「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「黄花のアイスプランツ」

2012-06-12 14:49:04 | 和歌

 三浦半島の馬堀海岸は、東京湾の奥からどの位の距離があるのだろう。

 よく晴れた、比較的風の強い日には、東京湾に浮かぶスカイツリーが海岸のプロムナードから遠望される。地図を開いて直線距離を測ったら、約52キロもあった。
スカイツリーと羽田空港を結び、その延長線上に虚庵居士がいることになる。52キロに亘って遮るものもない東京湾だが、海面から立ち上る水蒸気が意外に視界の妨げになって、普段は東京湾の奥は靄がかかってボーっと霞んでいるのだ。

 その水蒸気・靄が晴れるのは、風が吹き飛ばしてくれる時だ。そんな条件が重なると、東京湾にスカイツリーが浮かんで見えることになる。陸上であれば、同じ52キロでも水蒸気の立ち上る量がかなり少ないので、東京湾を越えて観るよりもかなり見えやすいに違いあるまいが、陸上ではビルなど邪魔物が多いから、スカイツリーを遠望できる場所が限られる筈だ。


 
 スカイツリーの遠望も散歩の愉しみの一つではあるが、草花は虚庵居士の期待を裏切らないから、何時でも楽しめるのがよろしい。今回の散歩では「黄花のアイスプランツ」に出遭った。馬堀海岸のプロムナードには、様々な花が咲くが、アイスプランツの黄花はごく稀だ。椰子並木の足元には、海水の飛沫を被っても枯れずに元気さを保つアイスプランツが植えられているが、殆どはピンクの花の「アイスプランツ」だ。
ピンクの花は、真冬ですら凍えずに咲いているので、年間を通してお目に掛れるが、「黄花のアイスプランツ」に初めて出遭ったのは、花数がごく少ない故か、或いは花時が限られているのかもしれない。


 

          いや遠くおぼろに霞む湾奥の

          海に浮かべりスカイツリーは


          椰子並木を歩みつつ観むスカイツリーを

          今日は見ゆるかと まなこを凝らしぬ


          何ゆえにまなこを凝らして探すらむ

          東京湾の彼方 スカイツリーを


          眼を転じ椰子の根方に眼をやれば

          アイスプランツ黄花は見上げぬ


          朧なる遠くを望まず足元を

          まず確かめよと黄花は諭すや


          陽を受けて満面の笑みこぼしつつ

          観る人選ばぬ 黄花に見惚れぬ