夢の人

心はいつまでも子供のまま。生活感無き こだわり人は、今日も夢を追いかけて多忙です。

秋波の送り先

2017-10-06 00:35:26 | Weblog
 杉井は秋田官房長官が語った内容に一年前は驚きを隠せなかった。

 しかし、今は北野を前にして杉井が言った。
「予知能力でも持ってるんじゃねぇかと思う時があるよ、まったく」
 その呆れ顔にニヤニヤしながら北野は
「秋田さんですもん、僕は驚きませんけど」
 杉井が北野と面と向かって語り合うのは久しぶりで、総選挙を間近に控えた寸暇にようやく時間が取れたといった格好である。

 秋田官房長官が口にした ”獅子身中の虫”が ”新党”を立ち上げたのはつい先日のことだ。 突如反旗を翻したのが与党幹部の若手有力議員で、党内部からは論外の声が上がり、更に嘗て勢力を誇った或る野党が節操無く新党と合流したことにより、世論は徐々に反新党及び現内閣支持へと動き始めていた。

「あんな媚売り党のポンコツ軍団がなだれ込むとは、まさかだったでしょうけど、大沼君も」
 大沼というのが ”獅子身中の虫”だった新党代表であるが、北野は笑顔で言葉を続けた。
「それに大沼君を杉井さん、昔から大っ嫌いだし、面白くなりそうじゃないですか」
「……面白くなるとか他人事だな、相変わらず。 いずれはアンタに秋田さんからお声が掛かるのにかい?」
「”民間人”ですから当面関係ありませんよ」


 ∽∽この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません∽∽

コメント
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