川端裕人のブログ

旧・リヴァイアさん日々のわざ

バランスが悪い水際作戦と国内対応(追記しました)

2009-05-16 22:03:12 | 喫煙問題、疫学など……ざっくり医療分野
Img_1478写真はどんより乱層雲。センサーにゴミがついているのが、空を撮るとよく分かる。通常のセンサークリーニングではとれないし、しかし、手作業でやる気にもなさず、どうすりゃいいんでしょ。
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で、本題、日本の空港などで行われている現在の検疫で、新型インフルエンザの流行が防げるとは、当局も考えてはいない。むしろ「時間稼ぎ」と説明されてきた。
だいたい、潜伏期間が最大7日あるかもしれない感染症で、国際空港の「水際」だけで防御できるはずがない。
だから、

・検疫をすり抜けたヒトヒト感染によっての感染拡大が国内で確認されたら、厳しい全頭検査のごとき機内検疫を維持するための意義(感染者のほとんどを捕捉して感染拡大を遅らせようとしても、既に国内に火種だたくさん)がなくなる。
・さらに、ヒトヒト感染によって蔓延状態になったら、検疫よりも国内対応に焦点が移る。

無限のリソースがあるならやる意味があるかもしれないが、ここから先、万全の検疫に費やしいてた労力を、国内向きに振り向けないと。
時間稼ぎした分、準備は万端(のはずですよね、マスゾエさま)。




我々の日常の中にある病気のひとつとして新型インフルエンザをとらえ、時間稼ぎして集めた情報をもとに最適な態勢をとっていただきたいもの。
そして、その「最適」は、常に新しい情報のもとに、かわっていくことに留意。

最初は超ウルトラ級のパンデミックに発展するかもしれないと恐れられた(その可能性も否定できなかった)今回の新型について、情報がつみかさなることで、それこそ「確率密度関数の雲がはれる」ようになってきたわけで、それに応じて、従来のマニュアルを修正しなきゃって時期でもあるのだ。

そして、もっと時間がたったら、今回の検疫態勢が、はたして、「時間稼ぎ」に有効だったかどうかも検討してほしい。
発生国からの旅客機を「すべて」水準で、機内検疫した国はほとんどない中で、はたして、その労力は見合うものだったのか。

ひょっとすると、新型の影で、季節性インフルや、ほかの重篤な感染症、さらには何かのリスク群で、常に気を配らねばならない人たちへのケアが手薄になり、実際に人的被害が出ている可能性だってある。
そのあたり、そろそろ(いや、ちょっと前から)心配する時期にきているんじゃないか。
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追記です。
にしうらさんが、最初のほとんどhate攻撃ですかってくらいな書き込みのあと、コメント欄にあるような真意を述べてくださる新しい書き込みをいただきました。
その一部を抜粋。

今回のような流行で新聞誌上とかの1次情報を流したい報道がパニっている感は否めませんが,できる限りの事実を流すための努力をしているように思われます.最も今回に個人的に問題視している日本での対象は,ニセ専門家(ウイルス学者と感染症の理屈をわかっていない公衆衛生・疫学者)と自由なライターであって,特に自由ライターでは,ジャーナリストと川端さんのようなパターンだと感じています.例えば,不要に「マイッタ」だとか「あらー」とだけでも書かれるのは,本心であろうとも単純に煽りになる気がしてなりません.筆は凶器ともなり得ることを最も理解していらっしゃる立場にある作家ならば,正しい情報の解釈を適切な知識に基づいて行うことを心掛けられることが必要に思います.研究レベルまで理解していなくとも,政府や国際機関のStatementのミスリーディングな細部くらいまでは見抜くことができるくらいのレベルで色々と書くことができると良いのではなかろうか,と.少なくとも,あなたならそれができるのではないかと思った次第です.


ご指摘もっともな部分があって、ぼくは今回のインフルエンザがらみのエントリを書く際に、自分の持てる力と使いうる時間の10分の1も使っていません。
「仕事」としても、いっさい、かかわっていないし(編集者がいるようなメディアに書いていない)、新聞テレビからの取材も受けていません。
というわけで、「できる水準までやっていない」ことは大いに認めざるを得ません。
それでも、関連する作品を書いたことがあるが故に、準専門家のように見てくれる「読者」がいるのも事実でしょう。
筆は凶器になるという件、最近いかに、自分の筆の力が「届かない」かということについて失望することが多く、あらためて指摘されますと、はっと身の引き締まる思いです。

それよりもなによりも、自分がこの事態にどのように相対そうとしているのか、という点で、にしうらさんに揺らぎを指摘された気がいたします。
目下、自分にとってトッププライオリティではないわけです。
それを、つまみ食い的に書いているとんじゃないか、と。

なら、たしかに、偉そうなこと言えません。
本当にこのエントリを書いた最初のところにある認識は、一時顕著だった「検疫万能」な閣僚の発言や、限界にきていると言われる空港検疫の現場の報道やら、感染症情報センターでのブリーフィングやらなわけで、そこから突っ込んで取材してませんから。
にしうらさんが「逆立ちしても合意できない」という部分を、空港検疫をぎりぎりまで最大規模で維持すべし、というふうに読むとすると、「なぜ?」と思いつつ(今回の新型インフルのみの被害を最小限にすることを社会の最大目標にすえるなら別ですが)、自分がその「なぜ」を深めていく状況にないことを白状いたします。

その点、肝に銘じつつ、今後、トッププライオリティの問題になったとき(遠からずそうなる気がします)のために、情報のキャッチアップ的メモは書いていこうかと思っているところです。