日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

春秋社版「世界音楽全集」「山田耕筰全集」との出会い

2005-07-28 09:30:53 | 音楽・美術

新開地本通りを歩いていた。最近は滅多に通らないが時には郷愁に誘われのである。その度に街の様子が変わって見える。古いものが消え新しいものに変貌するのである。その一つ、本を野ざらしに山のように積み上げているのが目印だった古本屋が、ちゃんと開け閉めの効くドアの付いた建物中に納まっているのに気がついた。引き寄せられるように足を踏み入れたお陰で思いがけない幸運を拾った。

戦前の本がゴロゴロある。サイズも不揃いなある限りの本棚に分類もなにもなく本が放りこまれている。以前の店から埃もそのまま持ち込んだような店内なので、「不如帰」の時代の結核菌がうようよ漂っているような感じすらある。心もち息を詰めるようにしながら店内を見まわしていると、背文字もはっきり見えないような本が数冊並んでいてそれが私の目を捕らえた。手にとってよく見ると春秋社刊行の「世界音楽全集」でこれが五六冊。「山田耕筰全集」も一冊ある。昭和五年から六年の出版でサイズはほぼA4版、200ページを上まわり、上方の小口は天金である。函も痛んでいるが全部揃っている。

そのうちの一冊第十六巻「世界唱歌集」を開くと目次にあるのは217曲、その全楽譜が収録されているのである。曲のタイトルはすべて英語やドイツ語でそれに日本語訳がついている。歌詞もまたしかり。しかしそのすべてと云っていいほど、私の知らない曲ばかりで、辛うじて父が口ずさんでいた賛美歌「Nearer, My God, To Thee」を見つけたときはホッとした。私のまだ生まれていない頃の日本の何処で誰がこのような歌を歌っていたのだろうと好奇心が一挙に燃え上がった。

本のどこにも値段が記されていない。一冊だけをカウンターに持って行き茶髪のお婆さんに値段を尋ねた。もし店番をしているだけなら主人にでも声をかけるかと思ったのに、なんと函から本を取り出しパラパラめくるや奥付を見るやらまた全体を眺め入ったり、なかなか一声が出てこない。私の頭もそれに釣られて活動を始めた。もし300円や500円と言うのならやっぱり単なる店番、でも下手すると1000円以上言うかも知れないと見当をつけた。そこでようやく考えがまとまったか茶髪レディーが告げた値は1000円なり、これは昭和初めの本なのでこれでも安いという。しかし私は500円と既に決めたので、あるのをまとめて買うから一冊500円でいいでしょう、と交渉、勝利の女神は私の頭上に輝き五冊を手にしたのである。

茶髪レディーがウエットティッシュの容器を手渡してくれた。手を拭けというのである。言われてみたら手は文字通りドロドロ、それぐらい埃が堆積していたのである。何枚も使ってようやく手を綺麗にすることができた。

面白そうな曲をこれから探しだし、歌仲間で復活させていくのが楽しみだ。

ちなみに帰宅してからインターネットで調べてみると、同じシリーズの本が二冊、函欠、少痛が1800円で売りに出ていた。