星のひとかけ

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どうせ大声をだすんなら泣くより笑うほうがいいです。 : オルコット『病院のスケッチ』

2006-10-28 | 文学にまつわるあれこれ(林檎の小道)
しばらく前に読んだ本と、つい最近、読み終えた本、、。

ひとつめは『ルイーザ・メイとソローさんのフルート』という絵本。
これは、新聞の子供の図書欄で見つけて、
読もうと切り抜いておいたもの。

ルイーザは、『若草物語』の作者ルイザ・メイ・オルコット。
ソローさんというのは、『森の生活』で有名なヘンリー・デヴィッド・ソロー。

ルイザのオルコット一家は、ボストン・コンコードで暮らし、お父さんのブロンソンは、自由教育の学校をつくったりして、エマソンや、ソローなど、トランセンデンタリズム(超絶主義)の文学者らと親交がありました。…という話は読みかじった程度で、以前、ウィノナ・ライダー主演の『若草物語』のビデオを観た時に、ジョーことウィノナが、NYで出会うベア先生に超絶主義について熱く語る、というシーンをみて、ふ~んと思ったものでした(原作にはそんなシーンは無かったと思うな、、)。

でも、若きソローさんと少女ルイザが仲良しさんだったとは、知りませんでした。
ソローさんは毎日森をぶらぶらしている変わり者の若者(森の生活をはじめる前のことです)。。ルイザは、当時の少女にふさわしい縫い物仕事などを、なんとか抜け出して、ソローさんと森の散策や川下りをしたくてたまらない、、。

ルイザの少女時代が読める、ということで興味深く手にしましたが、、う~ん、、オルコットもソローも未知な子供が読むにはどうなんだろ、、? 前もって興味がないと、日本の子供には何もピンと来るものがないかもしれないかも、、と思ってしまいました、が。。150年前の家や服装を描いたイラストもね、、ちょっと好き嫌いが分かれるかなあ、、。
、、(勝手だけど)私の好きなバーバラ・クーニーの絵だったら、もっと可愛かったのにな、、なんてちょっぴり残念が残りました。

 ***

もう1冊は、これも、オルコット。『病院のスケッチ』。
ルイザが1862年、従軍看護婦を志願し、南北戦争の負傷兵を看護したときの体験記録。。これは現地から、家族のもとへ手紙として書き送られたものを、のちに新聞に掲載したのだそうです。まだ『若草物語』を書く前、、作家になる前のスケッチです。こちらはたまたま図書館で目にして読んだもので、もう絶版のよう。
すばらしい本なので、再販されて手に入るようになればいいなあ、と思います。

自分がもうすぐ病人になるっていうのに、苦しむ負傷兵のスケッチを読んだりしなくても、、って思われるかもしれないけど、、手を差し伸べられる幸せよりも、手を差し伸べる幸せのほうが、いいものね。。

設備も薬も、麻酔も整っていない南北戦争時代の負傷は、治癒を待つか、切り落とすか、感染が広がって死ぬか、、手を施すにも限界のあることばかり。。でも、そんな状況に、持ち前の不屈の精神と、使命感と、姉のような愛情で立ち向かうルイザの言葉には、力が溢れてて、、。ここにまさに、ジョーがいる!という感じでした。『若草物語』の冒頭も、お隣のローリー君の風邪お見舞いから親交が始まるのですよね。ルイザには、男の子の心を開いて、すぐにかけがえのない友になってしまう魅力があることが、このスケッチでもよくわかります。

肺を撃ち抜かれ、死を宣告された、誰よりも勇敢な兵士「ジョン」が、故郷の弟「ローリー」に宛てて手紙を書いて下さいとルイザに頼む話など、、つらく悲しい場面もあるけれど、ルイザの筆致は、どんな状況にも屈服しないジョーにつながる萌芽をそこかしこに。。大袈裟な比喩とか、ディケンズや聖書の文句のもじりとか、爆発する喜怒哀楽とか、暴走してしまう行動とか(笑)。

・・・現代の病院風景は、昔とはずいぶん変わったけれど、、それでも、できたら若い人は一度は病院で看護士見習いとか、看護体験とか、してみたらいいのではないかな、、と、ふと思いました。難しいかも知れないけれど、死と向き合いつつある人と、何も出来なくてもいいから、話をしてみたら、、と思う。望みの少ない人が、「看護婦(士)さん、ありがとう」と口にする時、どんな表情をするか、ただ身を横たえるより方法の無い人が、時にどんな崇高な笑顔をみせるものか、知る事が出来たら、きっと生きる力になるはず、と私は思うのですけれど、、。
と、これは余談。

愛と勇気と笑いで奮闘するルイザの筆が、本当に生き生きと、素晴らしいスケッチでした。きょうのタイトルは、本文の兵士の言葉です。。
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