道路の脇などに咲く「おしろいばな」だが、「うつろ庵」の周辺の住宅地でも、最近はよく見かけるようになった。市街化が進み、空き地や菜園などが急激に減少した結果、住宅地の道路脇など、僅かな土地にも逞しく進出して来たのだろうか。
田舎生まれの虚庵居士の子供の頃は、身近な花で、女の子たちは「おけしょうごっこ」に夢中だった。
かなり長い期間に亘って咲き続けるので、花と共に黒い小さな実も、ふんだんに採れた。子供達は、黒い実を石ころで潰して、中の純白な粉を「おしろい」代わりに、「おけしょうごっこ」をして遊んだのだ。
最近の子供達に、そんな原始的なお遊びが流行らないのは、ゲームや遊具などが、ふんだんに溢れる昨今では当然かもしれない。
それにしても、最近の「おしろいばな」の華やかさには、目を瞠る。
一頃までは、濃いピンクの「白粉花」と、純白の「夕化粧」だけっだったが、色とりどりの花があちこちに咲き乱れている。「うつろ庵」のごく近くでも、こんな「おしろいばな」が咲いていた。
最近の子供達は「おけしょうごっこ」遊びをしないので、「おしろいばな」が自らお化粧したのかもしれない。
おみな児はほっぺを白く化粧して
母さま真似るや 「あーらおほほ」と
黒き実を石ころで割り「おしろい」を
採るはおの子の役割でした
夕暮れにさよなら告げつつ一輪の
おしろいばなを口にくわえぬ
花の名に遠き昔ぞ偲ばるる
お化粧ごっこで遊んだあの日を
夕暮れは私の刻よと予め
おしろいばなは化粧をととのえ
しろたえの花はおぼろに浮き出でて
仄かに揺れる夕化粧かな