陽が西に傾いた夕暮れ近くに、海岸プロムナードに沿う道路の中央分離帯に、茅(チガヤ)の穂波が煌めいていた。ここのプロムナードにはカナリー椰子の並木が連なり、湾の向こうの夕陽に霞む高層マンションの影を背に、散歩やジョギングの常連が後を絶たないが、道路のチガヤを愛でる数寄者は虚庵夫妻だけかもしれない。
チガヤの草丈はおよそ60~70センチ程であろうか。つい最近までは花穂が引き締まっていたが、気温の変化を敏感に感じ取って、一気に花穂が開いた。
朝日や夕陽に煌めくチガヤの穂波には、云い知れぬ風情があって、虚庵居士の好みの一つだ。尤も、夜更かし族の虚庵じじは朝寝坊ゆえ、朝日に煌めくチガヤの穂波は想像するばかりだが、夕陽に比べてさぞや爽やかな穂波であろう。
4車線の道路の中央分離帯には、刈り込んだシャリンバイ等が植えられているが、チガヤの穂波を透かして見る対向車のヘッドライトは、幻想的な世界を創りだすに違いあるまい。
山の端に沈まんとする陽をうけて
穂波の煌めくチガヤに見惚れぬ
海沿いのプロムナードの椰子並木や
霞む島影 夢を湛えて
おぼろげに浮かぶ彼方のマンションも
このプロムナードは夢想の世界か
四車線の道路の中央分離帯
チガヤの穂波と語らう爺かな
対向車のヘッドランプを透かし観れば
夢幻にくるむやチガヤの穂波は