「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「雪に煙る福井」

2012-01-27 03:02:44 | 和歌

 大寒を過ぎて全国的に雪模様が続いているが、福井工業大学からの要請で、学生の「コミニュケーション能力育成講座」の講師として、三日ほど前に福井を訪ねた。


 
 東海道新幹線の車窓からは、小田原から箱根にかけてかなり激しく雪が舞っていた。函南でのゴルフを楽しみにしていたお仲間は、急きょ「ゴルフを断念して温泉でも楽しんでいるかしらん」などと想像しつつ、原稿の執筆に追われていた。米原で特急「しらさぎ」に乗り換え、琵琶湖の傍を過ぎて敦賀に向かう山間では、車窓の景色も雪に煙り、積雪もかなりの量になっていた。北陸の冬の天候は、空が晴れ渡る日は殆どない毎日だが、この日もご多分に漏れず福井駅に到着しても、雪が舞い続けていた。



 福井工業大学を訪問するのは初めてだが、学生とシニアの対話会でお世話になった教授がお待ち下さっていた。暫し歓談の後、教授自ら学内をご案内下さりながら、会場の階段教室へ向かった。教室の窓からは、雪に煙る瀟洒な高校2号館が見えていた。ふと目を落とすと、何処かで見たような古風な建物が見えた。学生に聞いたら何と、「夢殿と正倉院デス」と自慢気だ。

 「夢殿」は、奈良・法隆寺の国宝とまったく同じ総欅造りで、学生達の禅堂だという。
夢殿に座禅を組み、瞑目する若者の姿が見えるようだ。「正倉院」は、将に東大寺・奈良時代の宝庫とまったく同じ校倉造りで、学園の重要書類の倉庫として使われているという。私学の構内に、日本を代表する国宝建築を模し、二つ並べて建設した「こころ」を忖度して、甚くシビレタ。

 応接室に「建学の精神」なる小額が掲げられていて、読ませて貰ったが、階段教室にも同じ額が掲げられていた。「コミニュケーション能力育成講座」が開始する時間になって、教授は学生に向かって静かに「建学の精神」の唱和を呼びかけられた。
全員が起立して、一糸乱れず粛々と唱和が続けられた。

      『悠久なる日本民族の歴史と伝統とに根ざした愛国心を培い、
       節義を重んずる人格の育成、科学技術の研鑽に努め、
       以て人類社会の福祉に貢献する。』


 

          風邪ならむ 喉の痛みを堪えつつ

          雪に煙れる福井路辿りぬ


          雪おぼろ敦賀を見やればおもほゆる

          我が児を腕に抱きし昔を


          どなたから訓を受けるや天かける

          息子に代り礼をば為すべし


          若者にせめて伝えむ天かける

          術とは心を伝えることぞと


          横文字とカタカナ多き世にあれば

          カナ横文字に爺の言葉を


          車座の学生達に呼び掛けぬ

          ”Don't hesitate!” チュウチョハムヨウダ!


          若者と膝突き合わせて語らえば

          まなこ耀き 若者頷く


          風邪おして喉の痛みに堪えつつも

          福井の雪の手応え尊し