エミリー。
エミリー:「偽ツアーの方は成田空港からの出発でした。実際に同じANA便、2153便という便がアリス博士達より40分も早く到着できます」
鷲田:「40分?そんなに早く着いたら、逆に怪しいのではないかね?」
敷島:「いや、そんなことはないでしょう。大抵は客をすぐに迎えに行けるよう、少し早めに来て待つのがベタな法則ですから。偽ツアー客には、適当に説明しておけばいいでしょう。そして本物のDCJツアーが来る前にさっさと合流してしまえば、本物が来る前に出発できるというわけです」
鷲田:「それで?本物のDCJさんを輸送した偽バスは、誰がどうやって用意したというのかね?」
敷島:「バス会社の係員が偽ツアーを誘導していったのを見計らって、偽の係員を用意しておくんです。そしてアリス達が到着したら、偽バスの方へ誘導する」
村中:「あり得る話だね。だけど、偽バスなんか、なかなか用意できるものじゃないな。白バス営業防止の為、実は大型バスのレンタルや購入にはそれなりの審査があるんだ。わざわざそれを本州から持ってきたとは考えにくいから、この道内で調達しただろうね」
鷲田:「可能性はあるな」
敷島:「そうなると、ホテルまで聞きに行く必要は無いんじゃ?結局、偽ツアーの人達しかチェックインしていないわけでしょ?」
鷲田:「その主催者を挙げて尋問するというルートもあるからな」
敷島:「いや、どうせ北海道にはいないでしょ?」
鷲田:「本州には部下達がいるからな。結構頼りになるぞ」
敷島:「そうですか」
[同日16:20.天候:曇 北海道札幌市 東京REIホテル]
敷島:「まだ冬だから当然ですけど、北海道は暗くなるのが早いですね」
鷲田:「札幌はまだ東京よりちょっと早い程度だが、道東に行くともっと日の入りが早いそうだ」
村中:「逆に沖縄は17時になってもまだ明るいんだ。日本って意外と広いよ」
敷島:「そうですねぇ……。ここじゃ天気が悪くなったら雪が降るのが当たり前ですが、沖縄は普通に雨ですもんね」
鷲田:「そういうことだ」
敷島達はホテルのロビーにいる。
支配人:「お待たせ致しました。私が当ホテルの支配人です」
鷲田:「こりゃお忙しいところ、申し訳ありませんな。私達は東京から参りました警視庁の鷲田と申します」
村中:「同じく村中と申します。こちらが、捜査協力依頼書です」
支配人:「それで、ご質問の内容というのは?」
鷲田達は偽ツアーのことについて聞いた。
そこで分かったことがあった。
やはり、チェックインしたのは偽のツアーだった。
但し、乗り付けたバスは本物の北国観光バス。
敷島は小山副館長から送られた岩下副館長や西山館長の写真を支配人に見せた。
すると、支配人はおろか、実際にDCJ観光の偽ツアーをアテンドしたホテルマンは見覚えが無いという。
そして敷島は、アリスやシンディの写真も見せた。
支配人:「違いますね。確かにあの団体客の皆様の中に、1人だけ白人女性がいらっしゃいましたが、このような方ではありませんでした」
敷島:「そうですか……」
村中:「警視、これではっきりしましたね。科学館の人達はこのホテルには泊まっていない、新千歳空港から別のルートで誘拐されたんでしょう」
鷲田:「そういうことになるな。幹事の『岩下』という人物について聞きたいのだが、写真とかは無いかね?」
支配人:「申し訳ありませんが……」
鷲田:「では、防犯カメラの映像を見せて頂きたい。令状ではなく、依頼書で申し訳無いが、よろしいですかな?」
支配人:「どちらのカメラをご覧になりますか?」
鷲田:「まずは偽ツアーの全体像を見たいので、このロビーを映しているカメラと直接フロントを映しているものを見せて頂きたい」
支配人:「かしこまりました」
敷島:「あ、あの、支配人さん」
支配人:「何でございますか?」
敷島:「このホテル、送迎バスみたいなものは走らせてますか?それも、大型バスです」
支配人:「はい。大型バスで運行させて頂いておりますが……」
敷島:「おおっ!当たった!」
鷲田:「それは新千歳空港から出ているのかな?」
支配人:「いいえ。札幌駅前からのみになります」
敷島:「ええっ!?……それでも何か特別に走らせたりとかは……?」
支配人:「申し訳ございませんが、今まで1度もございません。お客様方の方で観光バスを手配して頂いて、それを……というのはよくありますが……」
敷島:「違ったかぁ……」
敷島はガッカリした。
だが、村中はこんな質問をした。
村中:「ですが支配人、実際にこのDCJ観光さんと同じタイミングでこのホテルにチェックインするはずの団体客が、新千歳空港からこのホテルへの直行便と称したバスに乗り込んでしまったのですよ。恐らく、何の疑いも無く。何か、心当たりはありますかね?」
支配人:「そう、申されましても……」
支配人は困ったような顔をした。
ホテルマン:「あの、支配人。ちょっとよろしいでしょうか?」
支配人:「少々お待ちください」
鷲田:「ああ」
支配人は席を立った。
ホテルマンが何やら、敷島達の方を見ながら耳打ちしている。
そして戻ってきた支配人が、衝撃的なことを言った。
その内容とは?
