野原に「赤詰草」が咲いていた。
クローバーの白花に比べ、かなり大きめの赤詰草の花は存在感があった。
田舎で育った虚庵居士は、幼児の頃、この花を摘んで甘い花蜜を楽しんだことが、懐かしく想い出された。
そんな感傷に浸っていたら、ごく小さなクモが赤詰草の花に留まって、じっとしている姿が目にとまった。赤詰草の花とコハナグモの関係など、当初は気にも掛けなかったが、花蜜を吸った記憶を辿っていたら、ハタと手を打った。コハナグモが赤詰草の花に留まっている理由が、見えて来たのだ。
コハナグモの姿も色も、花にうちとけて誠に優雅に見えるが、彼は小さいながらも歴とした肉食動物だ。赤詰草の花蜜を求めて寄って来る虫達を捕えて、ご馳走になろうとの魂胆なのだ。
野に咲く赤詰草の花には夢があるが、その花の上の小さなスペースでは、自然の世界の厳しい物語が展開されようとしているのだ。
草むらの薄紅のボンボリは
赤詰草のお花の飾りぞ
野に遊び花みつ吸ったあの頃を
昨日の様に想い出すかな
あの子らの面影追えば何時しかに
幼なじみの名前を呼ぶかな
想い出す遊び友達の面影は
どの子も未だに幼きままかな