道路脇の草叢に、「薊・あざみ」が一輪だけ咲き残っていた。
薊には鋭いトゲがあるので、散歩の犬も子供たちも怖がって近寄らない。
長い間放置された薊は、自由気侭に群落をなして絡み合っていた。殆どの薊は花時を過ぎて花柄を付けたままだったが、幸いにも一輪だけが咲いていた。
それにしても薊のトゲの鋭さは、並大抵ではない。それぞれの葉の先端は云うに及ばず、有ろうことか優雅な花を支える花茎や苞など、全身に針の鎧をつけて武装しているのだから堪らない。
よく似た花の「野薊・のあざみ」もトゲの武装はかなりだが、薊に比べればまだ優しいものだ。薊がこれ程の武装をするのは、自然の摂理から何か特別な理由が有るに違いない。外敵から身を守る何かを、薊は身に秘めているのかもしれない。
野に咲く「薊・あざみ」の花の優雅さを愛でつつも、鋭いトゲのことが気になる虚庵居士であった。
草叢に一輪だけが咲き残り
薊の花は待ちにけらしも
じじばばの散歩を待つやただ一輪の
薊の花のご挨拶かな
草叢の薊はいとど鋭くも
針の鎧を身に付け咲くかな
斯くばかり鋭き針の鎧をば
身にまとうふ故を薊に聴かばや
麗しきそ文字のかんばせ見惚れつつ
トゲが気になる俗物の爺は