川端裕人のブログ

旧・リヴァイアさん日々のわざ

物書きつながりMさんのクールな分析(PTA進化論の「直接」反響1)

2009-05-07 18:46:40 | 保育園、小学校、育児やら教育やら
R0010644PTA進化論の「直接」反響シリーズ。
まずは物書きつながりのMさんから。
Mさんは、すでに「卒業」している方で、小中学校で委員を4回したことがあるという経歴。ぼくの原稿を読んで「もう、ずーっと昔のことなのに、変わりませんね。私もけっこうのめりこむほうなので、少しでも変えられないかと思いましたが、結局、仕事をこなすのが精一杯でした」とい前文から始まり、当時、Mさんが、感じていた問題点を5つに整理してくださいました。
ぼくがひとつひとつコメントをつけるかたちで紹介いたします。

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1、性別役割分業と、それにともなう専業主婦vs働く母の構造があること。そもそも活動時間があいません。さらに、お互いに「甘えてる」非難がある。まあ、この辺は性別役割というより、日本の頑張る文化かもしれませんが。


純粋に専業、という主婦は、身の回りには少なくて、多少なりとも仕事をしていたり、さもなくば、介護などのっぴきならない事情を抱えていたり。けれど、「キャリアとして仕事をしている女性」とそうではない人、といったあたりに一つの対立軸はあるような……しかし、それほどはっきりしているわけでもないような、の今日この頃です。

むしろ、性的役割分担としてのPTAというのは、今もはっきりとあるでしょう。ぼくの保育園保護者仲間などでも、「働いていることは理由にならない」と言われたことがある母親は多数だけれど、同じことを言われた父親は一人もいません。

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2、そもそもPとTのAであることに無理がある。働いていても活動できる時間帯にすると、確実に教師の労働強化になる。これが1の構造をさらに固いものにしている。川端さんの記事とリンクすると思いますが、PとTを分けて、それぞれに自立した組織にしないと、この解決は難しい。


これは本当に悩ましいです。
取材を通じて、PTA主催のお祭り(休日)に、先生が出てくれないことを嘆いたりする声を聞くことがあるけれど、お休みはしっかり休んでください、とぼくは思うわけです。
教師も、みずからの意志で入会することになっているのに、現実的には校務分掌としてPTAの役割を分担しているところが多いようで(たとえば、広報委員会担当は○○先生とか)、確実に先生達の仕事を増やしているし、実は保護者側も、それで大変な思いをすることもあるわけで。担当先生を捕まえるのに、何度も学校に足を運んだり、ね。

それでも、PTAからPがぬけて「保護者の会」になることについては、抵抗感を示す方が多いですね。これは個人的な感触ですが、去年、和田中PTAからTが抜けた時の取材をでは、特にそのような声を多く聞きました。



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3、最長でも6年間という期限がある。ようやく問題点が見え、主体的になりかけたところで卒業。しかも組織が大きいので、なかなか引き継ぐ人に出会えない。


こういうのを「通過的な団体」と表現した方がいました。言い得て妙です。
みんな、通過して行ってしまうので、ある種の伝統として定着し経験として共有されても、変えがたいものになってしまうわけですね。だから「通貨儀礼」としての側面も出てきてしまうのだなあと思いました。


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4、教師たちの上下関係やらがストレートに反映される。たとえば広報企画で、担当教師も含めて決定しても、教頭や校長が反対すれば、頓挫せざるを得ない。一度、発行した広報が配布されなかったことがありました。


はあっ、これは今でも、たまに聞くことがあります。さいわい、近所にそんな憂き目にあったところの話は聞いたことがないのですが。
学校組織の「縦の構造」と、PTAの「横の構造」がかみ合わず、結局は縦の方に引きずられるのはよくある光景なのでしょう。

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5、すぐに解決すべき直接的な課題がない。保育園なら、「仕事と子育て」のなかで共通して解決する課題が出てくるし、それは多くの場合、園と一緒に取り組む必要がある。ところが、学校には子どもをめぐる問題しかないから、解決しないと日常が成り立たないという切実さがないのですね。

ああ、なるほど……。たしかに。
と思うとどうじに、具体例を思いつかない……。「仕事と子育て」のなかで共通して解決する課題というのは、たとえば、どんなことだったでしょう。自分の体験だと、区立保育園は行政サービスとして確立していたから、要望はだせても、対行政になってしまって、園と一緒に解決、というふうにはなりにくかったのです。

いずれにしても、PTAには誰もが納得する直接的な課題が少ないのは本当でしょう。
今やPTA版「大きな物語」になりつつある防犯だって、納得していない人は当然いるし(ぼくもふくめ)、よほどのことがないかぎり「切実」にはなりません。