1台の空港連絡バスがバス停に到着する。
運転手:「お待たせしました。15時ちょうど発、札幌都心直行便です」
やってきたバスはベタな空港連絡バスの法則通りのものだった。
高速バス仕様だが、4列シートのトイレ無しである。
運転席の横に運賃箱はあるが、後払いであり、乗車券を既に購入している乗客は降りる時にその乗車券を運賃箱に放り込むだけで良い。
空港のバスターミナルなだけに、乗り場には係員がいる為、エミリーを入れていた大型のキャリーバッグは係員に荷物室に積んでもらう。
鷲田:「直行便に乗れて良かったな。少しでも早く着いて、ホテル側の事情を聞きたい」
村中:「そうですね」
敷島達はバスに乗り込んだ。
直行便とは言うが、南千歳駅前までは何ヶ所か停車するらしい。
バスは時間通りに出発すると、今度は同じターミナルの並びにあるJAL到着口からも乗客を乗せた。
その次は国際線ターミナルに止まるという。
国際線から先に出発する羽田空港のバスとは順番が逆だ。
その途中で、先ほどの送迎バスや観光バスが発着する場所を通過する。
また北国観光バスが、次の団体客を乗せている所が見えた。
その隣には、どこかのホテルの送迎バス。
それも、ホテルの自社便によるマイクロバスとかではなく、どこかのバス会社に委託しているのであろう。
ホテルの名前が大きく書かれており、バス会社は小さく書かれていたのでどこの会社だかは判別できなかったが、少なくとも緑ナンバーであったことから、そうだとだいたい分かる。
敷島:「ん……!?」
敷島の頭で何かが繋がったような気がした。
鷲田:「どうしたね?また何か、ロクでもないこと思いついたか?」
敷島達のすぐ前に座る鷲田が振り向いてニヤッと笑った。
敷島:「いや、そんなことはないですよ。ただ、アリス達は素直に北国観光バスに乗ったのかなぁ……って」
村中:「何が言いたいんだい?」
敷島:「今さっき、送迎バスの乗り場の所にホテルの送迎バスが止まっていたんです。もしかしたらアリス達、そっちに乗ったのかもしれません」
鷲田:「しかしそうなると、行程表とは違う内容になってしまうことになるが?」
敷島:「ええ、そうです。多分、偽ツアーの方が先に新千歳空港に着いたことで、易々と北国観光バスに乗れたのでしょう。そして、その後に来た本物の科学館のツアーの方は、偽のバスに乗ってしまい、全く別の所に連れて行かれたのかもしれません」
村中:「なるほど。ホテルの方で送迎バスのサービスをしていれば、それに成り済ましてミスリードさせることが可能ってわけか」
鷲田:「だがしかし、そんなことが本当に可能なのかね?」
エミリー:「可能だと思います」
と、エミリー。
エミリー:「偽ツアーの方は成田空港からの出発でした。実際に同じANA便、2153便という便がアリス博士達より40分も早く到着できます」
鷲田:「40分?そんなに早く着いたら、逆に怪しいのではないかね?」
敷島:「いや、そんなことはないでしょう。大抵は客をすぐに迎えに行けるよう、少し早めに来て待つのがベタな法則ですから。偽ツアー客には、適当に説明しておけばいいでしょう。そして本物のDCJツアーが来る前にさっさと合流してしまえば、本物が来る前に出発できるというわけです」
鷲田:「それで?本物のDCJさんを輸送した偽バスは、誰がどうやって用意したというのかね?」
敷島:「バス会社の係員が偽ツアーを誘導していったのを見計らって、偽の係員を用意しておくんです。そしてアリス達が到着したら、偽バスの方へ誘導する」
村中:「あり得る話だね。だけど、偽バスなんか、なかなか用意できるものじゃないな。白バス営業防止の為、実は大型バスのレンタルや購入にはそれなりの審査があるんだ。わざわざそれを本州から持ってきたとは考えにくいから、この道内で調達しただろうね」
鷲田:「可能性はあるな」
敷島:「そうなると、ホテルまで聞きに行く必要は無いんじゃ?結局、偽ツアーの人達しかチェックインしていないわけでしょ?」
