「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「トベラの芳香」

2012-06-04 01:12:48 | 和歌

 「うつろ庵」からほんの五分も歩けば、海岸の遊歩道・プロムナードに至る。

 ここのプロムナードは、二キロ程の越波護岸が嘗て建設された際に、大規模な越波対策と共に椰子並木と各種の植栽をしたので、市民の遊歩道として人気が高い。
椰子並木を繋ぐ植込みに、「トベラ・海桐」がかなりの数で植えられていて、今まさに花時を迎えて愉しませてくれている。



 「トベラ」の芳香に包まれて散歩するのは至福の限りだが、意外なことに皆さんはトベラに随分悪い印象、或いは悪い先入観をお持ちの方が多いようだ。トベラは枝を切ると、かなりの異臭を放つことで有名だ。そんな嫌われ者のトベラの花が、芳香を放つなどということはあり得ないことだ、との先入観が行渡っているようだ。人間、一たび固定概念に取りつかれると、なかなかそれから抜けられないのが通例だが、幸いにして虚庵居士は「トベラの花の芳香」が先に印象づけられたので、「忌み嫌われるトベラ」との印象は全く持ち合わせていない。ハッピーと云うべきであろう。

 トベラは秋になると果実が割れて、中からそれは綺麗な種が姿を現す。五年ほど前になるが、その美しい種にほだされて、「トベラの思いを」とのタイトルで写真を掲載した。百聞は一見に如かず」との諺があるが、そちらも覗いてみることをお勧めしたい。




          艶やかな若葉に抱かれ白妙の

          トベラの群花咲きにけるかも


          芳しき薫りに包まれ散歩すれば

          夢見心地に誘う君かな


          人々は何ゆえ嫌う海桐ぞも

          斯く麗しく咲きて香るに


          枝切れば異臭立ち込め堪え得ぬと

          海桐を嫌うは勝手なるべし


          のびやかに育てよトベラの枝切りな

          臭いは海桐の護身のすべなれ