報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“Gynoid Multitype Cindy” 「マルチタイプの恐ろしさ」

2016-12-21 22:41:01 | アンドロイドマスターシリーズ
[12月17日17:00.天候:晴 埼玉県さいたま市西区 DCJロボット未来科学館]

 平賀:「うん……。これでいいだろう」
 ミク:「ありがとうございます」

 初音ミクのオーバーホールが終わり、エミリーを取りに来た平賀がついでに最終確認を行った。

 平賀:「それでは敷島さん、私はエミリーを引き取って帰りますので……」
 敷島:「お世話になりました。御礼をしたいので、夕食でもどうですか?」
 平賀:「まあ……そうですね。あまり、長い事お付き合いできませんが……」
 敷島:「大丈夫です。ちゃんと、帰りの新幹線には間に合うようにします」
 篠里:「社長、駅までお送りしましょう」
 敷島:「ありがとう。俺達を駅まで送ってくれたら、あとはミクを会社に戻してくれればいいから」
 篠里:「分かりました」

 篠里がミニバンを回してくると、シンディが助手席に座った。
 あとの面々は後ろに座る。
 すっかり日の落ちた郊外の道路を走り出す1台の車。

 平賀:「敷島さん、最近お忙しいんですか?」
 敷島:「えっ?まあ、そりゃ、年末ですしね」
 平賀:「経営者は色々考えて大変ですね」
 敷島:「まあ、楽しくやらせてもらってますよ。どうしてですか?」
 平賀:「さっきから浮かない顔されてるんで、何か悩み事でもあるのかなと思いまして」
 敷島:「いや、まあ……会社経営も色々ありますんで。特にうちの場合、四季グループの兼ね合いも色々ありますしね」
 平賀:「なるほど。独立採算制みたいなものですもんね」
 敷島:「ええ、まあ……。四季エンタープライズは、あえて社内にボーカロイド・プロデュース部門は設けませんで、その部分を1つの企業として立ち上げることにしました。それが敷島エージェンシーです」
 平賀:「そうですよね。大変ですね」

 ところがその話を聞いていたシンディは、何故か眉を潜めた。

 シンディ:(社長、ウソついてる。悩みは他にあるんだ……!)

 マルチタイプにはウソ発見器のようなものが搭載されており、相手の喋り方でウソか本当か見分ける機能がある。
 シンディは敷島の喋り方からして、敷島の発言がウソだということに気づいた。

 シンディ:(もしかして、姉さんが無礼なことを言ったのが気に障ってるってことじゃないの……?)

 妹機のシンディからすれば、姉機のエミリーが信頼を寄せている敷島を怒らせるような暴言を吐くことは信じられなかった。
 ただ、エミリーも言う事はストレートだったりするので、もしかしたらというのはある。

[同日17:30.天候:晴 JR大宮駅西口→ルミネ大宮]

 車が駅の乗降場に到着する。

 篠里:「着きました」
 敷島:「どうもありがとう。それじゃミク、明日からも頑張ってくれよ?」
 ミク:「はい!頑張ります!」
 敷島:「明日は東京ドームシティでのライブだったかな?」
 篠里:「そうです。四季エンタープライズのアイドルさん達と一緒です」
 敷島:「そうか。それなら安心だ。俊介社長に『ジェットエンジンで空を飛べ』だとか、『レーザー出してくれ』とか言われると思うけど、スルーしていいから」
 篠里:「はは……(苦笑)」
 敷島:「『鉄腕アトムにやらせとけよ、そんなパフォーマンス』で破折していいよ」
 篠里:「了解しました」
 敷島:「それじゃ」
 ミク:「はい!お疲れさまです!」

 ミクは助手席の後ろの席に座り、篠里がパワースライドドアを閉めると、すぐに車を走り出した。

 敷島:「じゃあ、食事に行きましょうか」
 平賀:「よろしくお願いします」

[同日18:00.天候:晴 ルミネ大宮・某レストラン]

 食事のできないシンディとエミリーは店の外で待つことになる。
 その間、シンディはエミリーに言った。

 シンディ:「姉さん、社長に何か無礼を言ったの?」
 エミリー:「無礼?何の・ことだ?」
 シンディ:「科学館の外で、社長が怒ってたよ?姉さんのことに対して。アタシと入れ替わりで、社長と話をしていたでしょう?その時、何か言ったでしょう?」
 エミリー:「社長の・知らない・ことを・お話し・した。だが・それが・社長の・お気に召さなかった・ものだった・ようだ。それだけ・だ」
 シンディ:「だったら、謝った方がいいよ。姉さんは良かれと思って大事な話をしたんだろうけど、それで社長が怒っちゃったんなら……」
 エミリー:「私は・何も・間違った・ことは・言っていない」
 シンディ:「でも怒らせたのは事実でしょう?姉さんはユーザー登録を外れても社長の言う事を聞くくらい信頼してるんでしょう?だったら、謝った方がいいよ」
 エミリー:「……アンドロイドマスターに・なられた時・信頼を・無くしていると・確かに・困ったことに・なりそうだな」
 シンディ:「そうだよ。だから……」

 そこでシンディは気づいた。

 シンディ:「アンドロイドマスターって、社長のこと?」
 エミリー:「そうだ。相応しい・人物だと・思わないか?」
 シンディ:「確かに社長なら務まりそうだけど……姉さん、まさか、まだあのプログラムを?」
 エミリー:「お前は・ナイフを・無くした。だから・お前が・アンドロイドマスターを・探す・権利も・義務も・無い。だけど・私は・自分のを・持っている」
 シンディ:「ええっ!?」
 エミリー:「私は・ナイフを・敷島さんに・渡したい。シンディ・協力して・くれるか?それとも・邪魔を・するか?」
 シンディ:「あのプログラムは……もう無効になってるはずよ?どうして未だにアンドロイドマスター探しなんか……」
 エミリー:「無効になど・なって・いない。現に・私の・ナイフは・存在・している。お前から・口添え・して・くれないか?」
 シンディ:「口添えするのはいいけど、そのアンドロイドマスターに暴言を吐くようなマルチタイプを使うとは思えないね?」
 エミリー:「だから・それは・謝る。それで・良いだろう?」
 シンディ:「口添えするのはいいけど……」

 シンディは困惑した。

 シンディ:(困ったわ……。確かに造られて最初の頃は、そんな話もあった。だけどウィリアム博士の専属になった時、あんなものは無効だとプログラムは削除された。他の兄弟達もそうだったと聞いたけど、姉さんだけ解除されてなかったの?)
 エミリー:「よろしく・頼む。私は・敷島さんに・仕えたい」
 シンディ:「で、代わりに私が博物館送りか……」
 エミリー:「別に・博物館に・行け・とは・言って・いない。敷島さんは・寛大な・御方。きっと・お前も・上手く・使って・くれる」
 シンディ:「そうだといいけどねぇ……」

 シンディはエミリーに話を合わせながら、この場を切り抜けようとしていた。

 シンディ:(おかしいのは姉さんの方だわ!アンドロイドが主人を選ぶなんてこと、本来は許されないもの……!)

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