鷲田:「その主催者を挙げて尋問するというルートもあるからな」
敷島:「いや、どうせ北海道にはいないでしょ?」
鷲田:「本州には部下達がいるからな。結構頼りになるぞ」
敷島:「そうですか」
[同日16:20.天候:曇 北海道札幌市 東京REIホテル]
敷島:「まだ冬だから当然ですけど、北海道は暗くなるのが早いですね」
鷲田:「札幌はまだ東京よりちょっと早い程度だが、道東に行くともっと日の入りが早いそうだ」
村中:「逆に沖縄は17時になってもまだ明るいんだ。日本って意外と広いよ」
敷島:「そうですねぇ……。ここじゃ天気が悪くなったら雪が降るのが当たり前ですが、沖縄は普通に雨ですもんね」
鷲田:「そういうことだ」
敷島達はホテルのロビーにいる。
支配人:「お待たせ致しました。私が当ホテルの支配人です」
鷲田:「こりゃお忙しいところ、申し訳ありませんな。私達は東京から参りました警視庁の鷲田と申します」
村中:「同じく村中と申します。こちらが、捜査協力依頼書です」
支配人:「それで、ご質問の内容というのは?」
鷲田達は偽ツアーのことについて聞いた。
そこで分かったことがあった。
やはり、チェックインしたのは偽のツアーだった。
但し、乗り付けたバスは本物の北国観光バス。
敷島は小山副館長から送られた岩下副館長や西山館長の写真を支配人に見せた。
すると、支配人はおろか、実際にDCJ観光の偽ツアーをアテンドしたホテルマンは見覚えが無いという。
そして敷島は、アリスやシンディの写真も見せた。
支配人:「違いますね。確かにあの団体客の皆様の中に、1人だけ白人女性がいらっしゃいましたが、このような方ではありませんでした」
敷島:「そうですか……」
村中:「警視、これではっきりしましたね。科学館の人達はこのホテルには泊まっていない、新千歳空港から別のルートで誘拐されたんでしょう」
鷲田:「そういうことになるな。幹事の『岩下』という人物について聞きたいのだが、写真とかは無いかね?」
支配人:「申し訳ありませんが……」
鷲田:「では、防犯カメラの映像を見せて頂きたい。令状ではなく、依頼書で申し訳無いが、よろしいですかな?」
支配人:「どちらのカメラをご覧になりますか?」
鷲田:「まずは偽ツアーの全体像を見たいので、このロビーを映しているカメラと直接フロントを映しているものを見せて頂きたい」
支配人:「かしこまりました」
敷島:「あ、あの、支配人さん」
支配人:「何でございますか?」
敷島:「このホテル、送迎バスみたいなものは走らせてますか?それも、大型バスです」
支配人:「はい。大型バスで運行させて頂いておりますが……」
敷島:「おおっ!当たった!」
鷲田:「それは新千歳空港から出ているのかな?」
支配人:「いいえ。札幌駅前からのみになります」
敷島:「ええっ!?……それでも何か特別に走らせたりとかは……?」
支配人:「申し訳ございませんが、今まで1度もございません。お客様方の方で観光バスを手配して頂いて、それを……というのはよくありますが……」
敷島:「違ったかぁ……」
敷島はガッカリした。
だが、村中はこんな質問をした。
村中:「ですが支配人、実際にこのDCJ観光さんと同じタイミングでこのホテルにチェックインするはずの団体客が、新千歳空港からこのホテルへの直行便と称したバスに乗り込んでしまったのですよ。恐らく、何の疑いも無く。何か、心当たりはありますかね?」
支配人:「そう、申されましても……」
支配人は困ったような顔をした。
ホテルマン:「あの、支配人。ちょっとよろしいでしょうか?」
支配人:「少々お待ちください」
鷲田:「ああ」
支配人は席を立った。
ホテルマンが何やら、敷島達の方を見ながら耳打ちしている。
そして戻ってきた支配人が、衝撃的なことを言った。
その内容とは?
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