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追記
小学校で、保護者と教師にとって、切実になりうるものというのは、なにはともあれ「クラスの問題」ですよね。
授業困難とか、学級崩壊に至りそうなとき、それはそれは切実な問題になりうる。けれど、それに対して「PTA」がなにかをできたか、というと、あまり事例を聞かないのです。もちろん、ないわけじゃないけれど。


PTA進化論の「直接」反響がおもしろい

2009-05-07 08:52:07 | 保育園、小学校、育児やら教育やら
R0010640共同通信を通じて各地方紙に掲載されていた「PTA進化論」全14回が、ほとんどのところで終わった模様。

というわけで、知人友人に読んでもらいました。PTAつながりで知り合った方々だけではなく、仕事でのつきあいの方々にも感想・意見をつのったところ、なかなか面白い結果が……。

中には、お子さんのいない方もいるわけで、多くの方がカルチャーショック的な驚きを表明しつつ、ご自身の体験に引き寄せられる部分に言及していました。


自治会、労組、職場委員(労組の組織率が50%いかない法人で)、田舎の消防団、諸地域団体、などなど。
そんな中で、PTAは規模といい(1000万人超!)、逃げられない度といい、役員の負担の重さといい、極北に位置するのだなあ、と感じた次第。

その一方で、経験者。これにはすでに「卒業」している人と、「現役」がいるわけで、それぞれ、微妙に感想の位相が違うのですね。

卒業した人は、わりとクールに問題を見据えているか、あるいは、「素通りしちゃって気づいてませんでした」(主に男性)という反応。

現役の人は、強く強く合意してくれたり、あるいは、その人が「過激」と感じる部分に不安をいだいたり、異論を述べてくださったり。原則、類は友を呼ぶ系の知人・友人なので、ポジティヴにとらえてくれる方が多かったです。

あまりに、興味深かったり、意を得たりだったり、愉快だったり、示唆に富んだりする反応が多かったので、許可を得て、徐々に紹介して行くことといたします。

日本への遺書から、ロボットのへそまで

2009-05-07 06:45:03 | ひとが書いたもの
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保守論壇の雄とされる「諸君」の最終号。「日本への遺言」と題した迫力ある内容。
宮崎哲弥氏が司会をして、櫻井さんなんぞもでいてる長文座談会をがっつりと読む。
結局、ぼくはこの雑誌をこなせずに終わったな。というか、この雑誌が位置する座標軸をいまひとつ自分の座標軸と対応させることができなかった。
結果、2度あった掲載の機会のうち、1度は掲載され(捕鯨ネタ)、もう1度はボツ(喫煙問題ネタ)になったっけ。
「リベラル右派」を自称する宮崎氏だが、ぼくは自分がリベラル右派でも左派ではないし、しかし、中道ってのでもないだろう、とよく分からないのであった。
それはそれ、わりとゆるい読書をしている。
ロボットのおへそ (丸善ライブラリー) (丸善ライブラリー)ロボットのおへそ (丸善ライブラリー) (丸善ライブラリー)
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これは気軽に読めます。こんなロボットいたらいいなあと思うような、我々が未来の日常生活の中にいるはずのロボットを実現するためには、いくら上手に歩いたり、走ったりできてもだめで、家に帰ってきた人間に、さっと「まずはビールですか」とかやってくれるような「ツーカーの仲」になるための研究。そういうロボットのことを著者は「おへそがついている」と表現するのだけれど。
構成をしている池谷さんとは、ぼくはどこかで会っている気がしてならない。

ワールドカップの世紀 (文春文庫)ワールドカップの世紀 (文春文庫)
価格:¥ 550(税込)
発売日:2001-04

もともと1998年フランス大会の前に、「はじめて出るワールドカップ」についての本として出されたものらしい。
今読むと隔世の感がある部分と、普遍的な考察とが、交互に出てくる。
後藤さんは、この本では、各国のチームの特徴を非常に強くうちだしているけれど、あのあと、どんどんサッカーは均質化してきたよなあ、という感懐もあり。

読んでいて、宇都宮徹壱の本をさらに読み返した。
股旅フットボール股旅フットボール
価格:¥ 1,500(税込)
発売日:2008-04

これはJリーグではない地域リーグからJFL、J2へと這い上がる熾烈な戦いというか、現場の躍動と矛盾を、切ないまでに描いた傑作。
それと……彼がスホーツナビにずっと掲載しているコラムもそろそろ本にならないものか。