小杉 健治氏の作品。
本作品は、裁判員に選ばれた主人公とその裁判員たちが担当した事件により
裁判員となつた人たちの心を描く物語である。
主人公の堀川恭平は、裁判員として母娘殺人事件を担当することとなつた。
犯人とされた男性は、被害者宅から出てきたところを第一発見者とぶつかり逃げ去つた。
被疑者の男性は、自分が家を訪れたときに既に母娘は殺されてゐた、と主張するのだが
裁判員らの評議により男性は有罪となる。
しかし男性は拘置所内で自殺を図る。
主人公の堀川は、評議中より男性の無罪を感ぢてゐたが既に審理は終了し裁判長からは
「検察と弁護士の示したことを事実として判断してください」と要求される。
警察、検察と弁護士の公判前整理手続きが不十分であつたと思はれる事件なのに、
結審はやり直せないので判断をせよと迫られるやうすが描かれる。
ほんたうに、こんな経過であるなら(嘘ではないだらうが)冤罪が増えることの懸念は十分
頷ける。
また、裁判員として評議中に疑問を抱く人、抱かない人様々であらうが、自分たちが下した
判断により被疑者がその後自殺などを起こしたら誰だつていい気はしない。
裁判員裁判の是非はともかくとして、公判前整理手続きといふ警察・検察の捜査および
弁護人の調査が十分なされてから裁判とすべきではないか・・・・
また、悩んだ「裁判員」としての心のケアがあるやうに報道されてゐるが、実際はだうなのか。
裁判員裁判には批判が多いが、小説ではなく論評を読んでみやうと思つた。