「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「お多福南天」

2015-01-07 15:55:25 | 和歌

  「うつろ庵」の「お多福南天」が、朝夕の厳しい寒さで葉を紅に染めた。

 

 厳しい寒さとはいえ、横須賀は比較的温暖な土地ゆえ、紅葉したとは申せ未だ緑葉も残り、織り交ぜた色の変化が小さな錦となって、愉しませて呉れている。

 「お多福南天」は読んで字の通り南天の一種だが、背丈は二十センチから精々
五十センチ程度で、それ以上は伸びない。また普通の南天の葉はスリムだが、この南天の葉は「お多福」で、葉の表情も何処となくユーモラスなのが面白い。

 造化の神様は中々乙なことをなさるお方で、感服だ。
南天の軸はスラリと伸びたって、頂きに紅の実房を付ける姿には惚れぼれとさせられる。「うつろ庵」にも幾株も植えてあるが、背丈が高いので生垣の近くや庭の隅が定位置となる。一方、「お多福南天」はごく背が低く紅の実は付けないが、その代り紅葉が美しいので、彼女の位置は庭の中程になる。或は盆栽に仕立ててお楽しみあれ等と、造化の神様は、人間と南天の接し方までご配慮下さって、舌を巻くばかりだ。


           縁石に寄り添うお多福南天は

           葉を紅にして寒さに応えぬ


           お多福の南天の葉は笑み湛え

           揺れるは正月寿ぐこころか


           身の丈はいとど小振りのお多福の

           南天なれども御座す(おわす)君かな