「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「落葉のご挨拶」

2013-11-28 00:07:18 | 和歌

 「うつろ庵」の周りの道路掃除が、虚庵居士の朝食前の日課だ。
秋は落ち葉が舞い散って、風が吹けば落ち葉と箒のオッカケッコを演じるなど、手を焼くこともしばしばだった。11月も末になって、殆どの落葉樹も散り尽し、やっと手が省けるこの頃だ。

 そんな或る朝、珊瑚樹の小さな落ち葉が一枚だけ、朝日に輝いていた。
「ジジ、おはようございます!」 と、朝のご挨拶だった。

 手に取って見れば、紅に染まった艶やかな葉は、漆塗りの工芸品を思わせるような気品を湛えていた。箒と塵取りを脇に置き、道端にしゃがんで紅葉とお話していたら、「オハヨウゴザイマス!」 と、背後から幼い声のごあいさつがあった。

 振り向いたら、ご近所の幼稚園に通う幼児と母親の、笑顔でのご挨拶だった。
手に持っていた小さな紅の葉をさし出して、「ハイ、朝のプレゼントで~す!」

 「わー きれいだ!! ありがとう!!」 
頭をぴょこんと下げた笑顔が、何とも爽やかだった。




           風に舞う落ち葉を追うかな秋の朝の

           日課は楽しも戯れるにあらずも


           落葉散り梢の小枝は櫛なるや

           うす雲透けて深まる秋かな


           紅の小な落葉の煌めきは

           じじへの朝のごあいさつかな


           手に取れば艶やかなるかな紅に

           金色蒔き絵の漆器ならずや


           道端に落葉と語れば背後から

           おさなごの声 オハヨウゴザイマス!


           紅の一枚の葉をさし出して

           朝の挨拶 プレゼントで~す!


           ありがとう! ピョコンと頭を下げてから

           こぼれる笑顔で小おどりする僕