星のひとかけ

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Hozier の新しいアルバムが届きました。

2023-08-25 | MUSICにまつわるあれこれ
アイルランドのシンガーソングライター Hozier の3枚目のアルバム「Unreal Unearth」のCDが届きました。

ホージアのyoutube チャンネルで曲が発表されるたびに聴いてきたので すでに聴いた曲はたくさんあって、 先日ぜんぶの曲も公開されたのでひと通り聴いて、 アルバムをダウンロードするか、 CDを買うか、 それとも前作みたいに2枚組LPにするか、、しばらく迷った末 CDにしました。 レコードだと頻繁に聴くのは厄介だし、 ダウンロードでイヤホンで聴くのもイヤだったから。。 CDを買うのも ほんとう久しぶり・・・

今、聴いています。 やっぱりスピーカーで部屋に音を鳴らして聴くのは良い。。 レコードも勿論良いけど。 ホージアの声の拡がりがぜんぜん違うし、 サウンドの空気感が柔らか。
イヤホンで鳥のさえずりを聴くのと、 森の中を歩いて鳥の声を聴くのではぜんぜん空気感が違う、 そんな感じ。



日本ではホージアの情報がぜんぜん無いので、 今度のアルバムもタイトルからして何のことだろう… と独りで悩まなくてはいけません。 幸い、 youtube でも歌詞は公開されているので翻訳ソフトを通せばだいたいは分かるんですけど、、 それにこのジャケット。。
地中に埋められた者の叫びなのかな、、とか 戦争で塹壕に生き埋めになった人をイメージしてるのかな、、とか そこから恋人や神や世界に向けて歌っているのかな、 とか いろいろ考えていました。

でもまあ意味はひとまず置いて、、 サウンドを通して聴いた時、 すごくひとつの大きな世界が感じられて、 曲から曲の流れとアルバムのまとまりがすごく良く出来ていることに感心。。 ソウル、 ゴスペル、 アイリッシュらしいフォーク、 なんだか中南米ぽいもの、 ストリングスがとても美しいもの、、 とても多彩。 そうした流れで壮大なひとつの世界が出来上がっているまとまりあるアルバム。

それで ジャケットを見ていて、 曲目が9つに分類されているので「?」と、、 それからやっと海外のレビューを見てみました。
今回のアルバムは、 ダンテの『神曲』の「地獄篇」がモチーフになっているのだそうです。 地獄の9つの圏のそれぞれの罪をモチーフに歌がつくられているということ、、 なるほど。。

 ダンテ『神曲』 wiki >>

たとえば 恋人にもう一度君と… と歌いかけるラブソングだと思った「フランチェスカ」は、 地獄の第二圏  肉欲に溺れた者の地獄となっていて、 そうすると歌詞の意味ももっとエロティックな意味に変わってくる。

、、ホージアの詩はなかなか難しいし、『神曲』となると 日本人には容易に耳で聴いて理解できるようなものではないですけど、 そんなに難しく考えずに、 地獄めぐりの旅をつづけるダンテは最終的に最愛の人ベアトリーチェに導かれ、 彼女を求めて天上界へと最終的に昇っていく、という行く末だけを頼りに、 いまこの世界のさまざまな「罪」と「欲望」を歌っているのだと そう思いました。 最後のセクションには「ASCENT」(上昇)とありますから。。 その最後の曲はほんとうに宇宙的に美しいですし。

一聴して ひとつの大きなまとまりを感じたのもこのようなコンセプトで出来上がっているからなのですね。 シャッフルしては聴けないアルバム。

 ***

ローリングストーン誌とNMEは好意的な評価でした。 もともとRS誌は文学的な作品が好きですし。 ピッチフォークはさんざんなことが書いてあったなぁ(笑

個人的には前作の「Shrike」みたいな 涙が出るほど好き、という曲は無い代わりに、 アルバムの出来では今回のほうが良いと思う。

3曲目に日本のバタやんが弾くみたいな人情演歌みたいな曲があって、 アイルランドと日本には独特の共通する哀愁みたいな音色があるんだな、、と。 でも聴くとどうしても吹き出してしまう・・・笑

ホージアの歌は なんというか詠唱というか、 祝詞とか 木遣り唄とか、 神や地霊に捧げる歌声のような趣があります。 歌、とは 古来「訴ふ」 神様への呼びかけだったといいます。 そういう古代から今に繋がっている歌の気持ちをそなえている歌声を感じます。

もともとホージアは アイルランド音楽の合唱団アヌーナの出身ですが、 かつてアヌーナと日本の能楽がコラボした『鷹の井戸』を観た時の アヌーナの歌声、、 地霊に呼び掛ける歌声、、 あのとき聴いた歌声のもつ宇宙的な拡がりと祈り、 今回のアルバムで聞こえるコーラスなどにもそういうものをしっかり感じました。

歌詞についてはこれから勉強していきましょう。。 曲名にもなっている セルビーというのは、 アイルランドの作家フラン・オブライエン 著の『ドーキー古文書』の主人公だそうだし(白水社から出ています)、 ジョナサン・スウィフトの A Modest Proposa 「アイルランドにおける貧民の子女が、その両親ならびに国家にとっての重荷となることを防止し、かつ社会に対して有用ならしめんとする方法についての私案」(青空文庫にあります) などという文書についても歌っているというし、、 アイルランド文学についての宿題もいっぱいだ。。。


CDショップのポイントが余っていると知って 何か… と迷って、、 一緒に チェット・ベイカーの『Chet Baker sings and plays 』も買いました。 (今かけてみる…) 1955年作品。

・・・ あぁ 甘い声




お部屋に歌声がながれるのは ほんとうによいものです…




素敵な週末を・・・
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