野原に足を一歩踏みこんだら、珍しい野草の花が目に付いた。
草丈の高いのは、虚庵居士の胸元ほどもあったが、花数が少なく殆ど葉も見当たらない、些か淋しい感じの野草だった。辺りを見渡したら、背丈の低い未だ青々とした草茎に、四つ五つの花が咲いているのを見つけて、カメラに収めた。花の大きさは、三ミリ程度。薄色の五弁の花が、何とも可憐に咲いていた。
最初にカメラに収めたのはごく若草であったが、その他は、既に長いこと咲き続けていた気配であった。花柄が連なり、頂きに小さな花を付けているが、花柄の重なり具合から判断すれば、かなりの老齢と見受けられた。
自宅に帰ってからが大変であった。
野草図鑑を紐解いたが、収録されていない。インターネットで探索したが、殆どの野草編にもその姿すら見当たらず、悶々とした時刻が過ぎて行った。
そんな中で、姫熊葛に辿り着いた。「これだ!」と快哉を叫んだが、念のため検索を続けたら、柳花笠、抱葉荒地花笠、姫荒地花笠などが次々と見つかった。
花の姿、葉の形などから総合的に見て、「荒地花笠」であろうとの判断に至った。
生物学を弁えぬ虚庵居士にとって、野花との出会いは、胸がトキメク感激であるが、花の名前を探究する道のりもまた、掛け替えのない試練なのだ。
野に入れば思いもかけぬ出会いかな
薄色いとしき小花の迎えは
胸元の小花は些か淋しけれ
花柄重ねる年増の花ぞも
見渡せば背高き野花のその下に
若き乙女か薄色に咲くは
花柄を重ねて野に咲く小花かな
荒地の花傘また逢いに来む