一面に黄色に咲いた「背高泡立ち草」が、鮮やかであった。
この草は、虚庵居士が青年になる頃までは、全く見かけない雑草だったが、何時の頃からか急激に蔓延して、瞬く間に全国の野原を席捲した。帰化植物の典型的な事例だ。ヨモギやススキなどに伍して、草丈がかなり高く、加えて繁殖能力が優れているので、至る所に発芽し根付いたのは頷ける。
野原での厳しい生存競争に必要な条件を備えている背高泡立ち草だが、このところ背丈が短くなり、繁茂地域も急激に減退しているようだ。虚庵居士は植物学者ではないので、正確な理由は全く分からないが、尤もらしい理由を受け売りさせて貰う;
理由その一: 精力旺盛な背高泡立ち草は、土地の養分を忽ち吸収して繁茂したが、結果的に深さ50センチ程の養分を吸いつくして、肥沃な土地が痩せ衰え、背丈も 繁茂範囲も減退した。
理由その二: 繁殖能力の高い野草は、アレロパシー物質(?)を分泌して他の植物の繁茂を抑制すると云う。この物質はヨモギやススキなども分泌するが、背高泡立ち草の分泌物は他の野草に比べて、その能力が一段と強いもののようだ。 その結果、分泌した抑制物質で自分自身が自家中毒症状を起こし、発育不良・自己犠牲を発生させていると云う。
素人の虚庵居士には何れも「なるほど」と思われるが、真の原因追求は専門家にお任せしたい。
原産地の北米では、背高泡立ち草が
ケンタッキーやネブラスカの州花だ。
広大な原野に繁茂し、咲き誇る背高泡立ち草が彼らにとっては、掛け替えのない誇りなのであろう。彼の地では、背丈の矮小化や繁茂範囲の減退は、発生していないのかもしれない。将に、その土地ならではの華なのであろう。
序ながら「うつろ庵」では、数年前に背高泡立ち草を刈り取り、定尺に切り揃えてテーブルセンターを編んだ。野趣に富んだ作品に仕上がって、いまだに時々利用していることを付記しておく。
金色に泡立ち咲くかも秋の陽に
萌黄にぼかした野を織りなして
燃え盛る心を観るかな織り女らの
泡立ち咲くは熱き思ひか
広大な原野を埋める金色の
華が州花とぞ ケンタッキーでは
背の高き泡立ち草に寄り添いて
コスモス咲けり花紅に